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詩集「優雅な挨拶」 v<身体の歩行>+目次+奥付 野口儀道
<身体の歩行>
*
「身体の歩行」
重なり合つた女の顔がゆれてる
絶望の瑠璃色の天気の日
身体の歩行やダイビングについて語らう。
赤い旗がひるがへる海辺。
犠牲者を持つ風土を超えよう。
感情や興奮の上で放尿する僕。
あらゆる地面の上にバラを
僕の手のひらの上にバラを
僕等は野原で風のやうに泣いてゐる。
詩といふもの
空でざはめいてゐる星達
きらめく水脈(ミオ)をつくつて僕等は流れよう。
詩集「優雅な挨拶」 iv<五月> 野口儀道
<五月>
*
「僕の土」
そんな国で
何が僕を待つてゐるのだらう。
硝子の中にゐる蛇。
僕は僕のつかんだものだけをばらまかう。
薄い板一枚。
僕は生きてゐるのだらうか。
小さい僕の心臓を投げにゆかう。
放埒な僕の心。
みづみづしい新芽と新芽の間に花火を置く。
しかも口火は僕から離れない。
柔らかい僕の皮膚の
裂を聞かう
僕の手足がこなごなになるのを見よう。
崖から崖へ渡る大きな僕の足。
詩集「優雅な挨拶」 iii<思考> 野口儀道
<思考>
*
「亀裂」
こんな丘辺に座って
何を僕等は考へてゐるのだらう。
ほのぐらい金や緑の陰影の中で
何時の間に僕等のお祭は流れていつてしまつたのか。
野原はむかしのやうに明るく
雲はむかしのやうに白い
瞳と瞳と向け合つて
向け合つた暗い瞳と瞳の間で
抱き合つた肩と肩との間で
何といふ黒くわだかまつた不安なのだらう。
静かに草原をよぎつて
森といふ森
街といふ街に
涙のやうにとも
詩集「優雅な挨拶」 ii<阿呆> 野口儀道
<阿呆>
*
「絶望」
くだらなさ。
軽蔑や破壊を前にして
置き忘れられたやうな悲しみが
流れ落ちてゆく
うしろもみずに。
海のやうに拡がつてゆく俺。
絶望の眩しいやうな光の中で
針の先のやうにとがつた悔恨を残して。
*
「落下」
愚にもつかない悲しみと悲しみ
金貨と汚泥のむごたらしい海に浮んで
俺達の目
俺は静かに
何処へ下りてゆかう。
*
「いたみ」
放埒な心
新芽と
詩集「優雅な挨拶」 i<序><優雅な挨拶> 野口儀道
<序>
これは著者の第1詩集である。
詩稿は2601年2月から2601年6月に至る期間に書かれたもののみである。
これ等の詩について
これ等の詩が語る青春と美と力と悲哀について
或はその脈拍と狂気について
もう僕が語る必要はない。
やがて
詩自らが
詩自らを語ってくれるであらう。
時間は来てゐる。
*
<優雅な挨拶>
*
「優雅な挨拶」
あゝ
間違へないでくれ
俺は芸術家でも何でもない
[戯曲] とあるペントハウスの一夜
高級だけど、ちょっと古くさいしつらえのマンション最上階にあるペントハウス。
無駄に広い洗面台の鏡をのぞく中年男性。
つけっぱなしのテレビからワイドショーの音声が流れている。
[テレビ]
東京ギャルソンの片岡俊が芸能界からの引退を発表しました。彼は1996年に芸能事務所トワイライトから、6人組アイドルグループ・東京ギャルソンのメンバーとしてデビュー。同年発表した「サテライト2000」がミリオンセー
[短編小説] 美しい本同好会
ぼくの乗った路面電車が、雨の街を走り抜けていく。冷たい雨粒が容赦なく車窓を打ちつけている。ぼくは傘を持って出なかったことを、すこし後悔していた。
友人との待ち合わせは喫茶店。商店街にあるから、路面電車から下りてまっすぐアーケードに入ればそんなに濡れることはないだろう。しかし、バッグの選択を間違えた。開口部がしっかり閉じられるものを選ぶべきだったのに、簡易的な麻布のバッグで来てしまった。
街の
「故郷平石に遊ぶ。」河田誠一
一、町汀曲浦海青く、山緑なる仁尾の郷、
稲田は深く耕され、塩田は遠く拡がりて、
勢充てり誰が家も。
二、沖つ波間の平石を、堅き心の友として
老も若きもなりはひに、いそしみ交わし睦じく、
暮すも楽しこの里に。
三、並ぶ鶴島亀島の、松より松に吹く風も、
千代万代声あげて、我が浦里の海幸を
今日も祝ふか燧灘。
三方山に囲まれ一方海に面した仁尾の町には平和な町歌が、夢の様に先輩の師