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#連載長編小説
【小説・MIDNIGHT PARADE】[27]MOONLIGHT DANCEHALL
もうすぐ、朝五時。夜はもう終わり、世間では既に早朝とされる時間だが、その日の『ajito』にいる客達は、誰もがまだ店を出なかった。既に何本目かわからないシャンペンが開けられ、美春はそれを飲みながら踊っていた。心地よく揺れている美春に、一之瀬がまた駆け寄って来た。
「こんなに旅立ちを祝ってもらえて幸せ者だね、一之瀬」
「いや、もう俺の留学とか忘れられてるだろ。単なるパーティと化してるじゃん」
「
【小説・MIDNIGHT PARADE】[22]You Gotta Be
キャッシャーに座り、入場人数をカウントしているストップウオッチを見た。客足は半年前と比べ、随分と落ちている。それを確認してから、白石は凝り固まった首を左右に振った。
春に訪れ始めた常連達が、段々とこの店を離れていく季節なのだ。年が変わる頃には客の顔ぶれは一変しているだろう。夜遊びを知り始めた頃は輝かんばかりの目をしていた人々が、夜に巻き起こる事に疲れ、磨り減り、去って行く時期。
白石は、
【小説・MIDNIGHT PARADE】[20]I'm caught up (in a one night love affair)
「美春ちゃん、昨日来てたよ」
いつもの誰かからそんな電話が来た日の夜、一之瀬は、久しぶりに『ajito』に顔を出した。あの、いかれた女と男を間近で見た夜から、一之瀬は『ajito』に行っていなかった。もう、夜に巻き起こる事の全てにうんざりしていたのだ。しかし、やはり、美春と仲違いをした事は一之瀬の中でくすぶり続けていて、それだけは何とかしたかったのだ。
昨日の今日だからいないかもしれないけ
【小説・MIDNIGHT PARADE】[16]Got To Be Real
夜が好きで音楽が好きでその中にいる奴等が好きで勤め始めた店だけれども、誰とも話したくないこんな日には、この仕事を選んだ自分を呪いたくなる。白石は、キャッシャーから長蛇の列をなしている客達に、笑顔を振り撒きながらも、心の中で舌打ちをした。
今日の店の盛況の理由はヨーロッパツアーからつい先日凱旋したDJ、桜澤がプレイするからだ。彼は、白石の十年来の友人である。海外を忙しく飛びまわる桜澤との久しぶ