先生である。
先生になるのが夢である人、夢を叶えた人、休んだ人、そして辞めた人、また戻った人。どんな人にも読んでほしい文章を書きました。
わたしには夢がなかった。
友達のように、決まったような夢が。
友達はもう、夢に向かって動き出してる。
どうしてわたしには夢がないのだろう。
だれか、わたしに夢をおとして。
・・・
わたしには夢ができた。
それは、先生になるということだ。
ずっとわたしを支えてくれた先生みたいに、
わたしもなりたい。
あぁ、先生っていいな。
わたしにもやっと夢ができた。
あとはもう、夢に向かって努力するだけ。
がんばるぞ。
・・・
わたしには夢がわからなくなった。
どうして先生になりたかったのだろう。
昔見たあの先生も、こんな環境で。
先生ってすごいなあ。
わたしにもできるかな。
わたしもあの先生になれるかな。
でも、ここまできてしまった。
なるしかないよな、
あとちょっと、先生になるまでがんばろう。
・・・
私は、先生になった。
昔から夢だった先生に。
でもどうしてだろう。
ここからどうしていいのか分からない。
何もできない自分に心から、傷つく。
やっぱり私は、
あの先生みたいになれないのだろうか。
でも責任もある。
やりがいもある。
もうちょっと頑張ってみる。
最初からできる人なんていない、
と思い込んで、
私ももうちょっと頑張ってみる。
きっとなるんだ、素敵な先生に。
・・・
私は先生が楽しくなってきた。
だんだんとやることがわかってきて、
少しずつだけど成長している気がする。
うん、進んでる。
一歩ずつだけど、ここまでよく頑張ってる。
この調子だよ、私。
進め、私。
どこまでこの道があるのかわからないけど、
一歩ずつ進んでいれば、きっとどこかに。
・・・
私は先生を休んだ。
溜まっていたものがなんだか収まらなくて、
何を考えているのか、
何のために生きているのかわからなくなって、
私は先生を休んだ。
本当にごめんなさい。
でも、今の私には、
何より時間が必要。
余白が、必要。
少しだけ待ってて。
すぐ先生に戻るから。
・・・
私は先生を辞めた。
先生を辞めて、サラリーマンに転職をした。
いつも定時退勤。
すごく安心する。
でも、
どうしてだろう。
なんだか心に隙間を感じる。
あんだけ忙しかったのに、
あんだけ心をすり減らしたのに、
私が先生を求めてる。
そうか、好きだったんだなあ。
あの仕事。
私もいつか戻りたい。
先生という、愛すべきものに。
・・・
私は先生になった。
再び先生になったというよりも、
元々、先生であった、
という方が正しいのかもしれない。
相変わらず仕事はできないし、
自分にも自信がない。
労働時間は長いし、
SNSでの先生ブラックイメージは抜けない。
いや、抜けないというより、
イメージ通りのところもあるだろう。
ただ、先生はそれだけじゃない。
私は思う。
この職業を必要としている人は、
私のようにきっといる。
だから私は、先生になったのだ。
人を育てる。
人を幸せにする。
そのことは、
私自身も幸せにする。
まだまだ厳しい世の中だけど、
一緒に、一歩ずつ、進みたいと思う。
私は、
いや、
私たちは、
先生であるから。
(この文章はフィクションです)
森本瑛.
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