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Drive in My life.

どうしてぼくはここまで来たのだろう。
誰に言われたわけでもなく、ただ暗い道を走ってきた。
来た理由はぼくにはわからないけど、
ひとつだけ確信を持って言えることがある。
それは「ここまで来て本当に良かった」ということだ。

目の前は曇り空。

ぼくは会社を出て、いつもの帰り道を走る。
走るっていっても、もちろん車で走る。

ぼくのとってこの通勤時間は、準備でもあり、
息抜きでもある。

ただ今日はアクセルが進まない。

前の信号は青なのに、
アクセルを踏む気が起こらない。

そんな日がたまにある。

疲れているのか、
どうしたいのかぼくにもわからないけど、
どうしても体が前に行きたがらないのだ。

「プー、プーップーー」

クラクションの音で我に帰る。

急いで踏んだアクセルは、
勢いよく音を立てて赤い針が上に動く。

そして下がるのを見ながら、
前にいつもの交差点が現れる。

右に行けば我が家だ。

でも、ぼくはハンドルを左に回した。

そっちに行けば、暗い暗い山の奥。
それでもぼくは、暗い方へいきたかった。

40kmで走りながら、
30分ごろが経ったころ

そろそろ曲のミックスリストが一周しそうなので、
元の道に帰りたくなった頃、

一つの小さな公園が見えた。

見た目はなんの変哲もない、ただの公園。

なぜか惹かれて、その公園にはいる。

外の暗い夜道を歩いて、
たどり着いた場所はなんだか懐かしくて、
ちょこっとひとつだけあるブランコに乗った。

目の前には、
相変わらず曇り空が広がっている。

どんよりしていて、
いまのぼくの気持ちを表してるみたいだと思う。


でも、それでもはっきりと、


強くて優しく、
涙でぼやけながら見える、
一つの星がある。

赤く光るその星は、
真っ暗闇の公園を温かく照らしてくれる。

光は、そんなに強くなくて、
いつもなら見落としてしまいそうなくらいだ。

そこでぼくはふと思う。

「ぼくはこの光を見るために、ここまで来たのだと」


まばゆいばかりの満点の空も綺麗だが、

いまのぼくには、たったひとつの星が心をゆらした。

「これでいい。これでいいから、きっと大丈夫」

赤く、優しく光っている星を目指して、

ぼくは明日のアクセルを踏みに行った。



完.


この物語はフィクションです。

もし、記事を読んでみて笑ったり、感動していただいたり、心が動いたりしてくれたのならそれ以上の喜びはありません。心からの“感謝”をあなたに、ありがとう。