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[エッセイ] 反対側の世界でまちあわせ


茹ですぎたブロッコリーほど不味いものはない

これは母からずっと聞かされて来たこと

だから、ブロッコリーはいつも固茹で
さっと軽く茹で上げるのが当たり前だった

ある日、ブロッコリーを茹でながら
ーそんなことないよ
と小さな声が聞こえる

そう、そんなことはない
くたくたに茹でた柔らかいブロッコリーのサラダは美味しい

あの日から、我が家では柔らかく茹でたブロッコリーが食卓に上がるようになった


欲しいものと言われると
年々、形があるものを欲しがる気持ちは減って行く

そうね…しばらく買っていないから服でも欲しいかな…
でも、別に今あるもので事足りているので、いらないと言えばいらないかもしれない

若い頃は、洋服選びが楽しみだったと言うのに
いつの間にか変わってしまうもので、欲しいものと言われたところで簡単には思い浮かばなくなった

それよりも、今欲しいものというのなら
耳の横より少し後ろにある空白の場所の何か

腕を上げて、頭の横でくるくると回すように手を動かして
ーそうそう、この辺にある何かかな…と

それは、見えているようで見えていない
今の自分には持ち合わせていない、新しい価値観のこと

言うならば、それは私にとってのクタクタのしっかり茹でたブロッコリーのようなことだ

ブロッコリーを柔らかく茹でる様になった日にひっくり返った何かのように
こうに違いないと思い込んで生きてきて
体や心に染みついたもの
それらを捨てられるような
新しい物の見方を手に入れたいのだ


それはいつも自分のそばにあるというのに、なかなか視界には入らずに手の中にも収められない
それでも、一度認識して仕舞えば
いつ何時でも、視界に入っている常連さんにもなれる位置にいつもある

今1番欲しいものは、そんな人生をひっくり返す小さな魔法一つ一つだ



固茹でのブロッコリー
それから、へんちくりんな自分
マイナス思考

数え上げればキリが無いほど、いいも悪いも混ぜ込んで
完成しないまま、出来上がってきた自分自身

こんな一度、積み上げた物を壊すことはそうそう簡単ではなく
特に心に染みついたものほど、簡単には取り除けない

それでも、どこかでわかっていることは
これを壊す必要があるということ

きっと本当は、もっと積み上げてきた物次第で心も体も軽々と生きられたはずで
自分の良いところをもっと褒めてあげられるはずなのだ
羽だって生えていたかもしれない

だからこそ、
誰かに造られた自分ではない自分を生きていて
人生を悪い方向に引っ張ろうとしている
自分を牛耳ってきた過去の悪の勢力やらと戦わなくちゃならないのだ

耳の横の空白のところにある、魔法一つ一つを紐解いてね


とは言え、一つ一つ人生の魔法を見つけてひっくり返すんなて
まどろっこしい作業で嫌にもなる

だから、時に劇薬を使って簡単に済ませてしまいたいと思うこともしばしば
全てを捨てて
どこかへパーンと飛び出して、放浪の旅に出かけてしまうな
一瞬でことを終わらせてしまえるような

今とは全然違う環境に行けばきっと何かは必然とひっくり返る様な気がして
そんな風に楽をしたくなるのだ

それでも、どこかわかっている
ひっくり返すにはタイミングが必要だと言うことを

パンケーキの生地は、ひっくり返すタイミングを早まると
生地がべちゃりとフライパンの中で飛び散って綺麗には仕上がらないのと同じように
価値観もひっくり返すタイミングがあって
それは、我が子を授かり
ブロッコリーを柔らかく茹でる必要があった時のように
必然と流れて来たものを拾い価値観がひっくり返る時が自ずと来るのだ

だからこそ本当に必要なものはといえば
それはきっと、流しそうめんの様に流れるプールで浮き輪に揺られて
ただ流れる様に生きることを辞めること

少し深い視点で物事を見て
人生はなんと言っている?と耳を澄ますように全てから学ぼうとする視点を捨てないことだ


現実で起こる出来事が、そうして自分の欲しい価値観をどこかで手繰り寄せていて
それを来たタイミングを知ることが1番の近道だから
悪も、試練も、幸福も全ては自分がなりたい自分になるために
それを教えてくれるためにやってくるのだと知ったなら
自分の手の中にある過去も、未来も、そして今も学びであり材料になるような気がしている

そして、いつかは過去は想像もしなかった自分に巡り会えるのだ
こうして、自分自身が変わって来たように


恥じないように
誰一人にも迷惑をかけないように
いつも笑っているようにと
そんな誰かの都合で作られてきた自分をひっくり返して
反対側の世界でまちあわせしている未来の自分自身に会いたいと思う

そのために、いつだって空を掴もうとしている


akaiki×shiroimi

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