12/21。僕と、パートナーと、冤罪のアルマカン。
5:30起床。
天気は曇り。
*
……。
……。
……もっと、だ。
もっと、
もっと、
深く、
深く。
底の方まで、潜っていくんだ。
……。
……。
……だって、
誰かが、そこで泣いているから。
誰かが、そこで呼んでいるから。
さあ、
あと少しだ。
*
ヴーーー………ッ
と、鳴りましたね。
昨日、パートナーと遅めの夕食をとっていると、そんな音がした。僕の、もしくはパートナーのスマホが鳴ったのかと思ったけど、どちらも、なんの通知も来ていない。辺りを見渡してみても、それらしきものは見つからず、後には、家鳴りが、思い出したように時々聞こえるだけだった。
「なんだったんだろ……そういえば、スマホのバイブにしては大きかったような」
「アルマカンだね」
「へ?」
「アルマカンだよ」
アルマカン。
顔も部屋番号も知らない、でもギターを弾いているのが時々聴こえてくる――アパートの住人の一人。
「いや、アルマカンのことはわかるよ。わかるけど……彼女(彼?)は、ギターを弾く人だよ。ギターは、あんな音しないよ」
「だから、ギターじゃなくて、別のものを鳴らしたんだよ」
「えー……笛、とか?」
「そうだね。そうに違いない」
パートナーは、うんうんと肯づいてから、ほんの少しだけ申し訳なさそうな顔して、「アルマカンに失礼だったかな」といった。まあ、失礼なことはいってないはずだから、大丈夫じゃないかな。……たぶん。
そういえば、と思う。アルマカンのギターが、最近聴こえてこないな、と。いつもなら、夕方から夜にかけて、もしくは、深夜に突然練習していたのに。
それとも、僕が気付いてなかっただけなのかな。今週は仕事が立て込んでいたから、うちに帰れば、すぐに、布団の上に倒れこんでいた。自分のことで精いっぱいで、外のことに意識を向ける余裕は無かった。
ヴーーー………ッ
あの音が、アルマカンが発したものなのかは、わからないけど(たぶん、違うと思うけど)、でも、ここ最近の自分を振り返るきっかけになった。ありがとう、アルマカン。君は、何もしていないだろうけど。
ところで、君は、実際のところ、ギターをあんまり弾かなくなったのかな。僕が気付いてなかっただけならいいけど、本当にそうなら、ちょっと寂しいな。まあ、僕は君のことは全く知らないし、弾く/弾かないも君の自由だから、しょうがないんだけどね。あと、大家さんに叱られたのかもしれないし。
でもさ。もしよかったら、また聴かせてくれよ。少なくとも、君の演奏を歓迎する人間が、ここにいるからさ。今日の夕方にでも、待っているよ。
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