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1/11。ある日のLight Dance。そして僕は、××を想うことにした。

5:30起床。

天気は曇り。





……。
……。
……。


「ねえ、満月だよ」


ああ、本当だ。
こんなに綺麗なものを見るのは、いつぶりだろう。


……。
……。
……。


「『綺麗なもの』はね、自分で決めるんだよ」


ああ、その通りだ。


きっと、
僕が考えているよりもずっと、
世界は、『綺麗なもの』で溢れている。





時々、僕は踊り子になる。


ステージは、用意されていない。観客は、1人もいない。でも、そんなことは関係ない。僕は、踊っている。1人で、踊り続けている。


昨晩は満月だった、と思う。大なり小なり欠けていたかもしれないけど、とにかく、空はとても明るかった。月は、雲がかかっているはずなのに、その姿は、とてもはっきり見えた。


僕が空を見上げたとき、そばにはパートナーがいた。僕らは、本屋から帰ったばかりだった。階段を上がりながら、僕はパートナーに訊いてみた。月には、何がいるのかと。もちろん、うさぎ以外で。


パートナーは「弓」、僕は「かたつむり」が見えると答えた。


全然違うね、と笑いながら、僕らはうちに帰った。けれど、僕の気持ちは、まだ空を見上げていた。


空が、明るい。
月が、明るい。
風は、吹いて。


ああ、
踊りたい。
踊りたくって、しょうがない……。


僕は、踊りを習ったことがあるわけじゃない。踊りたい、踊りたいといいつつも、どんな風に踊ればいいのか、頭に思い描けているわけじゃない。でも、それでいいんだ。踊り子になるのに、技術も、条件も、必要ないんだ。ただ、踊りたくってしょうがない、その感情と身体があれば。


僕は、月にいるかたつむりのことを考える。


僕に、かたつむりがいるのが見えたのは、きっと、うなだれた2本の触覚が見えたからだ。僕は、思う。どうして、そんなにうなだれているの? 君は、そこでひとりぼっちなの? 月には、君1人しかいないの? ねえ……。


大丈夫だよ。
僕は、思う。


僕は、そこには行けないけど、君の姿は、ちゃんと見えているから。君には、僕の姿が見えているのかな。それとも、僕は君よりちっぽけだから、見えていないかな。


それなら、僕は君のために踊ろう。


僕が、ここにいることを。
君を、想っていることを。
君は、ひとりぼっちじゃないんだと。


次の満月は、いつだろう。
次に、君を見ることができるのは。


君が見えている限り、僕は、君のために踊ってみせるから。


Light Dance。

Light Dance/Akira Kosemura(2008年)

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