見出し画像

子どもの言葉の遅れチェック#5:注意を共有すること【共同注意】ができますか?

「注意を共有する」ってどう言う意味?

専門用語で「共同注意」「Joint Attention」と言います。

まぁ、一言で言うなら、
「ねー、ママ見てー」と言えるスキル
のことです。

「え?これってスキル?」
と感じるかもしれません。お話できるようになると、
「ねー見て見て!」
ばっかりですもんね。

でも実は、これってとっても大切なスキルなんです。
特に、言葉の習得やコミュニケーションスキル、社会性を育むためには必須です。

「ママ見て」は、しゃべる前から始まっている

ママ見て行動(= 共同注意)は、まだしゃべることができない時期からすでに始まっています。

例えば、こんなこと、よくありますよね。

ママと子どもが1つのおもちゃで遊んでいる時、
子どもがママをチラっと見て、アイコンタクトをしたり、にっこりしたりして、またおもちゃに視線を戻して遊ぶ。

なぜ子どもは、ママをチラ見するの?

それは、ママが自分と同じものを見ていることが楽しいからです。
【言葉を話す前のスキル#2】で、あかちゃんは生まれつき人が大好き!と言いましたが、まさに赤ちゃんは人が大好きなので、常に人と交流したいと思っていますし、常に交流しようとします。

生まれながらにして、
自分が楽しいと思うものを他の人とも共有して、一緒に楽しみたいという本能を持っているのですね。

このような気持ちが、今後のコミュニケーションにつながっていきます。
人と交流したい」と思わなければ、会話は始まりませしね。

共同注意は2つの方法があります

1. 他の人の注意に反応する
例えば、ママがボールを指差して「ほら、ボールよ」と言います。子どもはママの視線と指差しのジェスチャーに従ってボールを見ます。

2. 注意を投げかける。
例えば、赤ちゃんがおもちゃを指差して親を見つめることで、「ママもおもちゃを見てー」と言わんばかりに促すことがあります。
少し大きくなると、「ママ見て」と言って注意を引いたりします。

共同注意はどのように育つの?

▶︎ 生後4-6ヶ月に、アイコンタクトができるようになります。

▶︎ 6ヵ月児は、親が見ているものに目を向けて、親の視線を追うことができるようになります。

▶︎ 8〜9ヶ月になると、指差しが始まります。 指差しだけでなく、視線を使って相手の注意を自分が見ているものに向けさせることもできるようになります。

▶︎ 9ヵ月を過ぎると、視線を確認するようになります。相手が同じものを見ているかどうかを確認するためです。

▶︎ 生後18ヶ月頃には共同注意は確立されます

1.共同注意は言語習得に不可欠

例えば、
ママと赤ちゃんが散歩をしていると、赤ちゃんは目の前に『キレイなモノ』を見つけました。
「なんだろう?」
と興味を持ち、
「あーあー」
と指差しをしながらママの顔を見つめます。

するとママが
「お花よ。きれいね。」
と言いました。

またしばらく歩いていると、今度は、ママが
「ほら見てー」
と言って指差しをしました。あかちゃんはママの指差しを目で追います。
するとさっきと似たキレイなモノがそこにありました。
ママは、
「お花よー」
と言いました。

毎日何度も「共同注意」を体験することによって習得できることは?

あかちゃんは、このような「共同注意」体験を、1日のうちに何度も何度も、そして、毎日毎日繰り返しています。それによって、以下のことが理解できるようになってきます。

▷  このキレイな『モノ』===「おはな」という『音』
を結びつけることができるようになっていきます。

▷ 「物には名前がある」こともわかってきます。

▷ 赤ちゃんは、大好きなママの言葉に耳を傾け、注意深く聞き続けるうちに、「ママの口から出る音(声)」と「言葉としての意味」を結びつけて理解できるようになっていきます。


▷ 言葉の意味がわかってくると、「聞いて理解できる」ようになっていきます。

▷ 言葉を聞いて理解できるようになって初めて、「言葉を使うことができる」ようになっていきます。

「共同注意のスキル」を獲得すると、何ができるようになるの?

共同注意のスキルを獲得すると、

▷ 他者の注意を引くための行動や、自分の意志を押し通すことが上手になってきます。
 ▶︎ 例えば、何か問題があると、騒いだり泣いたりして、何が起こったかをあなたに伝えようとします。

▷ 言葉をまだ話せなくても、自分の欲しいものを手に入れるためなら、親の方を見たり、指差したり、誘導したり、親の行動を中断させたり、など、あらゆる手段を使って、親が自分の要求に従うように仕向け続けます。

2. 社会的コミュニケーションと認知スキルの発達に不可欠

共同注意のスキルを獲得すると、

▷ 他の人とのアイコンタクトや、親しい間柄での温かく楽しい表情の共有などができ、子どもは養育者や仲間との交流や関係づくりが出来るようになります。

▷ 共同注意は、絆の構築や他者の視点の理解など、重要な社会的スキルの発達に欠かせないのです


▷ 指差しやジェスチャー、視線や声などを使って、相手の注目を引き、相手と同じものを見て、気持ちを共有することが楽しいと感じるから、このような共同注意行動を繰り返すのです(ABAで「強化」と言います)。

これが赤ちゃんの言葉の学び方です。

共同注意を示さない

共同注意の特徴を示さないということは、言葉の遅れやASDなどの発達障害のリスク因子となります。

【YouTube】 ①定型発達児、 ②ダウン症児、③ASD(自閉症)児の比較

この動画は非常にわかりやすいです。これを見ると、

共同注意とは具体的にどのようなものなのか
なぜ共同注意がASDの危険因子なのか

がはっきりします。

【ビデオの概要】3種類の共同注意のテスト

1)定型発達の子ども、
2)ダウン症の子ども、
3)ASDの子ども、
それぞれに3つのテストが行われます。

テスト①:自分の感情を他者と共有しようとするかどうか?
▶︎ (0:01-0:40 )子供が楽しく遊んでいる時

テスト②と③:他者の感情を読み取れるか?
▶︎ ②(0:53-1:42)他人の痛みに対する子どもの反応
▶︎③(1:43-2:32)他者の恐怖を読み取れるか(サバイバルスキル)

ASD児が言語習得が難しい理由

ビデオで見ていただいた通り、

ASD児は、他者との交流にあまり興味を示しません。すなわち、

▷ 自分が楽しんでいるものを、他者とも共有して「一緒に楽しもう」とする動機がありません。

▷ 他人のジェスチャーや声のトーン、表情などの、非言語コミュニケーション意味を読み取ることもありません。

▷ 上記の非言語コミュニケーションから得た情報と解釈をもとに、他人の感情にも気を配ることもありません。

このような特徴から、
「人との交流=共同注意体験」を通して得られる「言語習得の機会」や「社会性を発達させる機会」を得られなくなってしまうので、
言語習得が遅れてしまうのです。

ASD児が人よりモノを好むのはなぜ?

上記のような特徴を持つASD児は、人との交流より、モノとの交流を好む傾向があります。

なぜそうなるのでしょうか?

ひとつには、ASD児は、
「人と関わりたい」という特徴弱めに生まれてくるから
と言われています。

もう一つは、
複雑で予測不可能な状況を理解することが難しいから
と言われています。

社会的な相互作用は複雑で、予測不可能なこともあります。
そして、他者と交流する際には、表情、話し方、声、身振りなど、すべてを同時に理解する必要があるのです。

このような情報は、ASD児にとって刺激が強すぎるため、避ける傾向にあります。

一方、物は人間よりも予測可能で単純です
同じ刺激を与えれば、いつも同じ反応を返してくれます。

いずれにしても、もしあなたが、

「この子は私を見ていない」
「私が話しかけていることさえ、気付いていないよう」


と感じたら、かかりつけの小児科医に相談してください。

医師があなたの心配を否定したとしても、あなたの直感の方を信じましょう!お子さんのことを一番知っているのは、保護者のあなたです。

【診断名は関係ない!】とにかく早く、家庭で適切な関わり方をしましょう!

私が今まで、いろんな発達障害の子供達と関わってきて、自身も発達障害を持っている立場から、ここで強く言いたいのは、

①診断名に捉われすぎないこと
②とにかく早く適切な関わり方を知り、実践すること

の2つです。

「医学的な診断名がつけば、お子さんの行動や発達を改善できる」わけではないので、そこにあまり捉われすぎないようにしましょう。

私が保護者の方に強く望むのは、
もしあなたのお子さんが「共同注意を示さない」のであれば、そこを育めるような、適切な関わり方を学んで実行して欲しいのです。

「きっと遅いだけ」
「そのうち治る」

ということはないので、「待たないで欲しい」ということです。

可能でしたら、信頼できる専門家からのサポートを受けて欲しいです。

残念ながら、日本では、科学的根拠に基づいた、確実に成果を上げてくれる療育施設が非常に少ないです。

ですからこのようなブログを通じで、家庭で保護者の方ができる「ABA療育法」過程でできる療育法をお伝えしていきたいと思っています。

共同注意力を向上させる方法

まずは、ABA手法による、アイコンタクトの練習方法をご紹介します。

名前を呼んでも目が合わない子どもの場合

まずは、一緒に遊んでいる時にやってみましょう。
以下を生活の中に取り入れ、1日のうちにいろんな場面で、何度も繰り返しましょう。

1. まずは、視線を合わせやすいように、同じ目線になり、継続的に対話ができるような姿勢をとりましょう。

2. お子さんの好きなおもちゃを使います。

3. お子さんの好きなおもちゃを、子供の目の前に置く/かざし、子供がおもちゃに視線を向けるのを確認します。

4. そこであなたがお子さんの名前を呼びます。と同時に、そのおもちゃをあなたの目元まで引き寄せます。それによって、お子さんの視線をあなたの目元に誘導するのです。

5. 目があったら、いっぱい喜んで、その好きなおもちゃを手渡しましょう
目があったら→結果、好きなおもちゃを手に入れることができた
によって、目を合わせることが強化されます。

6. おやつの時、ご飯の時など、いろんな場面で、日常的に習慣にしてみましょう。

まとめ

共同注意力が弱い幼児は、他人との関わり方や友達の作り方、話し方、言葉の理解、入ってきた情報の処理と使い方の学習など、幅広い発達スキルの習得が困難になる場合があります。

なるべく早いうちから、共同注意を育むための適切な関わり方を学び、家庭で日常的に実践することによって、これらの問題を大幅に改善し、場合によっては解消することが可能です。


References
Mize, L. (2022, August 21). Teach me to talk with Laura Mize: Late talkers: Autism: Apraxia. teachmetotalk.com. Retrieved September 2, 2022, from https://teachmetotalk.com
Mundy, P., Block, J., Delgado, C., Pomares, Y., Van Hecke, A. V., & Parlade, M. V. (2007). Individual differences and the development of joint attention in infancy. Child Development, 78(3), 938–954. https://doi.org/10.1111/j.1467-8624.2007.01042.x
Rogers, S. J., Dawson, G., & Vismara, L. A. (2012). An early start for your child with autism: Using everyday activities to help kids connect, communicate, and learn. Guilford Press.
What is joint attention and why is it important? teli. (2020, November 19). Retrieved September 4, 2022, from https://www.telipa.org/what-is-joint-attention-and-why-is-it-important/
YouTube. (2019, October 1). Joint attention test. YouTube. Retrieved September 5, 2022, from https://www.youtube.com/watch?v=BMghOrj41ZU


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?