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#吐露

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君と僕のイノセンス
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2019年10月の記事一覧

電解する手

フラスコに生けた白百合に
飲み込んだ嘘が 析出してしまう
裏切りと優しさのグラデーションで
染まっていく水溶液
君の涙を吸い上げた試験紙は 無反応だった

悲しくなくても泣いて
嬉しくなくても笑って
嘘を謳歌するこの〈実験〉に 終わりは来るの
投げ銭を受け取った白衣が 我を忘れて笑った
ああ ほら また 君を傷付けたくなる

溶かそうと思えば 君は一人で溶けてしまうから
混ざっても僕は 触媒のまま

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屈折率

視線 鋭角に入射してプリズム
君と僕の世界の外で 虹が掛かった

屈折する青に 弦月
自分の筆跡に 後ろ指をさされて泣いた
密接する黒に 斜陽
校舎の廊下で 影だけが背を伸ばす

君に追い付くまで あと何時間なの

色違いの服を着た夢兎の人形
君が赤で 僕が青
スローモーションは再上映不可能だから
目を閉じないで
プリーツのとれた スカートの裾が揺れる

いつまでも この傷は醜く 息をする度に

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花落裏 ka la ku li

鉄格子の檻の中から 花束を差し出しました
細くやつれた 骨張った手首で
看守を欺くような 執着はありません

小賢しい子供のまま 大人になりました
忘れたいことだらけの絵本を
虚ろな影に読み聞かせて
毎晩 祭壇で 懺悔したつもりでいます

壊れた万華鏡から 零れ落ちたのは
夜空の星々の夢ではなく
魔法が解けた宇宙には
千の哀しみが宿って 光るのです

銀河鉄道に憧れた少年の瞳は霧散して
カラクリ

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遊離

塩素を薄めた海へ
あの子の髪の色はマーメイドの哀しみ

”貴方に出逢わなくても私は泡になっていたわ“

天使の階段のシャワー 黒い陽炎
傷痕に刻まれる自我は暴力
あの子の過去の刺青から 目を背けた
僕は子供だった

”君を僕の手で泡にしたかっただけなの“

プールサイドに打ち上げられた 紋白蝶の死骸
鱗粉が溶け出して 君は自由になる

欄干に張り付いた透明な翅
忘れられた水底のトパーズ

あの子が

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方の舟

21時 ゴーストタウンの広告塔
交差点 立ち尽くして マニピュレイト
大気圏まで ハッキングする

USER:Noah Enter PASS:ARK

眠れない人工衛星が 冬の星座に張り付けられる

この夜が ペールブルーに変わったら
煙草の葉を咥えた 白い鴉が
歩道橋に飛んできて
東口から 動物のつがいが一組ずつ
メトロポリスに 流れ込む
#詩 #現代詩 #自由詩

Butterfly with

黒にターコイズブルーのライン 透き通る
揺らいで 何処へ行こう
蝶として生まれた蟲は幸い
君は愛される運命なのだから
少女に蝶と蛾の見分け方を教えるな

森羅万象を断罪
薄汚れた灰被りの大人が言う
一生消えない罪で お前の瞳は汚れている
神の庭に足を踏み入れた蛇は言う
「ここはサンクチュアリなんて誰が言った?」

俗と聖の融け合う世界で 君だけが正しい
少女は一層 泣きながら 笑った

君の目には

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緋hi/藍ai

貴女の言葉の一つ一つに 白いヴェールをかけて
都合の良い私は 一人喜んでいました
貴女から貰った愛情で 花を育てて
咲いたそれは 真っ黒で
まるで私の心の 焦げ付く底のようでした
奈落よりも深く 誰も知らぬ深淵へ 私は
あの月を隠す雲よりも速く 堕ちてゆくのです

鴉の羽根は黒だと 誰が言ったのでしょうか
私はあの羽根よりも黒いものを
知っているというのに
そう あの哀しみや憎しみを
一身に

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花懐 ha ka i

白百合の枯れる季節に生まれてしまった 罪
彼に命は宿らなかったの
流れるように月が巡って
何もかも当たり前のように崩れた
目の前で揺れる花も いつか土に還ると知った
あの日 あの季節
少年の瞳に悲しみはあったの
赤い頰は嬉しそうに笑った
火は燃えて 蝋は溶けて
瞬きをして 涙が零れる間に

君の命は何の為にあった
真っ赤に染まって はぜる為、
花の命は誰が為に咲いた
蝕まれて醜く枯れる為、

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Roses are Blue

あなたに花束を買って帰ろうとも
あなたは満たされず
満たされるのは ただ私の 自尊心なのです
青い薔薇の花を二人
探しに行くことが怖かったから
私は確実を金で買い 喜びを安売りしたのです
手元に残るのは 自己満足という名の赤字で
私はその痛みによって 生かされるのでした

花とは無縁の生活を送ってきました
白と黒があれば生きてゆける程に
無欲な私なのでした
あなたに出逢って 花を欲しがる
私にも

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