車谷誠二

車谷誠二

記事一覧

正しさ、玉ねぎ、みじん切り

正しいことをしたと思える瞬間は美しい。 なんとも言えない高揚感が全身を駆け巡る。 ようし、これでまだ生きていても大丈夫だな。と、いうような軽快な安堵感もある。 な…

車谷誠二
1年前
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リビングの煙と線香の煙

 四月五日、煙草をやめると心に誓う。  煙草は百害あって一利なし。朝、裏庭で雲のないまっさらなブルーを眺めながら煙草をふかしていた時、唐突にそう思った。まるで雷…

車谷誠二
1年前

エチュード

 日向の匂いを感じることが多くなった。この文章を書いている今この時も、部屋の窓から陽光が差し込み、なんとなく日向の匂いが感じられる。  窓から差し込む陽光はちょ…

車谷誠二
1年前

ググった先に見えるもの

 歯を磨く——。これはもう日常生活とは切っても切れない行為で、私は上の歯、下の歯を丁寧に三分以上歯ブラシでゴシゴシやり、歯ブラシは二週間に一度は新品に取り換えて…

車谷誠二
1年前
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物語るまでの距離、現在地、

 どんな物語を紡ごう——。  はたして自分はどんな物語を紡ぎたがっているのか——。   そんな漠然とした問題を私は日々グーッと考えている。でもなかなかアイデアの芽…

車谷誠二
1年前

「自己責任」って楽しい

 足先が冷えている。原因は、今まで履いていたものを履かなくなったから。足をありとあらゆる外部の攻撃からカードし優しく包み込む、アレ。そう、靴下。私は靴下を履くの…

車谷誠二
1年前

「傾向」という名の面白味

妻の知人が2人、自宅に来ている。その2人とは何度か顔を合わせた事があるので2人が来たタイミングで軽く挨拶を交わした。しかし、生来の傾向、というべきか、「アナタは不…

車谷誠二
1年前
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野球小僧に一言だけ

 日常的にやっている事の1つにランニングがある、基本的には30分以上走るようにしている。大体6~7キロ。近所にある川の横の小道の両脇になるブロッコリーのようなモコモ…

車谷誠二
1年前
正しさ、玉ねぎ、みじん切り

正しさ、玉ねぎ、みじん切り

正しいことをしたと思える瞬間は美しい。
なんとも言えない高揚感が全身を駆け巡る。
ようし、これでまだ生きていても大丈夫だな。と、いうような軽快な安堵感もある。
なにを大袈裟な、と嘲笑う人間もいるかと思うが、僕にとって、ホントウのことなのだからしょうがない。

この世界には、数えていたら寿命を迎えてしまうほどの『正しい』が存在し共存している。
忖度することは正しいことだ、と主張する人間が存在する一方

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リビングの煙と線香の煙

 四月五日、煙草をやめると心に誓う。

 煙草は百害あって一利なし。朝、裏庭で雲のないまっさらなブルーを眺めながら煙草をふかしていた時、唐突にそう思った。まるで雷に打たれたような唐突さと衝撃で、嘘みたいだと自分でも思ったが、その日はそれっきり煙草を吸いたいと思わなかった。
 その日の晩飯はなぜかやけに美味く感じた。焼肉だった。リビング中に漂う煙さえ美味く感じたような気がした。煙草から離れると味覚が

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エチュード

 日向の匂いを感じることが多くなった。この文章を書いている今この時も、部屋の窓から陽光が差し込み、なんとなく日向の匂いが感じられる。
 窓から差し込む陽光はちょうど私の手の甲を照らす。この時期の、この時間帯の陽光(十五時)は、ふわぁっと温かい。その温かさには、学生時代の、初恋のあの人に、膝カックンされた時のような、得も言われぬ心地良さがあって、その忘れがたい心地良さに身を浸していたいあまり、私はこ

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ググった先に見えるもの

 歯を磨く——。これはもう日常生活とは切っても切れない行為で、私は上の歯、下の歯を丁寧に三分以上歯ブラシでゴシゴシやり、歯ブラシは二週間に一度は新品に取り換えている。改めて考えてみると、歯という存在はかなり優遇されているような気がする。
 これまで沢山の大人に言われてきた「歯だけは大切にしないといけないよ」と。
 その理由を今考えてみる。様々な部位が組み合わさり形成されているこの肉体の中で、なぜ歯

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物語るまでの距離、現在地、

 どんな物語を紡ごう——。
 はたして自分はどんな物語を紡ぎたがっているのか——。 
 そんな漠然とした問題を私は日々グーッと考えている。でもなかなかアイデアの芽みたいなものは生えてこない。
 あ、これはどうかな、とか、お、これはいいかも、といった小アイデアみたいな、いや、芽にならって、アイデアの種みたいなものと呼ばせてもらおう、そう、そのアイデアの種みたいなものはチラホラ出てくるのだが、その種を

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「自己責任」って楽しい

 足先が冷えている。原因は、今まで履いていたものを履かなくなったから。足をありとあらゆる外部の攻撃からカードし優しく包み込む、アレ。そう、靴下。私は靴下を履くのをやめた。おかげでこの有様。
 でも私はこの足先の冷えを「心地良い」と思っている。それに、この生活に慣れた頃にはきっと足先の冷えもなくなる、なんの根拠もなくそう思う。だって、裸の足先は活き活きと指を開いたり閉じたりして、見るからに楽しそう。

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「傾向」という名の面白味

妻の知人が2人、自宅に来ている。その2人とは何度か顔を合わせた事があるので2人が来たタイミングで軽く挨拶を交わした。しかし、生来の傾向、というべきか、「アナタは不要」という空気をバシバシ感じてしまった私は、退屈な授業が終わった直後に、友人の元へ駆け寄る小学生のような心持ちで、階段を駆け上がり、自分の部屋に籠り、今これを書いている。

エアコンを極力付けない事を、家訓としているわけではないが、そのよ

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野球小僧に一言だけ

 日常的にやっている事の1つにランニングがある、基本的には30分以上走るようにしている。大体6~7キロ。近所にある川の横の小道の両脇になるブロッコリーのようなモコモコした木々やガーデニングに精を出す各家庭が丹精込めて育てた花々を軽やかにスルーし(散歩中の飼い主が緩めた犬のリードのせいで痛い目に遭う時もある。全ての飼い主に私は言いたい、誰もが犬を好きだと思うなよ?)、思春期絶頂の頃、電車で1時間ほど

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