Amtrak アメリカ鉄道旅 06 カリフォルニア・ゼファー
California Zepher(カリフォルニア・ゼファー)は、シカゴとサンフランシスコのエメリービルを結びます。美しいロッキー山脈、シエラネバダ山脈、川や谷を越え、イリノイ州、アイオワ州、ネブラスカ州、コロラド州、ユタ州、ネバダ州を抜け、カリフォルニア州にたどり着きます。
運行間隔:毎日運行
運行都市:シカゴ - サンフランシスコ(エメリービル)
時間:51時間20分
距離:3,924km
シカゴからアメリカ西海岸に向かう路線は3路線あります。このカリフォルニア・ゼファー号は、前回お伝えしたエンパイア・ビルダーの南を走りサンフランシスコに到着する路線です。アメリカの真ん中を横切る路線ですので、美しい大平原、ロッキー山脈、ソルトレイクなど有名な場所を通り抜けていきます。景色も美しく、ロッキー山脈の山々を間近に見たり、コロラド川を併走し、ユタの赤い岩(ビュート)が迫ったりとダイナミックに飛んでいるのも見どころです。
(この記事は2022年3月のタイムスケジュールに基づいています。スケジュールなどは変更される可能性があります。ご自身の旅の時はご注意下さい。)
ハイライト
アムトラックの中でも長い路線のひとつであり、ロッキー山脈の真ん中を走るルートです。アムトラックの旅で、このルートを選ぶ旅行者も多いです。
西行き列車はシカゴを昼過ぎに出発、オマハを経由しコロラド州デンバーに向かいます。デンバーを過ぎるとロッキー山脈越えとなります。ロッキー山脈を越えるとユタ州の高地が続きます。ここではモニュメント・バレーのような赤いビュートや美しい地層を見ることができます。ソルトレイクに到着。モルモン教の総本山として有名なこの街はスキー場も沢山あります。ソルトレイクを出るとシエラネバダ山脈を越え、西海岸サンフランシスコに到着します。
食事や設備など
食事は、美味しいとネットで書かれていますが、日本人としては味は普通です。車内で調理していますが基本はレンジで作った料理、そして少ないメニューに飽きてしまうでしょう。出発駅や途中止まる駅で車内食以外の食事を確保するのも長旅を楽しむコツです。
設備は、ベッドルーム、ルーメットという個室とビジネス、コーチという座席があります。チケット購入の際に図を確認して購入してください。コーチの席でも座っている分には問題ありませんが、長距離の旅になると個室をお勧めします。そしてルーメットは結構狭いです。夫婦やカップルでもちょっと息が詰まります。
乗る前に知っておくべき情報
この列車にはwifiはありません。ルートの全行程を利用する場合は、長時間で2泊の行程となるためルーメットやベッドルームなどを利用すべきです。オブザベーション・カーの連結はありません。ロッキー山脈を観光したい場合は、デンバー駅で降りてレンタカーでの観光をおすすめします。
トイレは随分ときれいになりました。スタッフはトイレを常に掃除しているようです。列車室内も改装が行われています。
列車は遅延が頻繁に起きています。これだけ長い路線となると仕方がないのかもしれません。現在はネットで遅延状況がわかるので途中駅から乗車する方や迎えに行く方はチェックしてください。
搭乗記
乗車シカゴからサンフランシスコへ
ここではシカゴから西向きのカリフォルニア・ゼファー号に乗車します。
<Day 1>
・シカゴ Chicago, IL – Union Station (CHI)
シカゴ駅のラウンジは大きく2階構造になっています。コーヒーやスナックなどが豊富に置かれているので、今後の旅のことを考えスナック類はいくつかピックアップしておくといいでしょう(コロナ禍ではスナックの提供は行われていません)。
列車には出発の20分程前に案内されます。裏ルートのようなところを通ります。そこには長い編成のアムトラックが銀色に輝いて停まっています。
係員の誘導により乗車し、自分のコンパートメントに着席する頃、午後1時50分、カリフォルニア・ゼファーはゆっくりと駅を離れ出発します。背後にはシカゴの美しい摩天楼が見えます。
しばらく走ると、窓の外には延々と畑が続きます。夏は麦の栽培が行われています。そして小さな街を次々と通り過ぎていきます。街にはドイツあたりの建築様式のような可愛らしい家々が見えます。この辺りはグレートプレーンズですので山や谷はありません。ひたすら平地が続きます。街では各家への給水のために大きな給水塔を立てているのですが、この給水塔に町名が記されているので、どの町を通過しているのかがわかります。ただ、日本人にとって馴染みのある町名はありませんでした。
夕方5時過ぎにゆっくりとミシシッピ川を渡ります。そしてアイオワ州に入ります。この頃、初めての夕食を食べることになります。
アイオワ州は、湿地帯で、所々に湖というか池のようなものが見えます。あまり人が住んでいないようで、そのまま放置されている自然のようです。その合間に畑があります。街の数も減り、たまにポツンと誰が使うのかわからないガソリンスタンドが立っていたりする田舎の風景が続きます。
・オマハ Omaha, NE (OMA)
夜10時20分、ネブラスカ州のオマハ駅に停車。ここでは列車にディーゼルガソリンを給油するためしばらく停車します。
オマハを出ると、乗客のみなさんは就寝します。
<Day2>
朝起きると、前方にロッキー山脈が見えてきます。夜の間にアムトラックはグレートプレーンズを西に直走り、このルート最大の駅デンバーに近づいてきました。私が秋に見たロッキー山脈は頂上付近に雪が被り、それは素晴らしい光景です。天気が良かったら6時頃に起きて、高地デンバーからのロッキー山脈を眺めて欲しいです。
・デンバー Denver, CO – Union Station (DEN)
デンバー到着前にカリフォルニア・ゼファー号は一度止まり、逆走を始めます。これはデンバー駅が終着駅のためスイッチバックする必要があり、カリフォルニア・ゼファー号が頭から駅に入ってしまうと、その後バックして走行しなければならないため、先頭車両をデルタ線に引き込まなければならないからです。この作業によりカリフォルニア・ゼファー号は同じ向きに進めることになります。
デンバー駅には朝7時35分到着。出発は8時05分ですので、約1時間停車します。ここでは列車を降りて駅構内を散策するのも楽しいでしょう。ただ列車が遅れている場合は停車時間が短くなることもあるので、出発時間は必ず確認をお願いします。
朝食は車内でデンバー到着前か出発後に用意してくれますが、私は駅で食べました。駅にはデンバーのローカルフードを提供するレストランが多数あるので、こちらの方が美味しくヘルシーです。因みに車内ではマクドナルドの朝食セットのようなものが提供されます。
デンバーを出ると、いよいよロッキー山脈越えです。このルートの目玉であるBig Ten Curveに差し掛かります。山を登るためにいくつものカーブを通り抜けます。一番の見どころは巨大なオメガカーブです。先頭車両が首を曲げて坂を登っていく姿は見ものです。展望デッキのついた列車がある場合は、早めに場所を確保しましょう。多くの乗客がこのカーブを撮影するために展望車に押し寄せます。ビッグ・テン・カーブで標高1600mから2800mまで高度を上げます。この辺りは木がほとんど生えていないので、車窓からは通ってきたカーブがはっきりと見えます。すごいカーブを登ってきたことがよくわかる光景です。
ここでグレート・プレーンズ(大平原)は終了し、ロッキー山脈に突入です。ここから33ものトンネルをくぐりながらさらに高度を上げていくのです。
そして、Moffatあたりでコンチネンタル・デヴバイドを通過します。ここに降った雨は東と西に分かれて流れていくのです。この辺りは鬱蒼とした森林です。よくこんなところに鉄道を通しなものだと感心させられます。
・グレンウッド・スプリングス Glenwood Springs, CO (GSC)
午後1時53分 アスペンへのゲートウェイ駅です。スキー場もいくつか見えましたが、この辺りは冬には世界中からスキー客が押し寄せる豪雪地帯です。冬、カリフォルニア・ゼファーに乗ると、ここで降りるスキー客が多いです。夏はあまり状況客はありません。
そして、コロラド川の脇をアムトラックは走ります。雄大な自然を目の当たりにしてひたすら景色に見とれてしまいます。春から秋にかけてはこの辺りには観光客が多く、川下りをする人たちや釣りをする人をよく見かけます。そして景色はだんだんと赤みを増してきます。このコロラド川、まだまだ上流で川幅も狭く急流ですが、下流に行くと大きな川になりその流れがグランドキャニオンを作ることになります。
・グランド・ジャンクション Grand Junction, CO (GJT)
太陽がちょっと傾いてきた頃、午後4時10分にグランド・ジャンクション駅に到着です。この街には小さな集落といくつかの宿泊施設や商業施設以外何もありませんが、東はデンバー、西はソルトレイクやラスベガス、南にはアルバカーキがあるので、それぞれの都市を移動する際に宿場町として発展しました。今でもグランド・サークルを巡るときなどに休憩で立ち寄る街として経済は成立しています。
アムトラックは、雄大な赤茶けた高原を走り続けます。西部開拓時代の面影を残す岩や森林は、当時とほとんど変わらない景色でしょう。
列車はコロラド川と別れを告げ、北西に向かって走り始めます。アーチーズ国立公園やキャニオンランズ国立公園の近くを通るので、大自然が作り出した岩柱やビューとと呼ばれる巨大ビルのような岩山、穴の空いたまるで橋のような巨大岩などを守ることができます。地球ではないような景色に驚かされます。
線路は道路や川沿いを走らず、山々を縫って走り続けます。この辺りで夕日がかなり傾いてきます。そろそろ夕食です。
・プロボ Provo, UT (PRO)
ユタ州に入ります、夜9時30分、ソルトレイク・シティの手前のプロボに到着します。ソルトレイクは都市として大きく、そのすぐ南にあるこの街も発展しています、この辺りには恐竜が多数生息していたようで、たくさんの化石が発見されています。現在でも発掘が行われており、観光客も化石の発掘ができる場所があります。
・ソルト・レイク・シティ Salt Lake City, UT – Amtrak Station (SLC)
夜11時30分到着、約30分停車します。モルモン教の総本山があるソルトレイク。ここではお酒が提供されなかったりと宗教色の濃い街となっています。といっても近くに高級スキーリゾートやイエローストーン国立公園があるので、モルモン教徒以外の人も観光で訪れる都市となっています。私はオリンピックも開かれたスキー場に何度か行ったことがありますが、そこはとても素晴らしいリゾート地でした。1月下旬にはサンダンス映画祭も開かれます。
カリフォルニア・ゼファーは、ソルトレイク駅を出ると西に進路を変え巨大なソルトレイクの南を通りシエラネバダ山脈を超えていきます。このシエラネバダはとても美しい森林地帯です。残念ながら西行き列車ではこの辺りの景色は夜のためあまり見えません。
<Day3>
・レノ Reno, NV (RNO)
いよいよ最終日です。
朝、起き朝食を採るとに9時15分レノに到着です。ラスベガスに次ぐギャンブルの街として有名ですが、ラスベガスと比べるとなんとも寂しいものです、ただ本物のギャンブラーはここにたくさんいて、朝から晩まで賭け事をしています。観光地化したラスベガスよりも怪しい雰囲気が漂っています。
・トラッキー Truckee, CA (TRU)
カリフォルニア州に入り、10時15分、トラッキーに到着です。この街は鉄道の街として有名だそうで、駅前には鉄道公園みたいなものが併設されています。この駅はレイク・タホ地区へのゲートウェイだそうで、レイク・タホにある高級リゾート地やスキー場に行くお客さんたちで賑わっています。駅周辺は美しい景色が広がり太陽の光で輝いています。この街で余生を過ごしたいというアメリカ人に何人も出会いましたが、その意味がわかるような気がします。天候は穏やかで美しい自然があり、時間がゆくりと流れているのが車窓からも感じられるエリアでした。
・サクラメント Sacramento, CA – Sacramento Valley Station (SAC)
午後2時15分にカリフォルニア州の州都サクラメントに到着です。シエラネバダ山脈を超えたサクラメントは平らな大地が広がっていて、延々とつづく畑が見えます。かつて日系移民はこの辺りで米などを栽培していたそうです。今でも日系人が多く住むエリアです。
・エメリービル Emeryville, CA (EMY)
夕方4時50分到着。サンフランシスコの街中には直接アムトラックは乗り入れていません。エメリービルはサンフランシスコとは湾を挟んだ反対側にあります。サンフランシスコに行く場合は、この駅からシャトルバスが出ています。時間にして30分くらいです。
停車駅について
停車駅は以下に記します。駅名の後ろのアルファベットは駅の記号です。チケットを購入する際にも使われます。かなりの数の駅に止まりますが、長い旅程なので、実際に乗ってみるとあまり気になりません。主要駅以外では人の乗り降りはそれほど多くなく寂しい感じです。
各停車駅(太字は主要駅)
Chicago, IL – Union Station (CHI)
Naperville, IL (NPV)
Princeton, IL (PCT)
Galesburg, IL (GBB)
Burlington, IA (BRL)
Mt. Pleasant, IA (MTP)
Ottumwa, IA (OTM)
Osceola, IA (OSC)
Creston, IA (CRN)
Omaha, NE (OMA)
Lincoln, NE (LNK)
Hastings, NE (HAS)
Holdrege, NE (HLD)
McCook, NE (MCK)
Fort Morgan, CO (FMG)
Denver, CO – Union Station (DEN)
Fraser-Winter Park, CO (WIP)
Granby, CO (GRA)
Glenwood Springs, CO (GSC)
Grand Junction, CO (GJT)
Green River, UT (GRI)
Helper, UT (HER)
Provo, UT (PRO)
Salt Lake City, UT – Amtrak Station (SLC)
Elko, NV (ELK)
Winnemucca, NV (WNN)
Reno, NV (RNO)
Truckee, CA (TRU)
Colfax, CA (COX)
Roseville, CA (RSV)
Sacramento, CA – Sacramento Valley Station (SAC)
Davis, CA (DAV)
Martinez, CA (MTZ)
Emeryville, CA (EMY)
注意点
・長距離路線なので、到着が遅れることがあります。スケジュールには余裕を持ってください。
・食事は炭水化物過多なので、サラダやフルーツなどを持っていくと良いでしょう。
・アメリカの大自然を見るには最適の路線です。特にロッキー山脈越えの車窓は見事です。そして東から西に向かう場合はグレート・プレーンズ、ロッキー山脈、ユタの赤い大地、シエラネバダ山脈と素晴らしい景色を見ることができます。
・ルーメットは狭いです。日本人なら問題ないと思いますが、体が大きい人には窮屈でしょう。2名で利用する場合は、家族など親しい人ならいいのですが、かなり狭いということを予期してください。
・サンフランシスコ市内には駅がありませんので気をつけてください。
最後に
カリフォルニア・ゼファー号。アメリカの真ん中を横断するので、美しい大自然をみながらの旅となりました。観光客に人気の路線であることは乗ればわかると思います。シカゴ、デンバー、ソルトレイク、サンフランシスコという大都市を結んでいるので、途中下車の旅にも適している路線です。
私は個人的にこの路線が気に入っています。エンパイア・ビルダーはアメリカの北を走るので景色は寒冷地っぽい針葉樹が広がっていました。そしてカリフォルニア・ゼファーより南側を走るサウスウエスト・チーフは、南の砂漠地帯を走ります。一番景色の変化に富んでいるのがカリフォルニア・ゼファーなのではないでしょうか。この素晴らしい大陸横断鉄道に是非乗ってみてください。
各回テーマ:
01 アムトラックの旅
02 アムトラックの路線
03 アムトラックのチケット購入・座席の種類
04 アムトラックの駅
05 エンパイア・ビルダー号
06 カリフォルニア・ゼファー号
07 サウスウエスト・チーフ号
08 コースト・スターライト号
09 アセラ・エクスプレス号
10 エンパイア・サービス号
11 レイク・ショア・リミテッド号
12 メープル・リーフ号
13 シルバー・サービス号(シルバー・メテオ号 / シルバー・スター号)
14 フロリディアン号(キャピタル・リミテッド号)
15 シティ・オブ・ニューオリンズ号
16 サンセット・リミテッド号
17 テキサス・イーグル号
18 クレセント号
19 カージナル号
20 パルメット号
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