サトウトシオ

会社都合で無職になった51歳の男。バツ2。子なし。貯金なし。借金あり。 ソムリエとバリ…

サトウトシオ

会社都合で無職になった51歳の男。バツ2。子なし。貯金なし。借金あり。 ソムリエとバリスタの二刀流であるが、どちらの資格も落ち続けてやっとの及第点、一流にはほど遠い平均以下の技量と知識。そんな男が失業からどう生きていくか。事実を元にしたフィクション日記。

最近の記事

第三十三話「カウントダウンダウン」2024年7月20日土曜日 曇りのち大雨

 いよいよ明日、ワークショップだ。  突然の失業から何かやらねばと思い、自分で企画したワークショップ。  船長とN美さんをはじめ、レンタルスペースのオーナー、あんころちゃんに助けてもらってようやく漕ぎ着けたイベント。  カウントダウンは始まっている。  準備は万端だ。今日は搬入物の最終チェック。そして併設する船長のクッキーの販売ブース用焼き菓子をピックアップしなくてはならない。  私は朝イチから昼まで第二回目のオンライン起業セミナーに出席した。  N美さんは一足先に船長のキ

    • 第三十二話「覚悟とロゴ」2024年7月17日水曜日 晴れ

       私鉄沿線の駅に降りた。ワークショップの会場となるレンタルスペースのある街だ。最終的な下見と、什器のレイアウトやプロジェクターの動作確認のためだった。  約束までまだ時間があった。N美さんと昼飯を食おう、となった。  昨日の雨の湿気がわずかに残る空気をかき分けて、地元で有名な町中華の店に向かう。  創業60年近くになるそうだ。店主はまだ現役だが、営業時間は短縮している。開店から閉店までずっと中華鍋を振っているという炒飯の名店だ。営業時間の短縮は否めないだろう。  次世代の店主

      • 第三十一話「起業セミナーと焙煎体験」2024年7月13日土曜日 晴れ

         世間は三連休の初日。失業者にとっては毎日が連休。という呑気な状況でもない。  8時にアラームが鳴る。今日は区が主催する無料起業セミナーの初日なのだ。  時節柄リモートで行われる。それでも髭を剃り、清潔感のあるTシャツに着替えておく。間違っても下は寝巻きのままなんてことはしない。  定刻に始まった。内容は初回ということもあり、起業にあたっての準備の準備というようなものだった。すでに起業した者、起業を志し準備している者にとっては復習やおさらいのように感じるだろう。しかし何の装備

        • 第三十話「五十肩」2024年7月12日金曜日 雨

           猛暑、酷暑も雨には敵わないらしい。気温は上がらずやや過ごしやすい。涼しい風が吹いている。  しかし、九州や中国地方の大雨は災害クラスだったそうだ。このあと関東も警戒が必要という。何事もないといいのだが。  小雨の中、近所のリハビリクリニックに来ている。  何週間か前から右肩に痛みが走るようになっていた。可動域も狭くなったように感じる。なんということはない動きで悶絶してしまうこともあれば、なんの違和感もなく普通通り動くこともある。原因は思い当たらない。  五十肩。  まあ、そ

        第三十三話「カウントダウンダウン」2024年7月20日土曜日 曇りのち大雨

          第二十九話「自分を信じる」2024年7月6日土曜日 曇りのち雨

           エスプレッソ抽出の基本的な流れは  1.ドーシング  グラインダーからポルタホルダーにコーヒーの粉を入れる動作  2.ドーシングアップ  ポルタホルダー内の粉を詰める動作。粉に触れずにグラインダーのフォーク状の部品でホルダーを叩き、粉を上下方向に詰める  3.レベリング  山状の粉をほぼ水平に均す動作。指や掌を使うこともある。ホルダーの前後左右を叩いて粉を揺らしながら均すこともある。  4.タンピング  粉に平らに圧をかけて押す動作 となる。  この流れにもちろん

          第二十九話「自分を信じる」2024年7月6日土曜日 曇りのち雨

          第二十八話「自分を疑う」2024年7月6日土曜日 曇りのち雨

           朝から暑い。予報では気温は35℃を超えるそうだ。連日の猛暑。こういう日だけは失業者で良かったと思う。  失業者ではあるが、今日は中央区のオフィス街にあるカフェに来ていた。船長のクッキーをコラボ販売してくれるカフェ。先日挨拶と下見を済ませていた。今日がそのコラボイベント当日。私は手伝いのボランティアだ。  一週間の旅行にも耐えられる大きさのスーツケースに、いっぱいのクッキーと焼き菓子、陳列用の什器を入れての移動。私はその荷物運びである。重い。  カフェに着いて、その店長ーーこ

          第二十八話「自分を疑う」2024年7月6日土曜日 曇りのち雨

          第二十七話「失業保険終了まで、あと307日」2024年7月3日水曜日 快晴

           2回目の受給認定日。受付時間は9:30から10:00と決まっている。罰則はないが時間くらいは守りたい。  例によって、運動不足解消のため30分かけて歩くことにした。曇り空だが朝から気温も湿度も高い。じっとりと粘つく空気が汗を誘う。  二階に行き、認定の書類の確認を受ける。アルバイトを3つ掛け持ちしているので、同じ書類が3通。煩雑だ。  担当したのは感じのいい若者だ。3通の書類を確認し、不備のある部分を丁寧に説明してくれる。  隣のブースでは、認定条件に満たない受給者と担当者

          第二十七話「失業保険終了まで、あと307日」2024年7月3日水曜日 快晴

          第二十六話②「ペルソナー男性」2024年7月1日月曜日 曇り

           続いて、男性のペルソナ作成に取り掛かった。 【ペルソナー男性】  氏名:照苑聡太(てるぞの そうた) 年齢:38歳 出身地:静岡県清水市 住まい:出店先徒歩圏内。     最寄り駅から徒歩10分     家賃75000円 家族 :実家に両親。健在。     父は市役所職員     母は専業主婦     弟がひとり。     静岡県内で会社員、一人暮らし     家族とは疎遠であるが、     いい意味で皆自立している。 職業 :IT系エンジニア フリーランス     大学

          第二十六話②「ペルソナー男性」2024年7月1日月曜日 曇り

          第二十六話①「ペルソナー女性」2024年7月1日月曜日 曇り

           ペルソナ。元々は舞台役者が被る仮面のことをそう呼んだらしい。  心理学では社会生活を営むうえで演じる自身のキャラクターのことを指す。やはり仮面だ。  マーケティング用語では、「20代男性」「⚪︎⚪︎に住む人」「貯蓄が⚪︎⚪︎円ある人」などのターゲット層をさらに掘り下げ、あたかも生身の、生活のある人間として設定されたキャラクターだ。  そのキャラクターへ向けて商品開発、広告宣伝手法、その戦略、空間作りを行う。ペルソナの1日のタイムスケジュール、金銭感覚、悩み、幸せに感じること

          第二十六話①「ペルソナー女性」2024年7月1日月曜日 曇り

          第二十五話「巫女の宣託」2024年6月29日土曜日 晴れ

           昨日の大雨とは打って変わって朝から快晴だった。アスファルトに染み込んだ雨が気温と共に今度は空気に溶け込んでいく。日差しに湿気が重なり不快指数が上昇する。  郊外の健康食材カフェへは電車で向かう。朝のラッシュから少しズレた下り電車。読書にはちょうどいい空間だった。  私はマーケティングの入門書を読んでいる。失業者の財布は軽い。図書館で借りたものだ。初心者向けの読み進めやすいものだったが、非常に興味深い。  少し前、N美さんにブランドとコンセプトに関するアドバイスをもらった。

          第二十五話「巫女の宣託」2024年6月29日土曜日 晴れ

          第二十四話「デジャヴ」2024年6月26日水曜日 曇り

           梅雨時らしいじっとりとじめついた空気の中、船長とN美さん、私は中央区のオフィス街にいた。  あるカフェが船長のクッキーとのコラボイベントを行う。その挨拶と下見に来ていた。私は図々しくもそれに同行させてもらったのだ。  コラボのカフェは船長とN美さんの旧知の方が店長を務めるお店だ。超精密なラテアートを描く男性だ。こういう機会でもないとお話もできない立場の方なので、同行させてもらったわけだ。  区画の角地に立つ二階建てのカフェは、木造を意識した和風テイストの内装だった。私たちは

          第二十四話「デジャヴ」2024年6月26日水曜日 曇り

          第二十三話「食品衛生責任者講習修了証と名刺」2024年6月22日土曜日 晴れ 

           シェアリングコーヒーショップ出店には食品衛生責任者資格が必須だった。ガイダンス終了後すぐにeラーニング講習を申し込み受講を開始した。  約6時間のスライド講習と章立てごとの確認テスト。テストの問題数は各5問。資料を見ながらの回答でよいので難易度は低いが、各章立てのスライドを視聴しなければテストは受けられない。失業中とはいえ合計6時間の視聴時間確保は難しかった。それでも何とか視聴を完了し、修了テストにも合格できた。  内容も有意義だった。10年近く飲食業にいる。今更常識的な部

          第二十三話「食品衛生責任者講習修了証と名刺」2024年6月22日土曜日 晴れ 

          第二十二話②「ブランド、そしてコンセプト」2024年6月19日水曜日 快晴

           自分のできること、やりたいこと、やれる環境の棚卸しをしてみた。 ⚫︎ワイン ・スパークリング、赤、白、ロゼ そのうち2種を置く ・出店日ごとに銘柄を替える ・用意されたグラスがあるなら、そのグラスやつまみになるクッキー(船長に依頼する)に合う銘柄にする ・船長のクッキーとのペアリングならどんなソムリエよりも私に一日の長がある ・ワインはカジュアルワインにする。氷を入れたり、ソーダで割ったりが可能なカジュアル路線 ・グラスで600〜700円と設定する ⚫︎コーヒー ・エス

          第二十二話②「ブランド、そしてコンセプト」2024年6月19日水曜日 快晴

          第二十二話①「ブランド、そしてコンセプト」2024年6月19日水曜日 快晴

           シェアリングコーヒーショップの広告宣伝はInstagramで出店者が行わなくてならない。そのための店舗ロゴが必要であった。  そのロゴデザインを依頼するために出かけた。雨の昨日から今日はさわやかな快晴だった。梅雨の湿気はなく、心地いい風が吹いている。  少し前の夜。  ロゴ作成にあたってフリーのデザインサイトでサンプルをぼんやりと見ていた時、N美さんが私のスマホをのぞき込んで言った。 「ブランドやコンセプトをきちんと見極めたほうがいいですよ」 私はベッドに転がったまま答え

          第二十二話①「ブランド、そしてコンセプト」2024年6月19日水曜日 快晴

          第二十一話「シェアリングコーヒーショップ 説明会」2024年6月14日金曜日 夜 曇り

           一睡もできないまま朝を迎えた。  昼に健康食材カフェのアルバイトがある。夕方前までの5時間勤務。不眠のままの勤務は五十過ぎの身体には堪えた。眠気はそれほどではなかったが、とにかく身体が重かった。  勤務後まっすぐ帰宅し、早めの夕食をとった。19時からシェアリングコーヒーショップのオンライン説明会があるのだ。夕食後にベッドで少し微睡んだ。オンライン説明会といえど、睡眠不足の顔は悪印象だろう。  10分前に着替えを済ませ、接続を待った。  時間ぴったりに説明会は始まった。  参

          第二十一話「シェアリングコーヒーショップ 説明会」2024年6月14日金曜日 夜 曇り

          第二十話「ワークショップ 告知と募集受付開始」2024年6月14日金曜日 未明

           N美さんに作成してもらったInstagramのワークショップ用告知文は船長の最終チェックと若干の修正が入り、アップされた。昨日の夜だった。  4月末に閉業した私たちのカフェのアカウントにアップした。なくなったカフェのアカウントを残していたのは、いつかまた同じ街にもう一度開業したいという夢と、常連客でもあったフォロワーから「思い出を残して欲しい」との声があったからだ。たった半年の営業でそのような声があったことが私たちの励みにもなっている。  アップされるとすぐに「いいね!」の

          第二十話「ワークショップ 告知と募集受付開始」2024年6月14日金曜日 未明