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第三十三話「カウントダウンダウン」2024年7月20日土曜日 曇りのち大雨

 いよいよ明日、ワークショップだ。
 突然の失業から何かやらねばと思い、自分で企画したワークショップ。
 船長とN美さんをはじめ、レンタルスペースのオーナー、あんこちゃんに助けてもらってようやく漕ぎ着けたイベント。
 カウントダウンは始まっている。
 準備は万端だ。今日は搬入物の最終チェック。そして併設する船長のクッキーの販売ブース用焼き菓子をピックアップしなくてはならない。

 私は朝イチから昼まで第二回目のオンライン起業セミナーに出席した。
 N美さんは一足先に船長のキッチンへ向かった。
 セミナー後、軽く昼飯を済ませ、筋トレをする。3kgのメディシンボールを使った10分程度のワークアウトだ。有酸素運動と筋トレを同時に効率よく行える。何よりも部屋着でできて、故障の危険が少ないというのがいい。
 シャワーを浴びた後、搬入物の最終チェックをし、夕方前にはキッチンに使った。

 キッチンというと可愛い響きだが、船長の造るクッキーと焼き菓子を製造し、発送する現場でもある。コンパクトではあるが立派な菓子製造所であり、物流部門の拠点でもある。
 私も久しぶりに、次々に生まれる洗い物(洗浄物品というべきか)を洗い、焼かれたクッキーを個包装し、ラベリングしていく。
 合間を縫って、船長のラミネーターやプリンタを借りて、ワークショップとシェアリングコーヒーショップのメニューや看板を作っていく。
 ワークショップにもシェアリングコーヒーショップにも不思議と緊張はない。
 船長との心強いコラボ企画、N美さんというパートナー、あんこちゃんのロゴイラスト、レンタルスペースは私のホームの街にあるようなものだ。こんなに頼もしい仲間は他にいない。

 作業中、外から雷鳴がした。ほどなく強い雨音。予報通りの大雨。
 それでも、不穏な空気にはならない。
 今の私には、この大雨さえ濡れずに帰れるような無根拠な自信と充足感あった。
 作業を終え、クッキーをスーツケースにパッキングし自宅に帰ろうとキッチンのドアを開いた。
 雨は止んでいた。
 N美さんも微笑んでいる。

 止まらぬカウントダウンを組曲の前奏曲のように感じていた。

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