腐ったみかん

日々のあれこれ

腐ったみかん

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最近の記事

2021.9.28

連日土方氏と新撰組に想いを馳せていた私だったが、同時に美味しいグルメを頂くことにも余念が無かった。ほとんどどのお店に行っても、肉厚で濃厚な海鮮を味わうことができた。中でも、自分で好きなものを好きなだけ食べられる回転寿司はやはり便利で、3日連続で通った。ありふれていて深く考えたことはなかったけど、回転寿司を発明した人は天才だ。食べ盛りをとうに過ぎた私には、市場の海鮮丼のご飯の量は食べられる量(食べて良い量)をはるかに超えている。回転寿司で、シャリを小さめにしてもらって、食べたい

    • 彼らの残り香

      私は今生まれて初めて函館に来ている。『燃えよ剣』を読んでから憧れ続けてきた五稜郭を訪れることができて、感無量である。私は単純な性格なので、『燃えよ剣』で土方歳三が好きになったし、敗戦の続く旧幕府軍において唯一連戦連勝、鬼神のような戦いぶりを見せる土方が特に好きだ。死に場所を探すような捨て身の戦いぶりには、胸をキューッと真綿で締められるような苦しさと恍惚を覚えてしまう。新撰組の遺蹟を巡る度、彼らの運命を思っていつも胸が張り裂けそうになる。日本史において、彼らが果たした役割はほと

      • 2021.9.24

        函館2日目は、曇天に覆われて肌寒い1日になった。綿菓子のように分厚くて大きな雲が函館の上空に長い間停滞していて、雲の切れ目から函館湾に注いでいる太陽が妬ましかった。本来暖かいはずの海風も、木枯らしのように私の体を冷やした。手持ちの服には防寒具がなく、半袖に薄手のジャケット1枚でいたので、終始鳥肌が止まらなかった。「時間を無駄にできない」というもったいない精神で自分を鼓舞しながら、元町エリアなどを散策した。「異国情緒あふれる街」という触れ込み通りの、ヨーロッパ風の街並みや建物は

        • 2021.9.22

          私は今洞爺湖のほとりで悠々自適の一人旅をしている。高校の時、ヘンリー・デイビッド・ソローの『森の生活』を読んでから、何となく森深い湖の湖畔での暮らしに強烈な憧れがあった。洞爺湖に訪れる用事ができた時に、ついに長年の夢を叶えるチャンスが来たとばかりに長期休暇をとった。 しかし、実際訪れてみると、洞爺湖は思い描いていたような山奥にある静かな湖ではなく、まるっきり観光地であった。ソローのような、自然と一体化する体験をイメージしていたので、正直ややがっかりしたが、よく考えてみると、

          20210920

          数年ぶりに友人の結婚式に招待され、はるばる他県へ出かけた。他人の結婚式は苦手だと言う人もいるが、私は割と好きな性質で、だいたい花嫁の年老いた家族たちの、嬉しさと寂しさが入り混じったような姿を見て泣いてしまう。娘を持ったからには、いつか立派に嫁に出すということをある種目的として長年自分の人生の全てを捧げることになるのだろうから、その積年の苦労がついに報われる瞬間の、寂しさを伴う解放感に、ひどく共感するのだ。 何十年も抱き続けた「いつか」がついに叶う時、晴れ晴れとした達成感のあ

          闘牛

          ボロいと言うには少し物足りない、でも明らかに貧乏人が住むアパートに私たち家族は住んでいた。L字型のベランダがついた、2階の角部屋が私たちの家だった。その細長いベランダに西日が落ちる頃、私は帰宅した。 ベランダには、ここ最近の私の悩みの種である大型の動物が変わらず鎮座していた。私は心の中だけで深いため息をついた。私たちのアパートの大家は、大変非常識な人で、数か月に私たちのL字のベランダの一辺にサラブレッドを置いていった。どうやって運んだのか分からないが、きっと私たちが留守の間

          2021.2.22

          同僚から「結婚しました!」というメッセージが送られてきた。その時、私は通勤電車の中で自動小銃のAK47が世界中で引き起こしている惨劇に関するルポルタージュを読んでいた。右手で「おめでとう!」と打ちながら、相手からの返事を待つ間に、左手で持った文庫本のページに目を走らせた。AK47は丈夫で扱いも非常に簡単なため、ゲリラが子供を攫ってAK47を持たせ、兵士として働かせるようになった、ということが書いてある。にゃんにゃんにゃんの日に入籍して幸せいっぱいの同僚とはえらい違いである。そ

          これって私だけですか

          人出が減った影響か、近頃は並ばずにタピオカが飲めるようになってきた。久しぶりのタピオカは、適切な柔らかさに茹でられていて、ほんのりと優しい甘みがあった。くちゃくちゃとタピオカの粒を噛んでいると、学生時代に友達と「口の中に何個タピオカを同時に含むことができるか」というコンテストを開催し、いつも優勝していたことを思い出す。コツは、ストローでカップの中にあるタピオカに狙いを定め、なるべくミルクティーを吸い込まないようにそっと吸うこと。そして、タピオカが吸えなかった時に、周りにバレな

          これって私だけですか

          これって私だけですか

          今日の私はものすごく機嫌が悪かった。朝起きた時は普通だったのだけど、待ち合わせに遅れそうになって昼食を食べ損なった時に、歯車が狂ってしまった。そのまま2時間、ぶっ通しで打ち合わせをして、終わったら喉もお腹の中もカラカラになっていた。とにかく、食って飲んで寝たかった。私はどちらかと言えば痩せ型だけど、燃費が悪くて空腹には滅法弱いのだ。連れに当たり散らしながら、電車に乗って来た道を戻る。ものすごくお腹が空いていると、逆に食べたいものが何も思い浮かばなくて、そのことにまたイライラす

          これって私だけですか

          これって私だけですか

          朝起きた時から、何となく空腹感があった。昨夜はビールを飲んですぐ寝てしまったので、胃の中が空になっていた。冷蔵庫にいつものヨーグルトがあるが、もう少し食べ応えのあるものが欲しい。窓の外はよく晴れていて、凍えるような寒さではないようだ。コートを羽織って、財布だけ持って家を出た。一番近いコンビニは、徒歩1分の位置にある。約1週間ぶりの外気が心地良い。コンビニでパンを買った後、向かいの花屋で仏花を見つけたので、一束買った。花を買うという行為には、謎の陶酔感がある。大学時代、友人が「

          これって私だけですか

          2021.2.18

          窓の外を見ると、地面が濡れていた。消防車はすでに鎮火を終えて帰っていった。消火栓から伸びる水跡だけが、火事のあったことを表していた。冬の、よく晴れた昼だった。まるで訓練のような物静かさで、30分後には2軒隣の家が燃えたことなんてすっかり忘れてしまった。夕飯の買い物から戻ってくる頃には、地面も乾いているだろう。

          2021.2.17

          年々、喋るのが下手になっていく。昔はもっと上手に出来たのに、最近は口を開く毎に後悔してばかり。 言いたいことの一つも伝わらないのに、思ってもないことばかり言ってしまう。なぜなんだろう???? 会話をアルゴリズムと割り切っていた頃は、もっと上手く出来たのに。最近めっきり怠け者になったのか、アルゴリズムが起動しない。むき出しの言葉を羅列した後で、ふと我に帰って赤面する。自分の汚物を投げるゴリラになったような気持ち。 辺り一面汚物だらけで、誰も寄って来られない。手からは酷い悪

          2021.2.16

          今日は父の一周忌で、墓参りに行った。最寄駅で家族と待ち合わせ、歩いて霊園に向かう。 「花、いつものところで買うか」と母が言った。物心ついてから墓に通った記憶はほとんどない。20年以上も前の“いつも”だった。最近、自分自身も、10年前の出来事を“この前”と言ってしまうようになったので、時の流れの体感スピードは母とそう変わらなくなってきた。 霊園で花を買うと、ほうき、杓子、自転車の3点セットが借りられた。記憶にある墓参りはいつも父の運転する車での移動だったので、自転車で霊園を走

          2021.2.14

          だいたい年に一度くらいの頻度で、学生時代の友人たちと会っている。それが、今年はたまたまバレンタインデーにあたってしまった。それに気付いたのは、林田君がチョコレートを持って来たからだ。おじさんがデパ地下でチョコレートを買うのは、さぞ勇気がいっただろう。感謝というよりも畏怖の気持ちで「ありがとう」と言うと、林田君は「今は男女関係なく、友チョコを贈りあう時代だからね」と得意そうに言った。林田君は昔からミーハーでチャレンジャーなところがある。ファッション誌で「男のレギンス特集」が載っ

          2021.2.3

          最近良かったことは、仕事で初めて連絡した人からの返事が、本文以外に何も書かれていない塩対応だったこと。 「いつもお世話になっております。」と「何卒よろしくお願い申し上げます。」が存在しない世界が、日本にもあるんだと分かって嬉しかった。 本当に、狭い世界で生きてるな、と思った。 The most pleasant thing that happened to me lately is that I received a col shoulder from a person w

          趣味

          昔から、本物とか、普遍的なものを崇拝している。反対に、表面的なものや刹那的なものにはからきし興味がない。古今東西から、普遍を集めるのが好きだ。 人間のポジティブな感情にはあまりバリエーションが無いが、ネガティブな感情は実に多彩だと思う。自分が体験したことのないシチュエーションで、人間の心がどう動くのかということに、好奇心をくすぐられる。 人間の善意には天井があるが、悪意には底がない。悪意は様々な事象が糸のように複雑により集まって紡がれる。それを解きほぐして、人間の本性を丸