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これって私だけですか

朝起きた時から、何となく空腹感があった。昨夜はビールを飲んですぐ寝てしまったので、胃の中が空になっていた。冷蔵庫にいつものヨーグルトがあるが、もう少し食べ応えのあるものが欲しい。窓の外はよく晴れていて、凍えるような寒さではないようだ。コートを羽織って、財布だけ持って家を出た。一番近いコンビニは、徒歩1分の位置にある。約1週間ぶりの外気が心地良い。コンビニでパンを買った後、向かいの花屋で仏花を見つけたので、一束買った。花を買うという行為には、謎の陶酔感がある。大学時代、友人が「花を買う男は自分に酔っている」と言ったのがいやに記憶に残っているので、そのせいかもしれない。早起きして花を買った自分に酔いながら、徒歩1分の帰路を歩く。向かいから、黄色い帽子を被った乳幼児の集団が、引率の女性たちに連れられて行進してくる。自分の膝くらいしか身長が無い子供を見ると、「小さきものだ!」と叫びたくなる。初めて「子供」という生き物を見た人間の気持ちになって、その可愛さを全力で享受したいという、謎のフェチだ。「新鮮さ」は物事を味わう上での、最上のスパイスだと思う。さらに、「人間の子供を初めて見て、その可愛さに悶絶している人間の成人」というイメージは、滑稽さをも含有している。誰もがかつて子供だったことがあるからだ。昔から、矛盾するものに異常なほど面白みを感じてしまう。「イケメン(イケてるメンツ)」という言葉が全然イケてないことなどは、幾度となく思い出してはニヤニヤしてしまう。「イケメン」という言葉を発する度に、無意味に羞恥心を煽られるのは多分そのせいだと思う。

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