海外で初めて、TEDx(環境)に行ってみた!【レポート・後編】
先日参加したTEDxUtrecht(環境)のイベントを2回にわたってお届けするシリーズ。
この記事では後編のレポートをお伝えする。
前編では、オランダ発、環境問題を打破する最先端の概念、活動や技術を紹介した。
後半では、「私たちが実際にどう行動を起こせばよいのか」を提示してくれたTED TALKを紹介する。
1. ソフトエンジニアを辞めてアフリカを救う
環境問題に取り組むために会社を辞める、というのは誰もができる話ではないが、「覚悟」は人を変えることができる。
オランダ人のSuijten氏は長年勤めたソフトエンジニアの仕事をやめ、"技術で世界の課題を解決するNPO"に飛び込んだ。
安定した職業を離れるだけでも相当な覚悟の持ち主であるが、それだけではTED登壇者に選ばれない。彼は、世界を良くするという並々ならぬ「覚悟」があったのだ。
取り組んだのは、アフリカの崩れかけた生態系を維持するプロジェクト。
地元民の食物を食い荒らす、野生のゾウを監視・録画するビデオ機器が何10年も前の時代遅れの技術であることに気づく。そこから、技術によりイノベーションをもたらした。
あらゆる既存のハードウェアを組み合わせ、動物を検知したら、状況をリアルタイムで携帯に送信するように作り替えたのだ。
Thijsさんは、元々ソフトエンジニア。ハードウェアは、これまでとは違う技術・知識が求められた。それでも「必ずできるはず」と信じていた。百万ある装置から必要なものを選定し、内部のコーディングを行い、組み合わせ、ゼロから独自のビデオ機器を作り上げた。
試作品を抱えて向かったアフリカ出張。
「試作品は本当に正常に動くのか?」
ジャングルに機器を設置し、心配な夜を過ごしていると、携帯に動体検知のアラートがなった。
すぐに監視カメラに確認しに行くと、動物の動きを検知し、携帯に送っていたことが確認できた。
その地域は、リアルタイムで動物の行動を知れるようになり、正しい対策が打てるようになった。
一介のソフトウェアエンジニアが、アフリカのジャングルを守るスーパーヒーローに転身した瞬間だった。
「覚悟」があれば、「今の自分でも、世界を変えられる」ことを証明した。
2. Yumeko - 100%サステナブルな寝具会社
Yumekoという日本名に目が惹かれたが、この寝具会社の革新さにはもっと目を惹かれる。
世界の99%以上のコットンは、"1kg生産"するのに、"1kgの毒"を必要とする。
もっと衝撃的な話をすると、オーガニックコットンはわずか1%未満、0.1%の世界中のコットンだけがフェアトレードだ。つまり、コットン生産には、毒まみれの劣悪環境で、数千万人もの児童労働や過重労働が行われている。
一日の1/4以上の時間を過ごす掛け布団には、動物の毛が使われている。不要な動物の犠牲の上で成り立っている。
そこにメスを入れたのが、この日本名の会社、Yumeko。正真正銘のオーガニック&フェアトレードコットンと、再利用した素材だけで寝具を生産している。
Yumekoは、土地・人間・動物の犠牲の上に、企業が儲かる仕組みに疑問を投げかける。いくらでもサステナブルな代替物があるのに。
Yumekoは、ソーシャルエンタープライズ=社会的企業という形態をとる。利益は求めるが、会社の存在目的は、社会的課題を解決すること。
消費者の私からすると、クリーンな商品は、値段が高く感じてしまう。本来の正当な価格であるにも関わらず。
しかし、よくよく振り返ると「安いから」という理由で、いかに無駄な消費が多いことか。完全に値段や商品に踊らされてしまっている。
「まずは不要な買物を控え、買物をするときには、おもいっきり地球に良いものを。」
そんな意識を持てば、環境への負担を減らし、子供達にも明るい未来を見せることができる。
Yumekoは、オランダ、ベルギー、ドイツにも拡大中。人々の選択が変わり始めている。
3. カンヌ広告賞17回受賞!子供に売れないようなものなら、売るな。
一番、笑いが巻き起こったTED TALK。
カンヌ広告賞に17回も輝いている、"魅せること"のプロフェッショナルである2人が、実際の広告を見せながら話をした。
彼らが、サステナブルな広告づくり・クライアント選びをするようになったターニングポイントは、子供ができたことだったという。
それまで、ファーストフード産業や清涼飲料産業のクライアントがいた。
しかし「自分の子供に勧められないファーストフードや清涼飲料の商品をどうして自分たちが宣伝できるのか?」と疑問に思ったのだ。
そこから、自分たちが信じる・応援したい会社・組織だけをクライアントにすることにした。環境問題啓発、禁煙啓発、若者の交通事故啓発など。そして、消費者に寄り添い、消費者が行動を起こしたくなる手法を追求した。
そして、生まれた傑作がこれ。
"A historic CEO Meeting - too good to be true"
内容を簡単に説明する。
タイトルは、歴史的な(環境問題への取り組みが決まった)CEO会議。
オランダのシェル(石油会社)の社長を始め、オランダ大企業のCEOが会議室に集められている。そこで、シェルの社長が大胆な宣言をする。
「石油の生産を止めた。」
オランダは世界有数の汚染国で、環境に優しい世界を"目指す"と言うが、いつまでも行動に移さないため、自分たちで終止符をうつことにした、と。
はじめは、会議室全体に緊張が走る。しかし徐々に、他の社長たちも覚悟を決め、シェルに習い、温室効果ガス排出を止める発表をし始める。
会議室は興奮と感動が沸き起こり歴史的な瞬間かと思われたところで「(撮影)カット」の声がかかる。
CEO達はみな立ち上がり、黙って退散する。実際は、今までの出来事は全て演技であり、オランダの汚染企業は何も変わっていないことを示す。
…これは、環境破壊を止めるよう大企業に訴える活動を行なっている”NPOの広告動画”だ。映画を見ているかのような迫力のある広告だ。
スピーカーの2人は言う。
「私たちは広告を作ることしかできないが、世界にメッセージを効果的に届けることができる」と。
カンヌ賞に頻繁に受賞しているだけあり、どの広告も圧巻で心を動かされる。公式サイトから見れるので、興味ある方は以下より。
「自分の子供に売れないものは売るな。」
目の覚めるメッセージ、心に刻みたい。
おわりに
前半の記事にも書いたが、TED全体通して強調されていたメッセージは「自分の専門性で、環境問題に取り組めることをしよう」。
今の会社を辞めなくても、「覚悟」を決めれば、誰でも日々の行動から変えることができる。
・環境に悪い会社の商品を購入しない。
・自分の専門性を活かして、環境活動に勤しむボランティアに参加する。(今はオンラインで世界中の活動に参加できる。ついでに、生きた英語の勉強にもなる。)
・クライアントの産業に疑問を持ってみる。
1本のペットボトルを買わないことから、古着屋で服を買ってみるでもいい。できることは無限大。
前半のレポートを未だ読まれてない方は、こちらもぜひ一緒にお読みください。(前半の方が反響が大きかった..)
おしまい。
ニケ
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