見出し画像

海外で初めて、TEDx(環境)に行ってみた!【レポート・前編】

5歳のオランダ人の女の子が、
将来の夢を聞かれてこう答えたという。

"I wanna be a grandma." おばあちゃんになりたい。

私ははじめ、その回答の意図が何なのか分からなかった。
聞いていくうちに、少しづつ意図が掴めてきた。

オランダでは、おばあちゃんになるのが夢、つまり、温暖化により 50年後自分はいないかもしれない、と危機感を感じる子供が増えてきているということだった。

先日、TEDxUtrechtのイベントに初参加した。この話は、TED TALKの一部である。

急速に進行する温暖化。50年後に自分が生きているか、死んでいるかも分からない。"当たり前が当たり前でなくなる時代"がすぐそばに迫っている。

そんな不安がオランダの子供の間で広がりつつあることを知り、親の一人として、心の痛みを感じずにはいられなかった。

昨年オランダで起きた洪水の様子。
左が本来の姿、湿地(Before)で、右が洪水後の姿(After)

TEDイベントでは、オランダ中の最先端・革新的な取り組みをしている起業家や学者などのプロフェッショナルたちが登壇した。

テーマは環境問題で、アル・ゴア氏の映像でスタート環境意識の高い(と言われる)オランダで、環境テーマのTEDトークに参加できた収穫は大きい。

興奮が冷め止まぬ間に、イベントを前編・後編に渡って私的レポートをしたい。前編では、環境問題を打破する新しい概念、活動や技術を紹介する。

1. 新しい車の形 - 100%太陽光のクルマ(Lightyear

太陽光100%で動く次世代の車を開発しているのが、オランダ発のLightyearという会社だ。

太陽光で走る車とはどんな見た目かと思ったが…上向きの面にソーラーパネルが組み込まれている、意外とCOOLなデザインだった。

公式HPより

誰もが思いつきそうなアイデアだが、アイデアを思いつくことと、そのアイデアを実際に形にすることは全く別の話。実際の形にするために本気で取り組んでいるのがこの会社。開発者メンバーには、テスラやGoogle出身者も参画しているという。

どれだけ走っても空気を汚すことがない、夢のような『次世代カー』。デザインもカラフルで、ちょっとワクワクする。

「曇りの日が続いたら車に乗れないのではないか?」というような疑問があるかもしれない。

安心してほしい。オランダは世界有数の日照時間が短い国だ。冬は1ヶ月以上太陽が見れないことも普通だ。当然、蓄電にも力を入れている。もし電気が余った場合は、他の家電に使うことができるようになるそうだ。

すでに太陽の国、スペインでは試運転が成功しており、オランダやその他の国でも数年以内の実用化を目指している。

オランダ製の車は今のところ存在しないが、オランダ初で、世界初のクリーンな車が商業化されるかどうか...注目したい。

LightyerのEngelberts氏(左)とNoteboom氏(右)

2. 1人から始めた活動が歴史的快挙 ー オランダ最大手、年金基金「化石燃料利用会社への投資を断念」(Fossielvrij

オランダ最大手、年金基金(日本でいう、日本年金機構のようなもの)の積立金は、多くが石油燃料会社の投資に使われている。

その年金基金に「化石燃料利用会社への投資断念」を宣言させるまでの、約7年間の絶え間ない戦いを披露した。

33週の妊婦姿で、力強く登壇したMeddens氏

この活動は、元国連職員のMeddens氏(写真、上記)が始めた。彼女は就職した国連でいつまで経っても、国際会議で、何の合意に至らない状況に落胆していた。そこで出会ったのが世界的NGO「Fossil free」。Fossil freeは、世界中に支部があり、自国の大企業に、二酸化炭素排出する事業や投資を環境フレンドリーな方向に転換させる決断を促してきた、意義の高いNPOだ。その、オランダ支部1名の枠にMadden氏が応募したことが事の始まりだった。

彼女一人でオランダ拠点を拡大させ、最終的に難民、漁師、統計学者まで、120人を超えるボランティアが加わった。ABPに向かって、科学的根拠を提示・PRしながら、現状の投資を辞めるよう訴え続けた。

そして、活動から約7年経った2021年。ついにABPから念願のアナウンスが発表された。

"約2兆円分のCO2排出会社株式を売却、SDGs推進会社への投資にシフト"

歴史的快挙を遂げた瞬間だった。

この活動の賞賛すべき点は、リーダーが確固たる意思を持ち、"不可能"と思える目標をチームで成し遂げているところだ。

次なるターゲットは、オランダ最大手銀行のINGの投資部門。INGの多くの投資先が、環境汚染を加速させる大企業ばかりだからだ。

小さな組織が、正義のために大企業に立ち向かう快進撃。応援したくなるのが民衆の心理といったことだろうか。

3. AIでなくNI(Natural Inteligence)

正直、このスピーカーの話は別のブログ記事にしたいほど、最も心動かされたトークの一つであった

Leen Gorissen氏が発明したのが、AIでなくNI = Natural Intelligence(自然知能)という概念だ。欧州連合も注目し、共同でプロジェクトを行っているというホットな研究の一つ。

きのこは雨を降らせ、くじらは気温を下げ、シロアリは島を作る。キツネはツンドラを緑化し、プランクトンは雲を作る。

NI Center4NIより引用、翻訳

自然は、人間が生まれるずっと前から、絶え間ない革新、適応、再生のマスターであり、"自然知能"を備えている。

自然が持っている法則(知能)を、ビジネスに適応すれば、AIに頼らずとも、自然との真の共存・共栄ができると説く。

Natural Intelligenceのビデオがあるので、ぜひ視聴いただきたい。映像の美しさには目を奪われる。
https://www.centre4ni.com/

そして、もし今のやり方(ビジネス)がうまく行っていない、または、ビジネス自体が衰退しそうな予感がしているのであれば、自然知能を当てはめてみれば、もっとスマートに軌道修正が図れるかもしれない。

タコの知能実験で、研究者の知能不足を露呈させられた、というGorissen氏

これまでにも動物・植物の法則や性質を生かした、商品開発は山ほどあった。

このNatural Intelligence(自然知能)がそれらと異なる点は、ビジネスに生かすことを前提として、自然の知能を包括的にまとめあげ、数多くのイノベーションの生み出しているところだ

すでに書籍が出版されているが、日本のAmazonでは原本・翻訳ともにまだ販売されていなかった。日本Kindleユーザーとしては早く販売してほしいものだ。(仕方ない、、英語版で読むか…..)

Natural Intelligence(自然知能)

NIのライバルは人口知能(AI)。NIは、今後のビジネス界で中心的コンセプトになる可能性を秘めている。今後、NIにも注目したい。

前編のレポートはここまで。

後編では、私たちが実際にどう行動を起こせばよいのかを提示してくれたTED TALKを紹介したい。 後編はこちらから。


おわりに

TED Talkの多くのスピーカーが繰り返し使っていたメッセージがある。

何かを劇的に変える必要はない。自分の専門性で、環境問題に取り組もう。意識を変えれば行動が変わる。

私は書くこと、発信することで、環境問題に貢献できるかもしれない。
読んでくださった方の中から、行動を起こす人が増えたら嬉しいと思う。

隣の席の引退後のおじいちゃんは「すぐにソーラーパネルに変える!」と言っていた。個人ができる立派な貢献だ。

今の子供たちが笑顔でおばあちゃん、おじいちゃんになれるよう、今、自分たちができることをしよう。

おしまい。後編に続く。

ニケ

スキ、コメント喜びます!

この記事が参加している募集

多様性を考える

SDGsへの向き合い方

こんにちは、ニケです^^ もし記事を気に入っていただけたら...100円でもサポートいただけると嬉しいです。今後の欧州研究のために使用させていただきます!