歌うたいの猫と、魔法の万年筆。【おとなり橋】
【おとなり橋】
カリカリ、カリカリ。
カリカリ、カリカリ。
猫のお腹が、半分くらい、膨れてきた頃でしょうか?
猫は、この森にひとつしかない川に到着しました。この川は、森の端っこにある山からずーっとずーっと、流れてきています。
この川には大きな橋が、これまたひとつだけ、架けられています。橋の前には看板があって、猫には読めない文字が書いてあります。
『おとなり橋』
そう、書いてあります。
猫は、目をパチクリしました。
「にゃにゃにゃりにゃ?」
猫は小首をかしげて、まん丸の目をもっと目まん丸にしています。
…どうしてでしょうか?
なぜなら、今まで読めなかった文字が、読めるようになっていたからです。「おとなり橋」が「おとなりバシ」と読めるのです。
猫は驚きを隠せません。その場でグルグル回ってみたり、飛び跳ねてみたり。そうしている内に、驚きは、喜びに変わっていきました。
『文字が読めるにゃ♪』
猫は、文字が読めたことが嬉しくて、喜びのあまり、ついにはギター片手に歌をうたい、踊り始めてしまいました。
すると、ギターを奏でながら、歌い踊ることに夢中になっている猫に、「ダレカ」が話しかけてきました。
「ずいぶんと嬉しそう!踊りはちょっと変わっているけれど、ギターはとてもお上手だわ!」
猫は突然声をかけられたので、ビックリして飛び上がりました。ところが、キョロキョロ辺りを見回しても、誰もいません。
「??????」
猫のピーンと立った両耳の間に、たくさんの「?」が見えます。
その声は、不思議なことに、とても近くに聴こえているのに、その声の主の姿が見えないのです。
猫は、声の主を見つけようと、キョロキョロ辺りを見回しました。しかし、周りには誰も、「言葉を話すような人」は居ません。
「あら?わたしの声が聴こえるみたいね!あなた、やっぱり面白いわ!」
「違うわ!こっちよ!」
立て続けに呼び掛けてくる声の方向に、猫は耳を傾けます。
どうやら、声は「おとなり橋」の方から聴こえてくるようです。猫はビクビクしながら、「おとなり橋」の真ん中まで渡ってきました。欄干から身を乗り出して下を覗くと「ザーッ、ザーッ。」とたくさんの水の流れる音が響いてきます。
猫は後ろ脚が「プルプル」と震えるのを感じて、欄干から離れることにしました。橋の真ん中まで戻り「ふにゃ~…。」と、震える後ろ脚を落ち着かせるようにため息をつきました。
その時、一段と大きく声がしたのです。
「ここよ!!」
猫は、本当に本当に、びっっっくり!!!して、毛を逆立てながら、1メートルくらい飛び上がりました!
爪を出し、牙をむいて姿勢を低くします。「戦う時のポーズ」というやつです。
「いたっ!いたたたた!ちょっとやめて!ここだって言っているのに!」
「もうっ!」と声がしたかと想うと、「戦う時のポーズ」の猫が不思議なカリカリと同じように、「ふわん」と浮き上がりました。猫は想わず体を丸くします。
顔を隠したふさふさのしっぽの隙間から、おそるおそる下を覗くと…?
なんと!「おとなり橋」が、いつかの万年筆と同じように、光り輝いているのです!
「声の主は、わ・た・し!」
「『お・と・な・り・バ・シ』!」
「もう!みんな、わたしの声を聴くと、大きな声出して逃げちゃうんだもん!失礼しちゃう!」
「ぷんぷん!」と湯気のようなものを出しながら、おとなり橋は、ご立腹のご様子です。しかし、ただ「怒っている」というわけではなさそうです。
「爪を立てたけど逃げなかったのは、あなたが初めてかもね!『おもしろ猫』さん♪」
「橋が人間のようにお話をしている」ということ、そして「光っている」、「自分が宙に浮いている」、この不思議な状況。
猫の耳と耳の間に、また「??????」が並んでしまいました。
つづく…。
☆彡 Inspired by 『#春とギター』 ☆彡
「歌うたいの猫と、魔法の万年筆。」は、こちらのイベントに参加したことにより生まれた「不思議なものがたり」です♪
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☆彡 「??????」にゃんくしーさん♪
☆彡 「おとなり橋」…?大橋ちよさん♪ ☆彡
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