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エッセイ

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#最近の一枚

夏の終わりとマンゴーパフェ。

夏の終わりとマンゴーパフェ。

あ、秋が来た。
先週の半ば頃のある日、歩いていてわたしは唐突にはっきりそう思った。

秋来ぬと
目にはさやかに見えねども
風の音にぞ 驚かれぬる

約1000年前、三十六歌仙の1人である藤原敏行はそう歌を詠んだ。

そう、風。風なんだよな、ってしみじみうなづいてしまう。真っ先に秋を意識するのは、視覚でも、気温でも、香りでもなく頬に当たる涼やかなこの風なのだ。

こうして遥か昔の歌が文化として遺って

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桃を引き寄せた話。

桃を引き寄せた話。

もしもこの世に「引き寄せの法則」なるものが本当に存在するならば、わたしはこの夏、4回も桃を引き寄せてしまった。

1回目は、夫の会社でいただいたお中元のおこぼれ。
「じゃーん、お土産がありまーす!」
そう言って、取り出したのは見事なまでにどっしりした桃。芳香としか表しようのない、魅惑の香りを放っている。
これがわたしが出会った今年初の桃だった。

ご存じの通り、桃は高い。大きいものだと1つあたり4

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紫陽花祭りで見かけた、残念な人。

紫陽花祭りで見かけた、残念な人。

先週末、植物園で行われていた「紫陽花祭り」に行ってきた。
7月を迎え、暑さが本格的になると紫陽花シーズンも終わってしまうので、ぎりぎり駆け込めて良かった。

紫陽花は大好きな花の一つなので、梅雨の時期になってたびたび通勤路で目にすることが出来てうれしい気持ちになっていた。
けれど如何せん、立ち止まってじいっと見つめる時間の余裕も心の余裕もなかったので、こうしてただただ紫陽花を見るという目的のために

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サーティワンで子どもの頃からの夢を叶えてきた。

サーティワンで子どもの頃からの夢を叶えてきた。

ああ、一度でいいから好きなだけ選べたらいいのに…!!

母とのお買い物帰りに寄ったとき。
高校生のときに、学校帰りに友だちとわいわい寄ったとき。
大学生や社会人になってふと寄ったとき。

ポップで楽しげな色とりどりのショーケースを目にするたび、何度そう思ったかしれない。

先日からサーティンワンにて「よくばりフェスキャンペーン」が始まった。

どんなキャンペーンかというと、スモールサイズよりもやや

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ひな祭りの特別な甘酒。

ひな祭りの特別な甘酒。

つい先日まで、冷たい風に首を縮こませて歩いていたというのに急に気温が上がった。

分厚いセーターの下、じわりと微かに汗ばんできたので、コートを腕にかけ歩く。

今日のお稽古はきっとお雛祭りにちなんだしつらえに違いない、なんて思いながら茶道の先生のお宅へ急ぐ。

予想通り、使うお道具も床の間も桃の節句のしつらえ。
菱餅に似たような棚(業平棚というらしい)と、床の間には可愛らしいお雛様と桃の花。

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寒い時期の特別なおもてなし。

寒い時期の特別なおもてなし。

頬に当たる風は、相変わらずつんと冷たい。心なしか、はや足で茶道のお稽古に通っている先生のお宅に向かう。

扉を開けて目に飛び込んできたのは、枝につつましやかに白く色づく可憐な花。これは梅かもしれない。
こんなに寒いというのに、どこかでは春の兆しが顔を覗かせているんだろうか。

この日、わたしがお点前をするのは、1か月半ぶりだった。
先月の初めにあった初釜は、先生やお稽古歴の長い先輩にお点前をしても

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美しきパフェに浸る。

美しきパフェに浸る。

パフェほど、なんだか特別感があって心躍る食べ物はないと思う。

鮮やかな果物、クリーム、アイス、その他諸々。それらがぎゅっと集まった一杯には甘い物好きにとって、夢が詰まっているも同然だ。

昔はどんなパフェでも興奮に値するものであった。
しかし社会人10年目に近づき、悲しきかな、やたらと生クリームやコーンフレークが敷き詰められているパフェにはあまり魅力を感じなくなってしまった。

しかしコーンフレ

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淡路島にて、非日常と日常を織り交ぜる。

淡路島にて、非日常と日常を織り交ぜる。

大きな窓、否、バルコニーに面した広いデスク。
目の前に広がるのは、風を映し、穏やかに凪いでいる海。日の光が差せば、一層青はきらめく。
あの大きな橋は瀬戸大橋、だろうか。
遠くに見える島々と少しずつ形を変えてゆく白雲。
時おり、鳶が空中で緩やかに弧を描く。

わたしが流している、ゆったりとしたジャズの曲以外は本当に何も聞こえない静けさ。

作業環境の中で、これ以上ないといっていいくらい最高の環境だな

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