淡路島にて、非日常と日常を織り交ぜる。
大きな窓、否、バルコニーに面した広いデスク。
目の前に広がるのは、風を映し、穏やかに凪いでいる海。日の光が差せば、一層青はきらめく。
あの大きな橋は瀬戸大橋、だろうか。
遠くに見える島々と少しずつ形を変えてゆく白雲。
時おり、鳶が空中で緩やかに弧を描く。
わたしが流している、ゆったりとしたジャズの曲以外は本当に何も聞こえない静けさ。
作業環境の中で、これ以上ないといっていいくらい最高の環境だなあ、なんてぼんやり思う。
海といえば、奄美大島の海で目が肥えてしまったせいか、あそこに勝る海はない、なんて思っていたけれど、この瀬戸内海も青く澄んでいていてなかなか美しい。
やっぱりわたしは、どうしようもないくらい、海が好きみたいだ。
初めて見る景色、初めて食べるもの、初めてする経験。
様々な「初めて」はいくつになってもわくわくと心を躍らせる。
美しい光景、美味しいもの、人の温かさ、心地良いと感じるものに触れる。
驚き、感心し、笑う、そんな心が動くような数多の経験をしたいと思う。
そのために、より多くの場所へ赴いてゆく――。
――しかしここ最近、旅の楽しみ方が少し変わってきた。
最近、3つ、旅行に行くときに必ず持っていくものがある。
珈琲のドリップバックや紅茶のティーパックなど、普段飲んでいるお気に入りの飲み物。
Macほどのスペックもないが、大学生の頃からずっと愛用している、わたしの執筆の相棒、Panasonic レッツノートの二代目。
(「頑丈」という言葉が似合いそうな、分厚いけど小ぶりなボディとキーボードを叩くときの安定感が気に入っている)
そして、小説、エッセイなどの少し趣向の違う2,3冊の本。
ちなみに今回持ってきたのは、こちらの2冊。
どちらも、読もうとは思っていたものの、長らく本棚に寝かされていたものだ。
例えば、晩御飯を頂いてゆっくりした後の時間。温泉に浸かって、寝る前の時間。
今のように朝ごはんを食べたチェックアウトまでの時間。
わたしは、宿泊先の部屋、もしくはロビーでおもむろにパソコンや本を開き、しばらく没頭する。
いわば非日常の中での日常、を楽しむ、とでも言おうか。
その後、たまに授業や学級での取り組みなど、仕事のことを考えることもある。
でも考えなきゃというより、いつの間にかそこに思考が及んでいた、と言ったほうがふさわしい。
折角の旅行にまで来て、すること?
そんな疑問が浮かぶ人もいるかもしれない。
しかしわたしから言わせてみれば、旅先だからこそ、だ。
いつもと違う環境に身を置くことで、書くときには、わたしが言いたいこと、感じていることってこうだっけ?と一旦立ち止まって深く考えることが出来る気がする。
読書をするときには、描かれる誰かの想いや言葉がより胸に響き、徐々にと今の自分に重なり、自分自身に思考が移ろってゆく。
そんな時なのだ、素敵なアイデアだったり、今の自分を表すのにぴったりな言葉が降ってくるのは。
旅先での執筆や読書は、わたしが今感じたことをよりくっきりと表せる言葉に出会える、そんな気がしている。
非日常と、日常を織り交ぜる、この上ない贅沢。
旅先という非日常から、家や仕事という日常に戻るとき。
「帰りたくないなあ。」「また明日から始まるのか・・・」ではなく、また迎える「いつも通り」にほんのちょっぴり、いつもと違う色が足されている。そんな過ごし方が理想だ。
わたしの人生で日々積み重なってゆくのは、非日常ではなく日常。
だから、日常を豊かにしていける、非日常を楽しみたいのかもしれない。
時間が許す限り、もうしばらくそんな旅をこれからも続けたい。
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