なんとかなる太郎

物語を書いたり、頭の中を吐き出したりしながら今日も元気にどこかにいます。

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骨朽ちるまで 前

春人君が死んだ。 彼にぴったりな名前だったなと、死んでから思った。 毎年必ず訪れるけれど、それは本当に瞬きの様な一瞬で。例えば桜を観なければ感じ取れない程で、しかし確かに在るのだというその不安定さは、まさに彼の様だった。 私たちは付き合っていたのだと思う。 まだ学生の私達は、大人の様に自分の感情を恋だとか、愛だとかを確かめたり迷ったりする事なんてなく、只毎日登下校を繰り返し、帰り道にプリクラを取ったり、お互いの家でゲームをしたり、キスをしたり。 それだけが本当の事で、それだけ

    • 元気になる

      見慣れた路地に見慣れない花が咲いていて きっと通り過ぎてきたはずの毎日の中で その日は不意に写真を撮った 気まぐれだったのだと思う 仄暗い空と建設中の鉄骨 軋む音が聞こえるような錆が進んだ橋 そんなものばかりのカメラロールの中に 一輪だけ花を閉じ込めた 眺めていた そこだけの彩りに眼を摘まれた 次の日も、その次の日も、その路地に花を撮りに行った 私が様子を見に行くたびに その花弁はより美しく、眩しく輝くようになった 毎日、毎日写真を撮りに行った いつのまにか、そう

      • 「定期券内降りた事ない駅散歩DAY」後編 【日記ですら本当の事って書けない】

        前編の続き。 新小岩を発車してしばらくすると、かいばしらさんは挙動を取り戻した。 話が上手いとはこういうことなんだろうなぁ。 話す順番の起承転結がうまいというよりも、言葉にのせている感情の起伏のちょうど良さ。 画面を見るのが疲れたのでイヤフォンをつけたまま目を瞑る。 相変わらず次の停車駅は決めていない。 この動画が終わったら、もしくは次の広告が挟まったら降りよう。 そうしてついた先は、「浅草橋」だった。 そういえば結構浅草寺が好きな僕である。 下町、がどんな事なのかはわ

        • 「定期圏内降りた事ない駅散歩DAY」前編【怪奇 新小岩の謎】

          こんな連休は滅多にないのだから何かしなければと。 服も香水も欲しいのがあったんだった、海も行きたいな。 そんなこんなで巡らせ巡り、結局したのはいつものごとく、それでも久しぶりの「定期圏内降りた事ない駅散歩DAY」だった。 いつもの通勤は総武線の中野行き。 電車の過ごし方といえば音楽(主にスピッツ)を聴いているか、切り抜きを見ているか。 最近はかいばしらさんという人の映画レビューのYouTubeを見るのにハマっていて、これ見ようかな、あれみようかなをしていたりする。 話し方が

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        骨朽ちるまで 前

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        • とても面白い短編
          5本
        • 考えてる事
          5本
        • 1本

        記事

          回り廻れ

          帰りの燃料を忘れた宇宙旅行 土砂降りの深海の底 世界でたった1人 地球の終わりを知った女の子 きっとその意味がわからずに 今日も公園で砂遊び 僕らはきっと全部を知っていた 育つにつれ忘れ 墓の中で思い出す しまったと気がついた頃にはきっと塵になっていて どこかのだれかの帰りの燃料へ 回り廻れ

          揺るぎない個はどこにあり

          何も考えないということは選択は一つということで、たくさん考えるということは選択肢が無数に見えるということだ。 それら選択肢のそれぞれの表裏があり、豊かさと貧しさがあり、救いと犠牲があり、プラスとマイナスがあるということに気づくということだ。 敏感すぎる私はそのマイナスに責任を持てる自分では無い事と、おこがましいという事を痛感してしまい何も選べなくなった。 選べないということは進めないということで、動けないということ。 このままではいけないと幾度となく思ってきた。 何も悲

          揺るぎない個はどこにあり

          鬱から社会へ出て3ヶ月

          鬱で引きこもっていた2年弱 部屋の中で頭と想像だけが僕の実寸よりも先へ進んで世界への諦めと納得をしていて。 今は働き出して出会ったことなかった「ケース」でしかなかった人を「個人」として知り考え、部屋の中から先に出ていってしまった結論に、実体験を伴って拾いながら追いつき始めた感覚で。 人間力といえば上がっているんだと思う。 ただ批判も諦めも溢れるようにあった野生のような熱はきっと冷えはじめていて、 つまらない人間になっていそうな感覚がしてとてもそれが嫌だ そういうものを今

          鬱から社会へ出て3ヶ月

          長編長回し7時間映画サタンタンゴを観た

          手放しに大絶賛をできるほどに面白かったかと言われれば、 内容の話ではなく映画として作品としてどう捉えれば良いのかという難しさがあった。 7時間。 飽きずに退屈が無かったかと言われたら素直にそんな事は無い。 いつ終わるのだろうと考える時間はもちろんあった。 けれど同時にハッとする、胸を打つ、焦るようなドキドキする展開が確かにあって。 とてつもなく写実的なのだろう。 人が生きていて、関わっていくリアリティ。 何も起こらない時間がじわじわと、人生のように流れている。 「

          長編長回し7時間映画サタンタンゴを観た

          拝啓

          君が変わってしまって 面影をどこかへと落としてしまったみたいに別人で、あなたは誰?と吐き出した とても素敵で、とても悲しい そんな事は思うべきじゃないのでしょう だって本当は君は、君のまま進んだだけだから 君と同じ速度で進めなかった僕だから 立ち止まったのは僕だったから、君のことが良く見えなくなったのでしょう いつまでも君と見たあの花が綺麗だと、ずっとずっと綺麗だと思う心を持ち続けてしまった罪 変わらないでと叫んで自分の足元を見ることをやめていた、変われなかった僕への

          ドレスコーズ「聖者」に寄せる短編#2

          これはあまりにもドレスコーズが、志磨遼平が作った「聖者」という楽曲とそのMVが素晴らしすぎたため、この男女に何があったのか、勝手に想像を膨らませストーリーを描きたくなったものである。 なのでこれは解釈とは違った「聖者」を借りた物語です。前回↓ 草原に座り込み、彼女は新しい煙草に火をつけた。 何度繰り返したのだろう。見惚れる程の一連の所作。 息を吸い、煙を吐く。 ここに来るまで彼女は一言も発しなかった。 バイクを止めたかと思えば、草むらの中をぐんぐんと進み、一本の木の根元に

          ドレスコーズ「聖者」に寄せる短編#2

          ドレスコーズ「聖者」に寄せる短編♯1

          これはあまりにもドレスコーズが、志磨遼平が作った「聖者」という楽曲とそのMVが素晴らしすぎたため、この男女に何があったのか、勝手に想像を膨らませストーリーを描きたくなったものである。 なのでこれは解釈とは違った、「聖者」を借りたお話です。4回ぐらいになりそう。まずは1回目。いざ参れ。 君と出会ってから、以前の僕の瞳に映っていた景色がどれだけ退屈なものだったかを思い出す事は出来ない。 それほどまでに清々しく、重すぎた夏に見た夢。 あの日果てしなく続く田舎道で、君は煙草を

          ドレスコーズ「聖者」に寄せる短編♯1

          そういえば抑えられるほどの欲望を持っていることが一番つらいのだった

          そういえば抑えられるほどの欲望を持っていることが一番つらいのだった

          偉大にならなくてよいのだ

          自分自身に改めて投げかけたく、また誰かにそっと添えたくなったのでまとまるかはわからずに書き始めたそんなメモ。 どこかの社長だとか政治家だとかの言葉達は自然とYouTubeなどで目にする様になってから、どうやら日本はこのままじゃいけないらしい。 少子高齢化問題だったりとか、環境や世界情勢だったりとか、終身雇用はもうとっくに破綻していて日本のGDPは下がり続けているだとか。 幸せになるには、みたいな話が世の中にはたくさん溢れていて。 けれども何か、それらが差している「幸せ

          偉大にならなくてよいのだ

          2日目のカレーは美味いのか

          2日目のカレーは格段に美味いという話を聞いた事があるし、実感として確かに美味い。 だがしかし駄菓子菓子僕はふと疑問に思ってしまった。 2日目のカレーの美味さは純粋な美味さなのだろうか? それとも1日目のカレーという比較対象があるからこそ美味いと感じるのか? 試しにカレーを作り1日目を食べずに2日目に食べてみる事にした。 美味い。いや、うん、普通に美味い。 しかしこれは時系列としては2日目だけれども、僕の口に入ったのは1日目なのである。 1日目を食べた後に2日目に

          2日目のカレーは美味いのか

          持たざる者のプライド

          足元を見ればどこから引かれているのかわからない白線が引かれていた。 それは小学生の頃にした運動会のかけっこを連想させた。 左右には僕と同じように人、人、人。 後ろを振り返ると何もなく、音も響かない静寂の砂漠。 白線の向こう側、僕の眼前の遥先には美しい景色が広がっているのが見えた。 そうして僕は思い出す。そして気づく。 僕はあの先の世界を目指していたんだった。 横に並んでいる彼ら彼女らと僕らは、この白線の向こうに行きたいのだ。 しかし何日経っても、季節が変わっても、

          持たざる者のプライド

          最高なアーティストへごめんなさい

          はろー、ひとりぼっちのあなたへ あなたがひとりぼっちなおかげで ぼくはあなたの歌を介して仲間ができました あなたが苦しみ溺れているお陰で わたしは足を地面に突き刺し歩けます あなたが死にそうにならなければ 僕は生きられません 自分の傷を歌にするってどんな神経ですか 想像を絶する、壮絶な人生ですか はろー、はろー ごめんなさい けれどあなたが満たされ幸せになってしまうと 私は前を向けないのかもしれません あなたの嵐のような人生の歌をぼくはスーツの下に着込んで仕事

          最高なアーティストへごめんなさい