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「定期圏内降りた事ない駅散歩DAY」前編【怪奇 新小岩の謎】

こんな連休は滅多にないのだから何かしなければと。
服も香水も欲しいのがあったんだった、海も行きたいな。
そんなこんなで巡らせ巡り、結局したのはいつものごとく、それでも久しぶりの「定期圏内降りた事ない駅散歩DAY」だった。

いつもの通勤は総武線の中野行き。
電車の過ごし方といえば音楽(主にスピッツ)を聴いているか、切り抜きを見ているか。
最近はかいばしらさんという人の映画レビューのYouTubeを見るのにハマっていて、これ見ようかな、あれみようかなをしていたりする。
話し方がなんだか落ち着くのだ。

ふむふむ、へー、ははは、あ〜なるほd、、、キタ。

毎朝の如くそれはくる。かいばしらさんが変な顔でピタリと静止する現象。
これはかいばしらさんが変な顔をしているのでは決してない。かいばしらさんは変な顔じゃないからだ。いわゆるこれは電波障害によってYouTubeが停止しているのである。

そうして気づく。出たな、「新小岩」

目を上げると案の定の新小岩。
新小岩に到着すると僕の携帯は一切機能しなくなる。これ僕の携帯だけなのだろうか?
あのおじさんやあのお嬢さんは僕の見れていないかいばしらさんの続きが見えているのだろうか。

そんなこんなで謎を解明すべく。
そんな気は全くないがずっと降りたことがなく引っかかっていた新小岩に、ゴールデンウィーク2日目の僕は降り立つことにした。

ホームを降りて改札を出る。右と左にある出口。
どちらに出れば良いかさえわからないな、と思ったと途端に、何も決めていないのだからどちらでも良いんだったと我に帰る。

マクドナルドはどこにでもあるよな、ほんとに。

信号を渡ってとりあえず見えたアーケード街に入ることにした。
案の定、と言ったら新小岩の皆さんから怒られちゃうかもしれないけれど勇気を出していうと
「4.5年ほど世間より時の流れが遅い」
という感覚だった。

こう言った表現をしたけれど、今これを書いていてふと思ったので脱線したら申し訳ないけれどちょっとメモ。
こういう例え話で行われる「世間」とは、「かなり部分的な都会のみ」を指しているよなぁ。
例えば東京で言えば渋谷とか原宿とか?
「世間」ていう言葉を使うだけで、その世間とほとんどのただの都市部には時差がある。

脱線メモ終了。まとめてからかけよっておもうよね。その前提での続き。

アーケード街を含む新小岩は世間(都心部)より5年ほど時の流れが進んでいない。
ずーっとあるであろう魚屋。
あぁ、まだあったの!というぐらいのカラオケチェーン店。
この中のどこに行っても仕上がりは変わらなそうだなと思うほどいくつかの床屋と美容室。

あなたとあなた、昨日もきっとここで話してたんだろうね、って感じなおばちゃんたちは数十メートルほどに転々と配置されていて。

これはまったく街とは関係ないけれど、みんな僕より歩くのが遅かった。

こういう停滞した変わらなさがある街が、僕は結構好きである。
こういった街は「地元」という名称にふさわしい気がした。
地元という言葉からくる1番の連想はその「変わらなさ」にある。僕だけかもしれないが。

流行りを取り入れず、繰り返しているだけ。
追加せず、引き延ばしているだけ。

その変わらなさが、いつか帰ってくる時に安心へと変わるんだ。

さっきの話を蒸し返すとすると、例えば日々流行りを取り入れ毎日のように店舗の入れ替えがあったりする都心部を生まれとするみなさんには、「地元」という概念はどんなものなのだろう。
そもそも離れないのか。帰るということがないのかな。
「相変わらず変わり続けるから安心します」とか言われたらもうループだ、勘弁してくれ、勘弁してやるから。

そんなこんなでアーケード街を出た。
ふむ、この時の流れの遅さと停滞が電波にも影響しているのだろうか。もうなんでも良かった。


たくさんの人達とすれ違った。
おばちゃんおじちゃん、家族、カップル、警察官。いつもここにいるだろう人達。
知らない土地の知らない人達。

この「定期圏内降りた事ない駅散歩DAY」をするといつも思う。

僕がここに来る今日までにも。
あの人もこの人も。
あの時やあの頃も。
本当に同じように存在していたのかと。
歩いていたのかと。

僕が昨日家で寝ていた時も、今これを書いている時も、本当にそれぞれの人生をしているのかと。本当は普段は楽屋待機で、街の中はすっからかんで、僕が降りたその瞬間にハイスタートで、みんなそれっぽく生きてきた演出をしてるんじゃないかと。

そして、そんな事は無いのだということもわかっている。
けれどどう足掻こうと、想像しようとこの考え方は小さい頃から染み付いているものなのだ。

毎日同じルートで通勤し、同じ職場同じ人達と会話をし、ただ帰る。
忘れそうになる世の中の人達。
自分の世界と、それを包むもっと大きなただの世界。
自分の世界を見ている場所から包まれている外の世界を振り返って確認する。
ちゃんと他の人たちがいて、生きていて。

忘れそうになる生活だから、忘れそうになる性格だから、こういう時間が僕には必要なのだ。

知らない土地に降りてちゃんと世の中に触れる。

今日新たに追加した世界は「新小岩」
電波が悪い謎は結局わからずじまいだった。
案外良い街、好きな街。感想。

そうして色々あって(アーケード街を越えて良い公園とかもあった!川とか流れてた)なんとか新小岩駅に辿り着いた。

駅のホームに上がり電車を待つ。
変わらず行きの電車で見ていたかいばしらさんは変な顔で停止してしまっている。
帰りの電車は千葉行き。
そうして僕はまた、中野行きに乗った。

今日は5月4日。5月4日をまだ終わらせない。

そうして次は、浅草橋で降りてみた。

これは前編で、本当に描きたかったことは後編に続かせる。

https://note.com/5minute_stories/n/n1d16029cb20a

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