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SUMIYU's ダンジョン潜り

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ダンジョン潜りをする小説です。
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2018年5月の記事一覧

【ダンジョン潜り】 (20) ~帰還~

【ダンジョン潜り】 (20) ~帰還~

~つづかれる~



エスの言葉と イェミオーリの詩とをもって
ティラの光と リナーリルの雨とを浴びて
狼の腕よ 竜の火をかかげよ
ヤデムの槍を差し上げよ
あなぐらに潜り 宝を漁れ
闇の中から ひと山ふた山
歌え我らのダンジョン潜り



 「讃えよロニ!」
 六つのカップが天にかかげられ、六人はいっせいにビールに口をつけた。
 テーブルに大きな肉の香草焼きが運ばれ、ガイオがナイフを入れると香

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【ダンジョン潜り】 (19) ~黒いバラ~

【ダンジョン潜り】 (19) ~黒いバラ~

~つづかれる~



 私とテレトハがイモムシの群れを叩き潰し前衛の三人がスケルトンを片付けると、我ら徒党は再び集合した。
 キザシもリナーリルの解毒剤によって回復し、私たちは突然襲い掛かった危機と混乱を首尾よく乗り越えた。

 仲間たちは私を見ると取り囲んでからかうように笑い、肩を叩いたり頭をなでてきた。
 急に子供扱いでもされたようですこし仏頂面になったのは認めざるを得ない。しかし皆は、術を

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【ダンジョン潜り】 (18) ~ファイアボール~

【ダンジョン潜り】 (18) ~ファイアボール~

~つづかれる~



 「あァッ、クソ...!」
 キザシが悪態をつきながらよろめいた。

 天井から降り落ち、彼の背にとりついているそれは、イモムシであった。そこいらの土を掘り返せば出てくるようなイモムシだがその大きさがまたしても尋常ではない。

 巨大なイモムシは白い太った体に茶色の針を持っており、全体がぬめぬめした粘液に覆われている。
 キザシはどうやらその針にやられたらしく、歯を食いしば

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【ダンジョン潜り:追補編】 ~スケルトンについて~

【ダンジョン潜り:追補編】 ~スケルトンについて~





 ダンジョン探索中に時折目にする動く骸骨 スケルトンは、アンデッドと呼ばれる一群の魔物のひとつである。

 スケルトンと、白骨化していない状態で動き回るリビングデッド、ゾンビなどと呼ばれる魔物との明確な区別は難しい。しかし、ゾンビなどの死体が(何らかの超自然的な力を宿しているとはいえ)その活動に際してある程度自身の筋組織に依っているのと異なり、スケルトンはほぼ完全に骨だけで動いている。

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【ダンジョン潜り】 (17) ~帽子~

【ダンジョン潜り】 (17) ~帽子~

~つづかれる~



 「回れ回れ回れ!隠れろ!」

 私たちはガイオのかかげる松明の火だけを頼りに廊下を猛進し、角を曲がって右に折れた。骸骨弓兵の射掛ける矢がまた私の脇を飛び越える。戦場を思い出した。

 「よし構えろ!」
 ガイオの号令で皆は反転し、角を曲がって襲い来るであろう骸骨部隊を迎え撃つ態勢を整えた。
 リドレイは廊下をマジックライトで照らしはじめ、テレトハも詠唱を開始した。

 さ

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【ダンジョン潜り】 (16) ~スケルトン~

【ダンジョン潜り】 (16) ~スケルトン~

~つづかれる~



 私たちの間にさっと緊張が走った。テレトハも杖で陣を敷く手を止めた。

 もはや衣服とは言えないボロ布に身を包んだ人間の骸骨は、固まったようにじっと立ち、空虚な眼窩でこちらを見つめていた。その頭がかすかに動く。

 刹那、骸骨の体が素早く傾き、骨だけの腕が振るわれた。その手にはメイスを掴んでいた。
 リドレイのかざした盾にメイスが当たり鈍い音が室内に響く。

 骸骨は再度メ

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【ダンジョン潜り】 (15) ~起動!昇降台~

【ダンジョン潜り】 (15) ~起動!昇降台~

~つづかれる~



 「はてさて。はたして動くのでしょうか...」
 キザシが室内中央、円形に区切られた石床の上をふらふらと歩く。

 円形床上にびっしりと彫られた幾何学模様は五方向からの光を吸収するかのように輝き、線の上を脈打つ白い光が走っている。

 「ティロム神殿にも似た仕掛けがあった。この昇降台も同じような原理だと思う」
 リドレイが床を凝視しながらつぶやき、ややあって、皆を見まわした

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【ダンジョン潜り】 (14) ~穢れの地~

【ダンジョン潜り】 (14) ~穢れの地~

~つづかれる~



 我ら徒党はここで一時休息することとし、私も壁際に身を横たえた。

 皆思い思いに伏せたり雑談していたが、ガイオは二、三度ほど、はじめに私たちが入ってきたドアを開けて外を確認した。
 何をしているのか私が問うと、彼は答えた。
 「魔物が湧いていないか一応見ているんだ。ティラの光を受けている廊下はいいとして、ここだけはな」

 通った通路は全て確認しているはずだがと私は思った

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【ダンジョン潜り】:目次

【ダンジョン潜り】:目次



 ダンジョンを探索する冒険の小説です。
更新中。
追補編は資料集です。



 【一章】

(1) ~到着~
(2) ~徒党編成~
(3) ~グラーアムの声~
(4) ~マジックライト~
(5) ~ネズミ退治~
(6) ~訓練~
(7) ~授業~
(8) ~革外套~
(9) ~肉と酒~
(10) ~大部屋~

(11) ~罠~
(12) ~ティラの光~
(13) ~仕掛け~
(14) 

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【ダンジョン潜り】 (13) ~仕掛け~

【ダンジョン潜り】 (13) ~仕掛け~

~つづかれる~



 石台の上に灯された "ティラの光" は長い廊下を貫いて中央の大部屋にまで至り、室内を淡く照らしていた(はじめにリドレイの放ったマジックライトはすでに効力を失っていた)。

 先も述べたが私たちが灯りをともした北側の通路に通じるドアの他に、大部屋には同じようなドアが四つある。
 それらも開錠してみると、やはり同じように長い廊下、そして小部屋だ。石台には椀。壁には同じティラの

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【ダンジョン潜り】 (12) ~ティラの光~

【ダンジョン潜り】 (12) ~ティラの光~

~つづかれる~



 100メートルはあろうかという長い廊下を無事に渡り終えると、ドアのない小部屋に行き当たった。

 部屋とは言ったが私たち全員が入ればほとんど隙間がなくなるほどの狭さで、腰ほどの高さの真四角の石台が奥の壁にぴったり沿うよう据えられていた。石台の中央のくぼみにはくすんだ、おそらく真鍮の椀のようなものが置かれている。

 私たちは室内を調べたがどうやらここは行き止まりで、廊下側

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【ダンジョン潜り】 (11) ~罠~

【ダンジョン潜り】 (11) ~罠~

~つづかれる~



 キザシが開錠した北側のドアを開けると、私たちは一本道の長い廊下に出た。天井が低くなんとも窮屈な廊下である。

 松明を持ったガイオ、そして術で杖を明るく光らせているテレトハが床、天井、壁の左右を照らし、罠が無いか皆で確認しながら進む。場合によっては、巧妙に隠され壁に偽装した入り口が置かれていることもあるという。

 さて、ダンジョン潜りの手練れである徒党の皆はすっかり慣れ

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