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【ダンジョン潜り】 (17) ~帽子~

~つづかれる~

 「回れ回れ回れ!隠れろ!」

 私たちはガイオのかかげる松明の火だけを頼りに廊下を猛進し、角を曲がって右に折れた。骸骨弓兵の射掛ける矢がまた私の脇を飛び越える。戦場を思い出した。

 「よし構えろ!」
 ガイオの号令で皆は反転し、角を曲がって襲い来るであろう骸骨部隊を迎え撃つ態勢を整えた。
 リドレイは廊下をマジックライトで照らしはじめ、テレトハも詠唱を開始した。

 さてこの状況でいかに助力できるか、ファイアボールを試すべきかと少し思案していると、キザシが私の肩を叩いた。
 「おい、俺たちはちょっと奥を調べるぞ。挟み撃ちになっちゃ かなわねえ」
 彼はもう骸骨たちの件は片付いたと言わんばかりの間延びした調子ですたすたと歩きだしてしまった。私は彼のあとに付いた。

 キザシは鋭い目つきで廊下の上下左右を子細に調べながら、どんどんと歩を進めていく。
 彼が右手に掲げるのは紐を結び付けた小さな油壺のような道具だ。それは陶器製に見えたが、全体を覆う透かし彫りの間から激しい光があたりに漏れ、廊下を松明のように照らしていた。

 「これか? ★竜の種火だ。」
 わたしの物問いたげな様子を見てキザシが言った。
 「火竜ゼウルの火...。闇をうち破る山の光」

 ゼウルといえば竜の長にして火神グ・ロウルの妹であり、かつて常闇の神エンシとの決戦で大手柄を立てた、偉大な竜である。

 「長くやってるとこういう面白いもんが手に入ったりするのよ...。まぁそのためには、なんとしても生き残らねえとな」
 キザシは愉快そうな様子で薄笑いを浮かべている。

 背後ではすでに打ち合いが始まっており、武具のぶつかり合う音が廊下じゅうに響いていた。少し後ろを振り返ると、さすがに手練れの者たちである。難なく、骸骨部隊を手玉に取っているらしかった。

 キザシと私がさらに奥に進むと、石造りの廊下が突然途切れた。
 道は続いているのだが、ここからは天然の洞窟のようになっているのだ。洞窟はかび臭く湿っており、濡れた岩肌から水が滴り落ちていた。
 これまた探索は難儀そうである。

 ひとまず骸骨やほかの魔物の気配もしないので、私たちは皆のところに駆け戻った。

 骸骨との戦闘はすでに終わっており、ガイオたちは笑いながら大股で歩いてきた。
 「勝利、勝利だ! とはいえ少し焦ったな。新しい階層に降りた時はこういう不意打ちが起こりやすいんだ。心しておくといい」
 ガイオはそう言うと、いきなり赤紫の布切れを私に投げてよこした。

 「戦利品だ。貴殿に似合う」
 広げてみると、それはつば無しの帽子である。厚手の高価そうな布で出来ている。

 「どこで拾ったか弓兵のスケルトンがかぶっていたんだが、ああいう痩せっぽちには似合わんな」
 ガイオは私にそう言って、似合うからかぶれと譲らない。
 骸骨の身に着けていたものなど薄気味が悪くてどうも嫌だったが、しょうがなく臭いを嗅いでもひどい腐臭などはしなかったので渋々頭におさめてみると、皆はなんだか嬉しそうに笑っている。
 「ハハハ、いっぱしの豪商か何かに見えるぞ」

 ダンジョン潜りを常としている連中はやはり少し頭がおかしくなってしまうのかもしれないなどと思っていると、テレトハが真顔で口を開いた。
 「あの感じだとスケルトンを操ってるやつがいるね」
 「俺もそう思っていたよ。戦利品チャンスだな」
 ガイオが答え、ひとまずスケルトンたちが湧きだしてきた昇降台の東側の廊下を探索することと決まった。

 つづいてキザシが、こっちの奥は天然の洞窟のようになっているから後回しにしようと報告していると、いきなりべちゃっと音がして、彼の肩にぬめぬめしたものがいくつも落ちてきた。

 「ゲエッ...」

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 ガイオ    戦士     ○
 ジョセフィン 戦士     ○
 リドレイ   プリースト  ○
 ぼるぞい   魔法戦士   ○
 キザシ    盗賊     毒
 テレトハ   メイジ    ○

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~つづく~

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金くれ