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【ダンジョン潜り】 (12) ~ティラの光~

~つづかれる~

 100メートルはあろうかという長い廊下を無事に渡り終えると、ドアのない小部屋に行き当たった。

 部屋とは言ったが私たち全員が入ればほとんど隙間がなくなるほどの狭さで、腰ほどの高さの真四角の石台が奥の壁にぴったり沿うよう据えられていた。石台の中央のくぼみにはくすんだ、おそらく真鍮の椀のようなものが置かれている。

 私たちは室内を調べたがどうやらここは行き止まりで、廊下側の入り口以外はふさがっているらしい。
 天井や壁は埃やクモの巣などに覆われ汚れがひどかった。

 キザシがしばらく真鍮の椀をいじくっていたが、特に見るべきところもないようで、椀はもとのくぼみに戻された。

 特に収穫もあるように思えず私たちは廊下を戻りかけたが、杖で奥の壁をつついていたテレトハがにわかに声を上げた。
 「何かある」

 クモの巣と塵を払った壁面に、確かに色がついていた。
 皆で石壁の汚れを落とすと、それは絵であった。先ほど廊下で見たものと同じような壁画がここにもあったのだ。

 絵はところどころ剥がれているとはいえ、色鮮やかかつ繊細に描かれたものだ。
 頭に鹿のような立派な角を生やした長い髪の男が立っており、三人の男女がその前に身をかがめて白く丸いものを差し上げている、という図柄であった。

 「ティラだ」
 テレトハが言った。

 月の神ティラ。
 森の狩人バンクの夫で、その長く光る髪房から数多の星々が生まれた。
 常闇の王エンシが彼の腿に毒矢を射込むまでは、毎夜天に立ち、全ての夜を慈悲の光で照らしつづけていたと言われている。エンシの恐るべき呪いが降りかかって後こそティラは夜の闇を完全に食い止めることができなくなったが、今でも信奉者の多い神だ。

 「なるほど。ティラの光か...」
 ガイオがそう言ってリドレイを振り向くと、ティラに仕える巨躯の神官はすでに祈りの詠唱を始めていた。優しげでゆったりした子守歌のような朗唱だ。

 石台の椀の上に淡い光が、現れた。
 光はさらに輝き、輝きを増すと、私たちのいる小部屋の中は昼のように明るくなり、小部屋だけでなく廊下までもが、まぶしいほどの光に包まれた。

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 ガイオ    戦士     ○
 ジョセフィン 戦士     ○
 リドレイ   プリースト  ○
 ぼるぞい   魔法戦士   ○
 キザシ    盗賊     ○
 テレトハ   メイジ    ○

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~つづく~

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金くれ