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「W杯2022」地上波テレビ視聴日記⑤12.14~12.19。「本当に素晴らしいワールドカップ」。

 2022年 カタールのサッカーワールドカップ地上波だけで見てきて、気がついたら、一ヶ月くらいが経ち、そして、もうすぐ終わる。

 ベスト4まできた。
 あと、4試合。

 12月14日。夜中のテレビを録画する。

 4時間ほどの録画。前半の2時間は、これまでを振り返る内容だったので、そこはとばして、試合を見た。

12月14日 準決勝 アルゼンチン VS クロアチア 

 クロアチアが、紺色のユニフォーム。ここまで1勝しかしてない、ということを解説が強調している。戦って勝ち上がってきたこと自体がすごいのに、とは思う。

 試合前、アルゼンチンのメッシと、クロアチアのモドリッチがコイントス。

 抑えた空気がある。

 試合が始まって間もなく、メッシがゴール前で、倒される。でも反則ではない。相手のプレーヤーにとっては、怖いのだろうと思う。

 そのあとの、メッシ。チームが守っている間は、本当にゆっくり歩いている。

 あれだけ、散歩のように歩いているプレーヤーは、初めて見た。この動きの人が、あのドリブルを、パスをできるとは思えないくらいのギャップだった。

 試合の中に流れる時間とは、違う場所にいる人にさえ見えた。
 その徹底した感じに、凄みと怖さを感じる。

 前半、15分。クロアチア。コーナーキック。変化のあるコーナー。高いヘディング。でも、ゴールキックになる。

 前半27分。クロアチアのフリーキック。うまくつながらない。

 アルゼンチンと、クロアチア。

 どちらも、まだ無理をしない感じ、でも、スキを見せたら、どちらもやられそうな緊張感はある。

アルゼンチンの得点

 前半31分。ペナルティエリアで、クロアチアが反則。ゴールキーパーにイエローカードが出てしまう。あの止め方しかなかったのかもしれないけれど、PKになる。

 蹴るのは、アルゼンチン・メッシ。独特のややゆっくりした動きから、ゴール右隅上に、強いシュート。誰もとれないと思わせるゴール。

 怖さを感じる。これを決められたら、GKの気持ちが、少しやられるのではないか、と思えるような、えぐるようなボールの軌道とスピードだった。

 得点のあと、アルゼンチンのプレーヤーたちは小さい輪になり、お互いに喜ぶというよりも、いたわり合っているような、落ち着いた感じに見える。

 ただ、プレーが再開されると、また点を狙っている気配は強いままだ。

 前半38分アルゼンチン9番・アルバレス。強いドリブルで突破していく。相手に当たって、自分に戻ってきて、そして、シュートへつながる。

 アルゼンチン2―0クロアチア。

 どうやって止めたらいいのか、分からないような強いプレー。

メッシのドリブル

 後半になって、クロアチアは、2人交代した。

 1分過ぎ。クロアチアのフリーキック。モドリッチが、右サイドから蹴ったが、ゴールキーパーに捕られる。

 後半3分過ぎ。アルゼンチン。メッシがドリブルする。ペナルティエリア近辺で、他のアルゼンチンのプレーヤーもドリブルを続けたり、波状攻撃といった組織的な攻撃というよりは、個々人の突破が、殴り続けるように、これでもかと続くが、得点にはつながらない。

 ここまで、勝負に強い戦いを見せてきた両チーム。
 どちらも攻め、チャンスもあるが、ゴールにはならない。

 ファールも多い。アルゼンチンにとっては、予定通りなのかもしれない。

 後半24分。ハーフライン近辺から、メッシがドリブルで、走って、上がり、タッチ数の多いドリブルを続け、さらには、方向を変え続け、相手のチャージを受けて、少しよろける時もあったが、ペナルティエリアに入り込み、ゴールラインギリギリから、相手の股も抜いた、キッカーの前にそっと置くようなパスを出す。

 それを、アルバレスが決めた。

 アルゼンチン3―0クロアチア。

 スピードが落ちたと言われても、でも、メッシのドリブル、って、本当にとめられない。ここまで他のチームと戦い続け、負けてこなかったクロアチアでも、どうしようもできない。メッシは、やはり、相手から見たら、怖いプレーヤーだった。

 相手を絶望させるようなプレーだった。

 それにしても、メッシは、ずっとピッチにいる。交代しない。ここまでの試合も、すべてピッチに立ち続けている。この点差だったら、交代してもおかしくないのに、とにかくサッカーを続けている。

 後半35分。クロアチアは、モドリッチを交代させて、ベンチに下げた。いいんだろうか。これで決まってしまったような感じにならないだろうか。

 後半40分。テレビの解説席も、すでにアルゼンチンが決勝に行く前提で話をしている。

 クロアチアの若いプレーヤー・7番マイェル髪型、ヘアバンド。おそらくは、モドリッチに憧れているのだろうし、次の代表の中盤の中心となっていくのだろうと思う。

 後半のアディショナルタイムも進み、残り30秒ほどになっても、クロアチアが強いシュートをうったが、ゴールの上へはずれていく。

 試合終了。

 アルゼンチンは、喜びを外側へ放出するというよりも、ほっとして、穏やかに味方同士で、たたえあっているように見えた。

 クロアチアのモドリッチは、ベンチでほとんど表情を変えなかった。

12月15日 準決勝 フランス Vs モロッコ 

 ここまでモロッコは、予想を覆すような戦いをして、勝ち上がってきた。
 フランスは、強さを見せつけるように、進んできた。

 前半5分。フンランスがパスをつないで、エムバペにボールが渡る。相手DFが前にいるのに、なぎ倒すようなドリブルと、周囲のプレッシャーを、かまわないようなシュートをする。キーパーがやっとはじいたところに、エルナンデスがつめて、ゴール。

 フランス1―0モロッコ

 それからも、フランスが、圧倒的な動きを見せて、その中で、さらに強力なエムバペの動きが突出する。

 ものすごく強い。

 シュートも、外れても、襲いかかる、という表現が大げさでないフランス。


 当然だけど、モロッコも、あきらめず、ゴールを狙う。

 前半20分。モロッコが一人怪我をして、交代。

 前半43分過ぎ。モロッコのコーナーキック。オーバーヘッドキック。最後ポストに当たる。とても、目をひくプレーだった。

 前半のアディショナルタイム1分。モロッコのコーナーキック。かなりチャンスになる。

エムバペ への タックル

 後半が始まって、1分過ぎ。
 フランス。エムバペのドリブルは、その場面を壊す。

 後半6分過ぎ

 エムバペが、モロッコ4番・アムラバドの、すごく深いスライディングタックルを喰らった。

 ワールドカップでも、もしかしたら、初めて、強めに当たられて、倒れたかもしれない。スパイクのひもも切れたようだ。

 エムバペも止められるんだ。そんな印象を持ち、先に決勝進出を決めていた、アルゼンチンのプレーヤーが、参考にした場面のようにも思えた。

フランスの得点

 後半8分。

 モロッコが右サイドから、ゴール前に上げて、チャンスだったけれど、得点にはならない。

 さらに、モロッコがゴール前にクロスを上げて、だけど、フランスにカットされる。モロッコのチャンスは続く。

 後半24分過ぎ。モロッコが攻め上がる。フランスが奪って、進んで、モロッコが反則で止めて、プレーが止まった。

 モロッコも、かなりチャンスを作ったものの、得点につながらない時間が続いた。

 そして、後半33分過ぎ。フランスの攻撃。真ん中から、左サイド、そして、スルーパスがゴール前に出た。そこに、交代したプレーヤー・ムアニが、ふわっと走り込んで、まるでエアポケットのようにフリーになったように見えて、ゴールを決める。

 フランス 2―0 モロッコ。

 後半のアディショナルに入って、2分過ぎ。モロッコがシュート。ゴールに入らないけれど、コーナーキックになる。その後も、さらに、ゴール前に、モロッコが攻め続け、だけど、フランスのディフェンスが、ゴール前で止める。本当に入らない。

 フランスの守りの粘り強さのようなものも、最後に見せているように思った。

 フランスは、強かった。

12月16日

 この日は、ウソのようにサッカーの番組が少なくなり、W杯を紹介する短い番組だけを、地上波で見た。

 すでに決勝の話題だった。

 60年ぶり、3カ国目の連覇がかかるフランスが中心で、それもエムバペの話題が多く、そこに得点王争いで、メッシの名前も出てきた。

 もうすぐワールドカップも終わりになる印象が強くなる。

12月18日  3位決定戦 モロッコ VS クロアチア

 3位決定戦は、不思議なゲームだと、毎回、思う。

 本当に、おこなう必要があるのか。興行的には必要だろうけど、プレーヤーたちは、どこまで戦う動機を保てるのだろうか。
 ここで勝つのと、負けるのでは、かなり違ってくるのだろうか。

 つい、そんなことを思ってしまう。

 それでも、クロアチアのモドリッチは、変わらず出場しているし、その表情は、準決勝のアルゼンチン戦の時と、それほど変わりなく見える。

 前半7分すぎ、クロアチアのフリーキック。少しトリッキーな、デザインされたヘディングをつないだゴールになった。

 あっけなく、意表をつかれたようなシュート。

 クロアチア 1ー0 モロッコ

 前半9分モロッコのフリーキック。守るクロアチアのクリアがゴール前に浮いて、それをモロッコがヘディングで押し込んだ。

 モロッコ1ー1 クロアチア

 力を抜いているわけでもないのは当然だし、気のせいかもしれないけれど、息苦しさまであった準決勝までの密度の高さは、ここにはないようで、どこか解放感もあるように思う。

 前半42分。クロアチア。ゴール前でボールを回し、粘って、最後は、左サイドから、オルシッチが右足のサイドキックで、ポストに当たって、ゴールに入っていくシュートをうった。

 とてもテクニカルなゴール。

 クロアチア2―1モロッコ

 試合前やハーフタイムに、ピッチにかなり水をまいていることを、テレビの解説で初めて知り、それで乾くまで、やややりにくいこともあるらしい。

 
 モロッコは後半もずっとあきらめずに攻め続けたものの、試合は、そのまま終わる。

 勝利が決まった瞬間、ベンチにいるクロアチアのプレーヤーもピッチ内へ、走っていく。そのスピードは、準々決勝までの、勝ち上がった瞬間と比べたら、かなりゆっくりした走りだった。

12月19日 決勝 アルゼンチン VS フランス

 これで、ワールドカップも終わる。

 フランス強いんだろうな、と感じながらも、メッシが勝たないだろうか、とも思う。

 メッシには、神通力のようなものがあるように見えるけれど、ただ、ノンフィクション的に凄いエムバペがいるから難しいかもしれない。

 よくできた舞台設定だった。

 どちらのチームが勝っても、3度目の優勝。フランスは連覇になり、アルゼンチンは36年ぶりになる。

 フランスにはエムバペ。アルゼンチンにはメッシ。誰もが知るスタープレーヤーがいて、しかも、得点王争いで、これまで、どちらも5点で、並んでいる。 

 約9万人の観客。

 試合前のアルゼンチンの国歌が流れるシーンで、プレーヤーの顔がアップになると、メッシの目は思った以上に澄んでいることに気づく。

 次にフランスの国家が流れる。もしかしたら世界で一番有名かも、というより、民主主義を採用している国ならば、無視できない曲でもあると思う。

 そのシーンでアップになった、試合前のエムバペが、嬉しそうに笑っていた。これからワールドカップの決勝なのに、怖いくらい、うれしそうに見えた。

 つい先日、昔、一緒にサッカーをしていた友人たちと会って、エムバペは、まだ7割くらいの力しか出してないんじゃないか、という話をしたのを思い出す。

重いスタート

 フランスのキックオフで試合は始まる。

 ゆったり、というよりも、重いスタート。

 メッシが最初、ゴール前へ迫る。そう思っていたら、そのあと競り合い、珍しく、メッシが頭を抱えて倒れていて、ヒヤッとするけれど、そのあとは、普通に立ち上がっていた。

 それだけ、今日は、いつもよりも闘うということかもしれない。

 解説の山本昌邦氏。ペナルティエリア内で、最もシュートを打たせてないのが、アルゼンチンのディフェンスだというデータを紹介してくれる。意外なようで、納得のいく話だった。
 
 アルゼンチンは、得点のときも、守るときも、最後の場面に、すごく強そうだったからだ。

 前半5分。アルゼンチン最初のシュート
 逆サイドのメッシは、一歩も動かず、手だけ上げていた。

 プレーと遠い時に、歩くメッシは、決勝でも、それほど変わらないが、メッシが守ったら、反則につながり、思った以上に激しいプレーだった。

 前半8分。ゴール前まで来るアルゼンチンは、やっぱり怖い。フランスはなんとか防いで、コーナーキックになり、ゴール前の攻防で、フランスのキーパーが倒れる。

 しばらく倒れているゴールキーパー。
 重い時間が流れ、前半10分を過ぎる。

 意外な展開だった。

メッシのPK

 試合は再開され、フランスのエムバペにボールが来る時があった。
 アルゼンチンのプレーヤーが2人、すぐに寄ってきて、動きを止め、もし、エムバペが動き始めた時は、どこでも動き、二人がかりで、即座にボールを奪えるような気配に見える。エムバペは、他のプレーヤーにパスを送った。

 その後も、エムバペは目立たないままだった。

 アルゼンチン。久しぶりに先発起用されたディ・マリアとメッシ。この二人のうまさと怖さと凄さは、画面でも伝わってくる。

 前半15分。データでは、アルゼンチンがボールポゼッションで上回る。確かに試合はアルゼンチンが主導権を握って、時間が進んでいっているように見える。

 アルゼンチンのディフェンスは、対人的な強さを見せている。相手のプレーを遅らせる、というよりは、まずはボールを奪いにいく、という怖さがいつも漂っていて、ボールへ向かって詰めるスピードが速いのは、思い切りの良さがずば抜けているせいかもしれない。

 だけど、その守備方法が、反則につながり、フランスがフリーキックを得る。ゴール前の左サイドから上がったボールに、フランスジルーが、高い位置から身を投げ出すようなヘディングでゴールを狙い、はずれるが、自分の身はどうなってもいいような、怖いもの知らずな凄さは伝わってくる。

 そのあと、前半20分すぎ。左サイドから、アルゼンチンディマリアが、フランスのゴールに向かうドリブルで進む。それが、ペナルティエリア内で、うしろから倒され、PKとなる。とてもうまさが目立つが、反則を誘いやすいドリブルだとも思う。

 そして、PKは、メッシ。

 テレビ画面では、少し緊張してる。ように見えた。

 ホイッスルが吹かれ、プレーが始まる。メッシは自分のタイミングで、ゆっくり走り、いったん止まり、キーパーの逆をついて、右サイドに決めた。

 なんだかすごい。緊張する仕草さえ、ひっかけだったのか、と思う。

 前半23分。

 アルゼンチン1―0 フランス

 意外な展開だった。

アルゼンチンの強さ

 試合が始まって、30分くらい経つのに、ここまでフランスのエムバペが目立たない。

 それだけ、きちんと守られている、ということだった。

 それに対して、アルゼンチンのメッシディ・マリアの二人は、うまい、と思える瞬間が多い。
 視聴者に気持ちよさを生んでくれるプレーだった。

 そして、前半36分アルゼンチンのパスがつながり、途中で、メッシのアウトサイドでのワンタッチパスもあり、さらに、つなげて、最後はディ・マリアがシュートを決める。

 アルゼンチン2―0フランス 。

 さらに意外な展開だった。

 
 前半40分。フランス。ジルーとデンベレを二人交代させるという、思い切った選択をする。

 アルゼンチンのディフェンス。特にゴールの近くの激しさは、本当にすごい。

 メッシ。特に今日はうまく見える。

 アルゼンチンの強さとは、球ぎわの強さかもしれない。動物としての人間の強さを感じさせる。

 前半のアディショナルタイム。アルゼンチンのフェルナンデスにイエローカード。

 そのプレーだけではなく、アルゼンチンの反則の多さに出したような印象もあった。

 前半は、そのまま終わる。

 とても意外な展開。だけど、アルゼンチンは、決勝に向けてピークを仕上げてきたようにさえ見える。

 結束の強い、いいチームだと思った。

 このままでは終わらないと思うけれども、フランスも、そう簡単に今日のアルゼンチンを崩せる感じもしない。

決勝後半

 後半が始まっても、アルゼンチンのペースは変わらなかった。後半の1分でアルゼンチンが、すぐにゴール前まで攻めていく。

 フランスは、シンプルなパスミスで、サイドラインからボールを出してしまう。空気が止まるような、ぼんやりしたプレーに見えてしまった。
 こんなミスを、フランスがするのは、信じらないという印象だった。

 後半も、フランスは試合の流れを変えようとして、変えられないように見える時間が続くのは、アルゼンチンの思い切りがすごく、襲いかかるようなディフェンスが変わらないせいなのだろう。

 重い流れが続く。

 後半19分。アルゼンチンのディ・マリアが交代で、下がる。このプレーヤーの活躍で、アルゼンチンは、ここまでリードできたのは間違いない。

 その後も、アルゼンチンが守る時は、ボールに向かって、すごい詰め方をする。だけど、動きが多い分だけ、後半、20分過ぎ頃、アルゼンチンの疲れも出てきた気配になる。

 後半26分過ぎ。フランス、二人を交代させる。そのうちの一人は、中盤を支えてきたグリーズマンだった。意外な交代に見えた。

 後半30分。フランスが、シンプルなパスミスで、そのままボールが外へ出てしまう。後半では2度目の、信じられないような凡ミスだった。

 このままアルゼンチンが優勝するような流れだった。

エムバペのゴール

 決勝後半33分すぎ。フランスのムアニがドリブルでペナルティエリア内に持ち込み、アルゼンチンの反則を誘いPKになる。

 エムバペが蹴るようだ。これを入れれば、得点王争いも、並ぶ。

 後半35分。エムバペが、これでもか、と力強く決める。

 本当にこれまでと、変わらない軌道

 フランス1―2アルゼンチン。

 あっという前に空気は変わる。だけど、アルゼンチンが、そう簡単に崩れるとも思えなかったし、1点差になったとはいえ、あと10分守れば、それでもアルゼンチンの勝利は変わらない状況も続いていた。

 そのすぐあと、メッシが、珍しく、ドリブルをしっかりと奪われる。その後、フランスのパスがつながり、あっというまにゴール前にボールが出る。

 エムバペが左サイドから、右足の美しいボレーシュートで、同点に追いつく。すごくコントロールされた完璧なゴールだった。さっきとPKの成功から、1分ほどしかたっていない。

 フランス 2ー2 アルゼンチン。

 信じられないゴールだった。もう、わからない。
 これで、エムバペが得点王争いもトップ。

 あれだけ、流れはアルゼンチンだったのに、一気に変わってしまった。

 ここまで目立たなかったのに、アルゼンチンの疲れが出始めた頃に、これだけ劇的な変化をもたらせるのは、エムバペは、本当に突出した、すごいプレーヤーだと思う。

延長

 その後、どちらのチームにもチャンスがあったが得点にならず、延長に入る。

 後半の一時期、笑顔も出ていたメッシの表情は、また重くなった。

 疲れが伝わってくる。

 延長になって、メッシは、相手をドリブルで抜けなくなってきている。

 延長前半11分。アルゼンチン。交代。二人。

 14分。メッシの狭いところでのバス。シュート。コーナーキックになるが、得点にはつながらない。

 延長前半終了。

 まだ続く。

 延長後半になる。

メッシのゴール

 延長後半、3分。急激にプレーのテンポがあがったアルゼンチンがシュートまでつなげ、それはフランスのキーパーが弾いたが、そこへ、メッシが詰めて、シュートを決める。すぐにフランスのプレーヤーがクリアしたが、それは、ゴールラインを超えたあとだった。

 アルゼンチン3―2フランス。

 こんなに喜びを見せるメッシは、見たことない。

 まだ時間はある。だけど、ここまで来たら、もうメッシのゴールで試合は決まったのではないか、としか思えていない。

 延長後半7分、フランス。負傷して、一人交代。

 アルゼンチンは、得点のためか、殺意さえ感じる激しいタックルが蘇り、そのプレーを続けている。怖くて、すごい。

魂の削り合い

 もう試合は、終わるかと思っていた。
 地上波のテレビ視聴者としても、午前2時半を過ぎようとしているし、これでもうすぐ眠れると思っていた。

 延長後半11分エムバペが強いシュートをうつ。アルゼンチンがブロックしたと思ったら、それは、ひじに当たっていた。ハンドで、フランスのPK。

 エムバペが、これだけ戦った時間の後でも、これまでと変わらない、また強いシュートを撃つ。また、同点。

 フランス 3―3 アルゼンチン。

 また、わからなくなった。
 ただ、すごい。

 延長戦後半13分。コーナーキック。まだ戦う。メッシが蹴る。

 アディショナルタイム3分。

 フランスが、選手交代。
 アルゼンチンも、選手交代。

 体だけでなく、心まで本当にぶつかり合い、まだ、戦っているように見える。

 もうすぐ試合は終わる。

 フランスの、もう入ったと思えたシュートを、アルゼンチンのゴールキーパーが足で止める。

 その後、アルゼンチンも決定的なシュートを外す。

 どちらもすごいチャンスだった。

 それでも、まだ試合が終わらず、エムバペがペナルティエリアにドリブルで切り込んで、一人抜いたら、もう一人カバーのプレーヤーがすぐに詰めてきて、ボールを必死でクリアする。

 魂の削りあいだった。大げさでなく、人間の限界を越えるような戦いだと思う。

 どちらのチームも、最後の1秒まで戦い続けていた。

PK戦

 ワールドカップの決勝は、PK戦になった。独特の重い時間になる。

 もう、どうなるのか、わからない。

 フランス。一人目。エムバペ。決めた。普通に、強いシュート。延長後半の時と、ほぼ同じコース。よく蹴ることができると、凄みを感じる。

 アルゼンチン一人目。メッシ。走って、途中で止まって、タイミングをずらして、GKの逆をつくシュートを決める。

 この場面で、すごいプレーだった。エムバペも、メッシも、化け物だと思う。


 フランス二人目。コマン。アルゼンチンのゴールキーパー。止めた。すごい止め方。

 アルゼンチン二人目。交代したばかりのディバラ。真ん中へ決めた。すごい。


 フランス三人目。チュアメニ。蹴ったボールが、ゴール左へ外れる。120分フルで戦ったプレーヤーは、枠を外すことがある。そんな話をテレビ解説でしていたときだった。

 アルゼンチン三人目。パレデス。途中で交代で入ったプレーヤー。左へ決めた。


 フランス四人目。ムアニ。真ん中へ決めた。アルゼンチンのキーパーへイエローカードというアナウンスが入るが、詳細はわからない。

 アルゼンチン四人目。これを決めれば、アルゼンチンの優勝モンティエルが、左隅に迷いなく、シュートをし、決まった。

メッシの笑顔

 優勝は、アルゼンチン。

 アルゼンチンのプレーヤーたちは、飛び跳ねるのではなく、抱き合って、丸くなっている。

 メッシが笑っている。他のプレーヤーの多くは泣いている。

 フランスのエムバペは、泣かない。悔しさでふくらんだ、不本意な表情に見える。

 メッシは、ずっと笑っている。

 決勝戦が、最高のゲームだった。すごかった。

 メッシは、ピッチのあちこちで、一人、一人と、丁寧にハグをしている。

「クレイジーだ。本当に苦しんできたけど、ようやく手に入れた。本当にこれが欲しかったんだ」と“本音”を吐露。そして、こう続けた。

「誰もが幼い頃に抱いた夢だったと思うし、僕も人生でずっと欲しかったタイトルだった。見てくれ、本当に美しいだろう? 今日は神様が与えてくれるって分かっていたし、そういう予感もあったんだ」

「これ以上望むものはないよ。全部手に入ったことに感謝したい。こうして自分のキャリアのほとんどを終えることができたのは、感慨深いものがあるね。この先に、何を期待すればいいんだろう。コパ・アメリカ、ワールドカップで優勝出来た」

 表彰式でも、メッシはずっと笑っていた。
 明るい表情だった。これだけ軽やかに笑っているメッシは記憶にない。

 重荷から解放されたのだろう。

 表彰式の途中、ワールドカップに、フライング気味に、メッシがキスをしてしまっても、それは、なんとも言えない、視聴者でも心が動く場面に見えたし、それは、5度目のワールドカップで、やっと勝てたというメッシのストーリーを、おそらく誰もが知っていたからだと思う。

本当に素晴らしいワールドカップ

 メッシは、偉大な天才マラドーナと比べられてきて、様々な記録やタイトルを積み上げ、世界最高のプレーヤーと言われながらも、このワールドカップをとることができなかった。

 2006年。2010年。2014年は決勝で敗れた。2018年。そして、2022年。

 長い時間だったのだろうと、想像も難しいが、考えてみる。

 
 個人的には1999年から、結果として19年間、ほぼ家族の介護に専念することになった。2002年のワールドカップは、母親の病室で一緒に見た。家族の介護では、夜中の担当だったから、その合間にワールドカップの試合は、地上波だけだけど、比較的、見ていた方だと思う。2006年、2010年、2014年、2018年。
 
 介護をする前は、主に、スポーツを取材して書くライターをしていた。その頃は2002年のW杯の取材が目標の一つだったけれど、自分自身が心臓の病気になったこともあって、仕事をやめて、介護に専念していた。

 最初のうちは、サッカーをテレビで見るのも、気持ち的には辛かった。
 
 だけど、メッシのプレーは、いつも絶好調とは言えなくても、常にすごいと思える瞬間を作ってくれた。そんなプレーを見ている時だけは、大げさでなく、一瞬でも、いろいろなことを忘れられた。

 サッカープレーヤーとして、とても長い間、テレビ画面であっても、誰が見てもすごいと思える数少ないプレーヤーであり続けたと思う。

 それが、どれだけ困難なことかと想像すると、全く面識もなく、関係もないし、今はあまり熱心ではないサッカーファンだし、失礼かもしれないけれど、自分にとっては、「介護終了後の初めてのワールドカップ」で優勝したメッシに対して、本当におめでとう、と思ってしまった。


 日本代表の活躍によって、サッカー強豪国になるにはどうしたらいいのか。おそらく日本サッカー史上初めて、そんな議論を、本気で始めてもおかしくない場所にまで連れてきてくれたようにも思っているし、2022年のワールドカップは、決勝までの凄さも含めて、本当に素晴らしいワールドカップだったと、思っている。



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