「W杯2022」地上波テレビ視聴日記④ 12.10~12.11。「ベスト8」の高い密度。
ワールドカップの決勝トーナメント1回戦で、日本代表は敗退した。
そして、「ベスト8」の試合が始まる。
地上波では、準々決勝は、個人的には自分が見たいカードが見られない。
オランダVSアルゼンチン。
フランスVSイングランド。
この2試合は、ハイライトなどで見るしかなかった。
12月10日 ブラジル VS クロアチア
地上波で見られるのは、ブラジルVSクロアチア。
土曜日の朝は早いので、録画した。
その夕方、電車に乗っている時に結果を見てしまったが、家に帰って、録画してあった「準々決勝」を見る。
ブラジルとクロアチアでは、やはり、ブラジルが勝つのだと思っていた。
キックオフ前の映像が流れる。
ブラジルのジャージは、緑色で、きれいだった。
クロアチアのモドリッチの顔がアップになる。
無駄なもののない、すごくいい顔をしている。高揚も緊張もしていない、まるで平常心に近い表情。こんな顔ができるんだ。
モドリッチは、国内紛争を子供の頃に経験している、という紹介。
ずっと同じメンバーで勝ち上がってきていて、それほど交代もしていないのに、タフなチームだと思う。
あきらめないのが、芯になっているように見えるのは、4年前の戦い方の記憶も、クロアチアの試合を見るたびに蘇ってきているせいだと思う。
試合前半4分過ぎ。ブラジルのシュート。
歓声がすごい。
ファンタジックとファイト
厳しい戦いなのは間違いないのに、クロアチアのサッカーが、日本代表との戦いの時より魅力的に見える。
それは、主体性が、より際立っていたせいなのだろうか。
日本代表のサッカーは、どんな特徴なのかと考えると、やっぱり「ワーク」だったのではないか、と思う。それは対戦相手にとっては、どんなチームでも「ワーク」に対応することになり、試合が重くなってしまうのだろうか。
クロアチアのサッカーは「ファイト」なのかのもしれない。
チーム全体が頑強に見える。
その中で最も小柄なモドリッチがゲームを組み立てる。
守り方の強さは、ドイツと似ているような感じがする。
クロアチアのディフェンスの強さは、すごい。キーパーがものすごいのだろう、と思う。
対するブラジルは、「ファンタジック」なサッカー。厳しい戦いの中でも、必ず楽しい瞬間をつくってくれる。だから、やっぱり見たくなる。
試合前半
前半29分。クロアチアのスピードのあるドリブル。大きいサイドチェンジ。ダイナミックな展開で、シュートまで持っていく。大きいサッカーだと思う。
その後にクロアチアの反則。ブラジルの個人技でやられそうで、それしかないのだろう。11番が警告を受ける。
強いプレーヤーの中で、一人、軽やかに動き回るモドリッチ。強さと柔らかさ。やりにくい相手。日本が抑えていたのか、モドリッチの調子が悪かったのか、そこはよくわからないが、戦う心と、自在なプレー。このゲームでは、こんなに魅力的だったのか、と4年前を思い出す。
前半35分。ボールポゼッションのデータがテレビ画面に表示される。クロアチアも、ブラジルも45%で、同じ数字を示している。
前半41分。ゴール前のブラジルのフリーキック。途中でプレーヤーに当たってコースが変わったのに、全く動じずに体の真ん中でキャッチするクロアチアのGK・リバコビッチ。
どちらもチャンスがあったものの、前半は0対0で終了。クロアチアが思ったよりも強い。
試合後半
試合後半1分過ぎ。ブラジルのすごいチャンス。クロアチアのGKが足で止める。その後のシュートも、フリーで近距離なのに、落ち着いて、止める。なんだかすごい。
後半9分過ぎ。ブラジル・ネイマールのシュート。GK・リバコビッチは、足だけど、何か余裕を持っているようにまで見え、蹴り出す。すごく目が冷静で、シュートの寸前まで、相手のことを、本当によく見ている。予測に逃げずに、ギリギリまで判断を保留している。他のGKよりも、おそらく1秒ほど待てる、という差が、これだけ止められるのかもしれない。
クロアチアのモドリッチのプレーは、オーソドックスだけど、きれいにパスをつなぐ姿が目立つ。
後半20分。ブラジルがシュートをうつが、またGK・リバコビッチが止める。あの相手が襲いかかってくるような場面で、テレビ画面で見ても、ものすごく冷静に思える。どうして、というくらい。
怖いくらいの平常心。
それでもブラジル・ネイマールはうまいし、気持ちいい。
後半26分過ぎ。クロアチアは、2人かえる。
後半34分。ブラジルのシュートを、クロアチアのGK・リバコビッチが、また、止める。
試合の残り時間が少なくなるほど、ブラジルのサポーターの、ブラジル、ブラジル、と地の底から湧き上がるような声が太く大きく響くが、同点のまま試合は終わる。
緊張感もあり、いいプレーもあり、両チームのいいところも出ていて、得点がなくても、面白い90分だった。
延長前半
どちらも得点がないまま、延長に入る。
90分を過ぎても、クロアチアは強い。
どちらも体を張っている。ブラジルはゴール前へ何度も向かう。
延長7分過ぎ。ブラジルが4人目の交代。
8分過ぎから、ブラジルのキープする時間。ゴール前へ向かう瞬間が増えてきている。ネイマールのパスは、とても点につながりそうな気がする。
延長前半10分過ぎ。ブラジルの時間が続く。だけど、クロアチアのGK・リバコビッチに抑えられる。
どちらも、動きが止まらない。
延長前半15分過ぎ。もうアディショナルタイムに入っている。
ブラジル・ネイマールから縦パス。とても狭いスペースで、人が多くいる場所で、パスを出して、パスをもらい、もう一度、パスを出して、パスをもらう。その間に、多くのクロアチアのプレーヤーを抜いて、しかも体でぶつかり合っても競り勝って、ドリブルをし、GKも抜いて、シュートをゴールの上に突き刺した。
これで、ネイマールは、ペレに並ぶブラジル代表での得点77に並んだ。
ファンタジックで、速くて、強い。本当に凄いプレーだった。魔法と表現もされていたが、本当にそうだった。サッカーの化身だった。
何億人かが、ブラジルが勝つと信じた場面だった。たとえ、ブラジルのファンでなくても。
おそらくクロアチアのプレーヤーとサポーター以外は。
延長後半
あれだけのゴールを決められたのに、クロアチアは、少なくとも気持ちがやられていないように見えた。選手交代も使い切っていく。
延長後半に入っても、モドリッチは疲れないのだろうか、と思う。
延長後半4分。クロアチア、一人交代。
ブラジルは、さすがに守っている。
後半9分。ブラジルのコーナー。7人も上がっている。その後、ネイマールのフリーキックも、ゴールには結びつかない。
延長後半12分過ぎ。モドリッチから、組み立て、ブラジルはディフェンスが少なく、最後はブラジルのプレーヤーは4人しかいない。クロアチアのペトコビッチのシュートは、ブラジルのプレーヤーに当たって、そして、入ってしまう。それは、だけど、決めようという気持ちで押し込んでいると、本当に思える得点。
1対1。
きれいではないけれど、シュートを決めた。
あのネイマールのゴールで、気持ちが折れない。こういう時だけ使える表現だけど「魂のゴール」を決め返したように見えた。
クロアチアは、どれだけ心が強いんだろう。同点に追いつくとは思わなかった。
延長後半のアディショナルタイムの1分過ぎ。ブラジルのフリーキックからのシュートを、クロアチアのGK・リバコビッチが、また止めた。
PK戦
コイントスで、ブラジルは、自分たちのサポーターのいる方のゴールを選ぶ。クロアチアは、先攻を選んだ。
クロアチアは、PK戦は、強い。キーパーが止めてくれると思うから、キッカーは多分、相手よりも楽だと思うのだろうか。
PKが始まる。
クロアチア。1人目。13番。ゴールの、ほぼ真ん中に決める。落ち着いていた。
ブラジル。1人目。21番。キーパーが止める。そのガッチリした止め方に、テレビの前で、少し笑ってしまう。クロアチアのGK・リバコビッチは超人だと思った。
クロアチア。2人目。7番。また真ん中に蹴り込む。凄い。このメンタルの強さも、超人的だと思う。
ブラジル。2人目。5番。入れた。左隅。キーパーも飛んでいるけど、それよりも早いボール。凄い。
クロアチア。3人目。10番。モドリッチ。はずす気がしない。左隅。キーパーの逆をつく。
ブラジル。3人目。途中出場の25番。細かいステップで、裏をとって、決める。ブラジルらしい。やはり、ブラジルも凄い。
ここまで、クロアチア3―2ブラジル。
クロアチア。4人目。18番。左ギリギリ。入れる。
ブラジル4人目。4番。クロアチアのGKが、止めれば勝ち。シュートは、左のポストに当たって、跳ね返る。
跳んで横になったまま手をあげた後、クロアチアのGK・リバコビッチは立ち上がり、その位置から右側に大きく速く走って、味方のプレーヤーを迎えたのは、ペナルティスポットで崩れ落ちているブラジルのプレーヤーをその動きの中に巻き込まないためではないか、と見えた。これだけ常に周囲の状況が見えているから、あれだけシュートを止められたのではないか、と思える。
クロアチアが勝った。凄いことだった。
モドリッチは味方の輪から、はずれ、ブラジルのプレーヤーをハグして、何か言っている。決して、過剰に感情的にならないような気配で。
凄い試合だった。
解説の2人が、二人続けて、真ん中にけるPKは見たことがない。強心臓。という表現。をしていた。日本代表でW杯に出場したことがある人間の、その感想が、この試合のクロアチアの姿勢だったのかもしれない。
ネイマールの試合後の行為も、賞賛されていた。
12月10日 オランダ VS アルゼンチン
ハイライトで、ごく一部だけを見ることができた。
アルゼンチンの1点目。メッシが相手の股を抜いての、スルーパスの凄さ。
オランダの2点目。ほぼ最後のプレーで、フリーキックをシステマチックに機能させて得点につなげたオランダらしさ。
試合は荒れて、イエローカードが多く出てしまったが、得点シーンには、それぞれの良さが出ていたと思う。
2対2の同点で、延長でも決着がつかず、PK戦になり、アルゼンチンが勝った。2点差を追いついたオランダは、勝てなかった。
12月11日 ポルトガル VS モロッコ
モロッコが、ここまで勝ち上がってくるのは、大会前には予想ができなかった。
ポルトガル。クリスチアーノ・ロナウドがベンチスタート。この試合も?と視聴者でも思ってしまった。
モロッコのサポーターは、ポルトガルがプレーしただけでブーイングしている。
なんだか凄い。
ワールドカップの試合の密度が高くなっている感じはする。
モロッコは、シュートを打たれているけれど、枠内に飛んでいる率が少ない。諦めず粘るサッカーで、体を寄せる分、反則も増えるから、それをどうするか、というのが課題という、山本昌邦の解説は納得がいった。
モロッコは、攻撃を見ても、ためらわないサッカーなのかもしれない。思い切るサッカー。
試合が始まっても、モロッコには、強さがある。勢いもある。
攻撃が、イケイケで楽しそうな感じは、今日もある。
モロッコの得点
前の試合でハットトリックを達成したポルトガルのラモスが、別人のように、あまり目立たない。活躍できないことについて、解説の山本昌邦が、これがW杯。活躍したら研究されると指摘していて、これも納得がいった。
でも、そうだとしたら、そうした相手の研究や分析を上回り続けてきたロナウドを、こういう時にこそ、早めに使うべきではないか、という気持ちになった。
そんな話が放送席で出た前半40分。
モロッコの陣地内の深いところからのフリーキック。モロッコの攻撃が、ゆっくりと続く。
前半41分。モロッコの、ややゆったりとした動き、左サイドからの高いクロスが上がる。ネシリが、凄く高く、空中で浮遊しているようなジャンプをしてからのヘディングで、モロッコが1点。キーパーの腕よりも上の場所に到達していた。
モロッコ 1ー0 ポルトガル。
クリチアーノ・ロナウド
ロナウドが登場したのが、後半5分過ぎ。
どちらのチームもチャンスは作り、それでも、モロッコの前へ進む勢いは、ずっと衰えない。
クリスチアーノ・ロナウドも、当然のようにチャンスは作り、特に後半のアディショナルタイムに入ってからのシュートはとても凄いのに、GK・ブヌが止める。
アディショナルタイムも、あと2分しかない。ポルトガルは、攻め続けて、その姿は、テレビ画面でも焦りのようなものが伝わってくるけれど、でも、得点につながらない。
そのまま、試合は終わった。
映像は、会場から引き上げていくロナウドが、涙をぬぐう姿を、とらえていた。
また、ワールドカップに届かなかった。
12月11日 フランス VS イングランド
地上波での放送がなく、ハイライトで見た。
前半17分。フランスの先制点。凄いゴールだった。
エムバペも、イングランドが二人がかりだと、思うようにできないようだ。
後半2分。イングランドのコーナーキック。やっぱり怖い。
後半7分。イングランドがPKを獲得。
9番。ケインが爆発するようなシュートで得点。凄い強いシュート。イングランドらしい。
1対1。
ハイライトだけ見ただけでも、時々、エムバペが、とんでもないスピードなのはわかる。
後半33分。フランス。ジルーがクロスにヘッドで得点。
2対1。
後半39分。イングランドがPKの機会を得る。9番ケインが、1度目のPKを決めた時と、同じコースを狙ったように見えたのだけど、ボールは、ゴールの上にはずれていく。
そのまま試合は終わった。
データでは、ボールポゼッションで、イングランド50パーセント。フランス35パーセントだった。
どちらも質の高いサッカーのようだった。あれだけ強いと思えたイングランドも去っていった。
スポーツ新聞
準々決勝の結果を伝えるスポーツ新聞は、すでに1面で「ワールドカップ」を扱わなくなっている。
準々決勝は、地上波では2試合だけしか見られなかったけれど、明らかにその試合の密度は、また高くなっているのが分かった。
ワールドカップのたびに、いつも、ここまで進むことは、本当に困難なのではないか、と改めて思い、だけど、これから先、まだワールドカップは続く。
3位決定戦を含めて、あと4試合になった。すでに、ちょっと寂しい気持ちにもなっている。
(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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