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大人のおんぶは難しい。

 近所の人から連絡があった。

 腰が痛くて、歩けない、といった内容らしく、それは妻が信頼されているからだった。

 そして、私と妻の二人で、その人を、まずは鍼灸院に連れていった。


ツエ

 家から、門の外の小さい階段を降りて、道路に出るだけでも、歩けない状況にいる人を支えるのは難しい。

 昔、介護をしていた時は、途中から、歩けなくなった相手なので、車イスに乗せるしかなくて、ただ、あまり歩けない時を支えるよりは、連れていく相手としては、車イスを使うようになってからの方が、楽だった記憶があった。

 でも、介護が終わってからは、家にあった車イスはレンタルだったので返してしまったし、それ以前からあったものは、家の裏にあって使えるかどうかもわからない。

 だから、まずは、妻と二人で、連れて行くしかない。

 だけど、途中で、おんぶした方が早いかも、と思って、その人をおぶろうとしたが、身内だったら無理をしてでもチャレンジしていたけれど、他人様をおぶるにはリスクがあるから、申し訳ないのだけど、あきらめて、その方にも中途半端になってしまったので、あやまった。

 そして、ツエを使ってもらって、妻と二人で支えて、途中で痛みを訴えるときは少し休んで、またゆっくりと歩くことを繰り返した。

 いつもは、近くに感じた鍼灸院が遠かった。

 そこには、待合室の本棚に「北斗の拳」があるのを見て興味はあったものの、そこに入ったことがなかったから、その人を連れて、初めて足を踏み入れた。

 その腰が痛いことを訴えた人にとって、ここは常連で、だから、そのスタッフは驚いた顔をしていたが、状況を説明して、小さなベッドまで運んで、預けることになった。

痛み

 以前、妻と一緒に妻の母親を介護していたとき、車イスで平たい場所には移動できるし、それには慣れ、21世紀に入ってからは、駅などにエレベーターが設置されたり、バリアフリーという言葉が一般的になってきたので、階段などで苦戦することは少なくなっていた。

 だけど、歩けなくなってから、どうしても歯医者に行く必要性が出てきて、そのときに、医院の前の階段で義母をおんぶしたのだが、そのとき、痛い、痛い、と何度も言われ、それで、後ろから首を絞められるように、腕で強くしがみつかれるような体勢になったことがある。

 そのときは、ちょっと危なかったのだけど、女性をおんぶするときには、胸の部分への圧力があると痛むことを、私は分かっていなかった。かといって、おんぶの時に、相手の上半身がきちんと、背負う側に体重がかかっていないと、落ちてしまうし、ということで、苦痛の少ないように、そのあたりの体重の分散のさせ方を、もっと試行錯誤しないと難しそうだと思った。ただ、その時の大騒ぎのためか、歯科医が家に来てくれることになった。

 だから、おんぶをする機会は、それから何年もなかった。

練習

 それで、腰の痛む人を、鍼灸院に送ったあとに、こういう時のために、どのくらいまでおんぶできるのかを確かめておこうと思って、妻を、おんぶさせてもらった。

 痛い。

 と言われ、体勢を調整しようとしたり、何しろ、このままでは下にずり落ちてしまいそうだったから、背中で持ち直そうと、ヒザを使って、妻の体を上に少し持ち上げようとした。

 そうしたら、余計に痛みがあったようで、優しくない、とまで言われた。

 それで、すぐに降りてもらったのだけど、体重差からいっても、こちらにもそれほど力がないのだから、そんなに余裕を持って、おんぶができるわけがないのに、とちょっとすねそうになった。

大人のおんぶ

 考えたら、もっともスムーズにおんぶをしていたのは、友人の子どもが小さい時や、おいやめいが幼い頃だったはずだ。

 そのおんぶで、子どもたちが痛がらなかったのは、体重が軽いから、こちらも余裕を持って、おんぶができて、体重の分散の調整などもできたせいもあるだろう。

 それから、学生時代のサッカー部の練習で、お互いをおんぶしてグランドを走る、といった、今から考えたら不合理な負荷をかけたときも、体重差はそれほどなく、重い手応えがあって、ギリギリ持ち上げていた感じがあったのに、相手が痛がることはなかったし、私がおんぶされる側になったときも、痛かった記憶はない。

 だから、おんぶをするとき難しくなるのは、大人の女性が相手のときだ

 そういえば、女子サッカーと男子サッカーの違いの一つに、女子選手は胸トラップをしない、ということがあったはずだ。男性の私には、衝撃による痛みについては分からない。

 だから、女性をおんぶする時も、上半身が背中から少し離れるくらいのおぶり方をしなくてはいけないけれど、そうなると、両腕で体重のほとんどを支えることになり、自分にかなりの力も必要になるし、女性をおぶる時には、その両手のポジショニングなど、さらに気をつけることが増えそうだ。

 そう考えると、大人の女性をおんぶすることは難しい。

 母親をおんぶする息子の銅像があったはずだけど、あれは、その体重分散などについて、考えられた姿勢なのか。それとも、息子がおんぶしてくれたから、痛みがあったとしても、伝えない、ということだったのか。

 そのあたりのことは、ちょっと知りたい気がするし、大人を痛みなく、それでいて、おんぶする方にも負担が少しでも減るような方法はあるのだろうか。

 できたら、知りたい気持ちはある。



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