『宗教右派とフェミニズム』 「〝支持政党なし52%〟のための大事な情報」
タイトルに「宗教右派」と「フェミニズム」が並んでいると、かなり特殊な話だと思ってしまうし、そしてどこかで構えるような気持ちにもなる。
ただ、「フェミニズム」が、「宗教右派」に、想像以上に攻撃を受け続けてきた歴史があったことを、この本を読んで改めて知った。
最近、「支持政党なし」が、久しぶりに50%を超えたという報道を知った。
自分もそうだけど、そういう人たちにこそ、この本を読んでもらいたいと思ったのは、政治に関して考える時の大事な情報だと感じたからだ。
だから、タイトルを見て、ちょっと気持ちがひいてしまう人ほど読んでほしい、と思った。それは、知らないでいること自体がリスクにつながると思えたからだ。
『宗教右派とフェミニズム』 山口智美 / 斉藤正美
2022年の安倍元首相の銃撃事件以降、急に再注目されるようになったのが、旧統一教会だった。
報道では、旧統一教会によって、家庭が破壊された、といった話は多く出ていた。だから、怖い団体だというイメージがふくらみ、同時に、20世紀末にも注目されていて、それから、勝手に忘れていたのだけど、その後も活動が盛んだったことにも気がついた。
著者の山口智美氏と、斉藤正美氏は、研究者として、こうした問題にも取り組み続けてきた。その成果は、著書として形にもしているのに、そのこと自体にもあまり注目が集まってこなかった。私自身も恥ずかしながら知らないままだった。
このときの『ポリタスTV』を覚えている。それは、そこに出演した山口氏と斉藤氏が、その話す内容を聞けば、旧統一教会のことを語るには適切な人たちであるのが分かるのに、その二人の出演者が、自分たちにコメント依頼もほとんど来ていない、という語り方をしているのは意外だった。
それでも、その後、こうして書籍になることも含めて、おそらくはこの何十年かの「歴史」自体を検討し直す必要があることが、社会にも共有されてきたのだと思う。
ただ前を向いているだけでは、また同じような過ちを繰り返す可能性が高くなってしまうと考えられるからだ。
政策への「影響」の可能性
安倍元首相銃撃事件以来、旧統一教協会への報道は急速に増えたが、確かに当初、選挙協力だけではなく、「政治へのはたらきかけをずっとおこなっていた団体」という情報はほとんど見当たらなかった。
同時に、のちに政策への影響も語られるようになって、それがどれだけの程度なのかは、いまだにはっきりとは分からないものの、歴史をたどり直すと、政権与党・自由民主党の政策は、その旧統一教会のはたらきかけの影響も疑われるように思えた。と同時に、元からかなり、その方向性が一致しているのかもしれないとも思わせる。
こうした動きに対して反対運動が起こり、「家庭の日」の設置は見送られた、という記録も挙げられているが、その後もその「目標」のようなものを諦めたわけではないようだ。そのことを示すような「政策」の歴史が続いているのは明らかに感じる。
このような「政策」の流れを見ると、一方では「民主的」な政策を掲げ、その一方で、のちに「新資本主義」と言われる過酷な労働にもつながる「立法」がされているのが改めて分かるのだけど、その当時は「男女雇用機会均等法」のほうに気をとられて、派遣法の怖さに気がついていなかった。
1990年代後半から、こうした運動が継続され、日本会議のメンバーでもある自民党議員が話題になったのは、さらに年月が経ってからのことになるが、政権与党でもある自民党が一貫して選択的夫婦別姓制度に反対し続けているのは、2020年代になっても変わらないのは誰もが知ることになった。
国際勝共連合の母体は、旧統一教会であるが、選択的夫婦別姓制度が、別姓も同姓も選択できるにも関わらず、自民党がどうしてあれだけ反対しているのかが不思議だったのだけど、もし、こうした「文化共産主義」といったことを本気で信じている国際勝共連合に影響を受けているのであれば、納得はできないが、理解はできる。
ただ、この書籍で、旧統一教会の主張と、自民党の政策を比較してみると、やはり影響はあったのではないか、という疑念が改めて浮かぶ。
どれだけ時間が経ったとしても、歴史への反省があって守られるべき「政教分離」という原則の点からも、旧統一教会が、政策へどれだけ影響を及ぼしているのか、の検討は続けるべきだと思う。
安倍政権
この書籍の中では、長期に渡った安倍政権について、再検討がされている。
それでも安倍元首相が亡くなった後、安倍政権時には、女性活躍推進法が成立もしたし、そのために恩恵のあった女性も存在するので、女性のことを考えた印象も残っているし、そのように語る人たちは、今も少なくないかもしれない。
だが、この書籍では、こうした指摘がされている。
そう言われてみれば、この書籍で指摘されている通り、「少子化対策」として、それ以前は、子育てのしやすさ、に焦点が当てられていたが、安倍政権では、未婚化や晩婚化にあると考え、官製婚活などに力が入れられていたという。
その一つが、有識者の経営コンサルタントが提案した「企業子宝率」だろう。ただ、この言葉を、自分が企業に勤めていないせいもあり、知らなかった。
人の生活に関して、こうした踏み込み方をしていたかと思うと、ちょっと怖くもなる。
ただ、「企業子宝率」だけではなく、他にもさまざまな「恋愛支援」や、内閣府「壁ドン」研究会など、いろいろな「官製婚活」策がとられているが、今考えても、実効性が薄いようにも感じる。ただ、こうしたことには、税金が投入されているはずだから、再検討してもいいのだとも思える。
運動の継続と、対応
フェミニズムや男女共同参画に対してのバックラッシュ(反動)は、単純に考えても、20年以上、続けられていることになる。そして、その運動に連携しているとも思えるような政権与党の動きも、継続しているように見える。
この書籍の見出しを並べただけでも、こうした運動がさまざまな場面で、本当に粘り強く行われているのがわかる。
その対応について、著者は、このように指摘している。
こうしたことを知ると、社会が変わっていくのは不可能ではないだろうか、という気持ちになるのだけど、その一方で変わろうとした時期があったことさえ、恥ずかしながら知らなった。
この時代と比べて、2020年の現在は、少なくとも「選択的夫婦別姓」を容認する意見は多数派になったとも考えられるので、もし、今後、政権で同様な状況になったとすれば、少なくとも「選択的夫婦別姓」は実現する可能性がある。
そうであれば、この書籍のタイトルが「偏っている」と思う人であっても、現在「支持政党なし」であれば、なおさら、知っておくべき情報が詰まっていると思う。
私自身も、「支持政党はなし」であり、特定の思想を信じてもいないし、何かの政治的な団体に属していないし、「選択的夫婦別姓制度」を切望しているわけでもないので、それほど積極的に語る資格もないとは思う。
でも、この「選択的夫婦別姓制度」に反対しているのは、自分ではない他の誰かの選択にまで過剰に口を出すことを正当化しているように思えるので、その発想自体を容認していては、どんどん生きづらくなっていきそうなので、まずは「選択的夫婦別姓制度」は成立してほしい。
そのためにも、選挙は大事だと改めて思った。
私と同様に、それほど政治に関心もなく、「支持政党もない」過半数の方には、少なくとも読んでいただきたいと思いました。どのように判断するかまで、もちろん強制はできませんが、ここに書いてあることを知らないまま、投票にいくのは、適切な選択を誤る可能性が高いような気がします。
(こちら↓は、電子書籍版です)。
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