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短編小説をまとめました!
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記事一覧

食ってやろうか?①【短編小説】

食ってやろうか?①【短編小説】

私に悪いことは起こらない。

「バックン、バックン。今日も嫌なことがあったの」

「なにがあった」

目の前に居るバックンが好奇心旺盛な目で見てきた。

「また今日もクラスメートのヤユちゃんに虐められた」

私が通っている小学校の、一つ年上の女の子のヤユちゃん。
ヤユちゃんはすごく意地悪だ。
何もしていないのに、気持ち悪いって言って、今日は私の鞄を投げてきた。

周りは何も言わない。その様子を見て

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もう届かない⑤完【短編小説】

もう届かない⑤完【短編小説】

3月は別れの季節だと、高校生の頃の担任教師がいっていた。

3月8日。
この時期になると、少し寂しくなる。
そんな事を思いながら書斎で仕事をしていると、携帯が鳴った。

「もしもし」

『あ、お兄ちゃん、久しぶり』

久し振りに聞く妹の声は、変わらず単調だった。

『明日の日曜日、暇だよね』

「勝手に決めつけるな」

『どこか出掛けるの?』

「そんな予定はない」

『じゃあ暇でしょ。仕事も日曜

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神様どうかこれ以上は【短編小説】

人は、祈る。
どうか願い事が叶いますようにと。

「もうすぐだぞ」

時計を見ながら兄が僕に話しかけてくる。
僕はため息をつきながら兄を見た。

さっきからずっとこうだ。

テレビでは住職が除夜の鐘をついている姿が映っていた。
あと一分で年が明ける。

父はリビングの炬燵で寝ており、母は自分の部屋で布団に入っている。そして来年から社会人になる兄は年が明けるのを今年も待っている。
我が家の年末年始は

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もう届かない④【短編小説】

もう届かない④【短編小説】

3月10日。当日を迎えた。

昨日妹の澪にお勧めされた服装、そしてワックス。ばっちり決まっているはずだ。

「あれ、もう行くの?」

リビングのソファでくつろいでいる妹が、携帯を触りながら聞いてくる。

「あぁ、父さんには帰りが遅くなるかもって伝えてるから。ご飯も冷蔵庫に置いてるから温めて食べてって言っておいて」

「そんなこと私から言わなくても、お父さんもう分かってるでしょ」

携帯をテーブルに

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もう届かない③【短編小説】

もう届かない③【短編小説】

洗面台で顔を洗っているとき、お兄ちゃんと後ろから声がした。

鏡越しで後ろを見ると、妹の澪が怪訝そうな顔で見ていた。

「どこか行くの?」

「買い物だよ」

「何買うの」

「・・・服」

嘘・・・と持っている手提げ鞄をワザと落とし、大袈裟に反応してみせる妹。

「何、虐め?」

「別に命令されて買ってくるわけじゃない」

「じゃあ何で急に」

「俺もお洒落くらいするさ」

「ちょっと待って。今

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もう届かない②【短編小説】

もう届かない②【短編小説】

3月9日の朝。

結局、一睡もできなかった。

頭の中は明日のことで一杯だ。
しかし同時に「何故」という疑問が消えない。

年に一度、3月9日の0時0分に電話をしよう。

卒業式に山岸からそう声をかけられたのが全ての始まりだった。

最初は、何を言っているのかが分からなかった。

だってそうだろう。
相手は学年一番の人気者。一方こちらは勉強しか取り柄がない日陰者。

高校三年間で同じクラスになった

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もう届かない①【短編小説】

もう届かない①【短編小説】

3月8日午後11時59分。

普段この時間に連絡なんて来ないが、俺は一分後に携帯が鳴ることを確信している。

ベッドの上に置いてある携帯電話を凝視する。

部屋の壁際に置いてある時計の針の進む音だけが聞こえてくる。

俺は一秒ずつ数えていた。57.58.59・・・。

3月9日午前0時に着信が来た。

携帯を取る。
ディスプレイには山岸 里桜と表示されている。

直ぐに通話ボタンを押して電話に出た

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シャッターチャンスは逃さない【短編小説】

シャッターチャンスは逃さない【短編小説】

「はい、笑ってー」

僕は写真が嫌いだ。

「はい、もう1枚撮りまーす」

笑え。

「はーい、オッケーです」

高校生最後のクラスでの集合写真。

天候に恵まれ、雲一つ無い中、喜びの声があちらこちらで聞こえてくる。

「中西くん、ありがとう」

古びたデジタルカメラをクラスメートの女子に渡され、僕は「こちらこそ」と返す。

別に、良かったのに。

『馬鹿じゃねーの。今どき、デジカメで撮る奴なんか

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そして彼女は彼方へと消えた【短編小説】

そして彼女は彼方へと消えた【短編小説】

一ノ瀬あかりが手紙で示していた住所までの時間は、電車で約一時間掛かった。

頭の中で、あいつが暗い、山の奥へと消えていく姿が頭から離れない。

荷物は何も持たず、背負っているものをすべて脱ぎ捨てて。まるで舞うように。

そのイメージを否定するように首を横に振る。
電車に乗っているこの時間が、煩わしかった。

ようやく最寄り駅に着き、携帯のマップ案内で山のスタート地点まで来た。

「おいおい、ここを

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ヒーローの助けは必要ない【短編小説】

ヒーローの助けは必要ない【短編小説】

「ねぇおじさん、昔、格闘技チャンピオンだったんでしょ?助けてよ」

必死な様子で、少年は中年男に話しかけた。

背は小さく、かけている眼鏡のフレームが少し汚れている。
顔にはあざ、手には擦り傷を作り、服は汚れていた。

「どこからの情報だ」

「だって、皆言ってるよ。昔子供たちのヒーローだったって。でも、今はボロ雑巾だって」

中年男は、煙草を吹かしながら少年の方を見る。

「坊主、ボロ雑巾って意

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ニュートンのようには識別出来ない【短編小説】

ニュートンのようには識別出来ない【短編小説】

「ねぇ天野。好きな天気は?」

一ノ瀬あかりは、一緒に砂場で遊んでいる天野ゆずるに声をかけた。

「好きな天気?」

そう聞かれたゆずるは少し考え答える。

「晴れ」

ふーん、とあかりは驚きもせずに返した。
そして、また砂をかき集め、山にしていく。

いつまで経っても、ゆずるからの質問がないので、あかりは自分から話しかけた。

「私はね、雨」

「雨?」

ゆずるは手を止めて、あかりの顔を見る

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そんなつもりじゃなかった。【短編小説】

そんなつもりじゃなかった。【短編小説】

「なぁ、俺たちのせいじゃねーよな」

須藤くんが、周りの取り巻き達に同意を求める形で聞いてきた。

「なぁ。どう思う」

そのうちの一人である僕は、返答に困った。

そんなの、当たり前じゃないですか。

だよな、だって、あいつもネタだって分かってただろ。

取り巻き達の笑い声が、耳に入ってくる。

いや、僕たちのせいだろう。

ねぇ須藤くん。そんな質問をしてくるくらいだから、自覚してるんでしょ。

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一ノ瀬が消えた【短編小説】

一ノ瀬が消えた【短編小説】

一ノ瀬が消えた。

どうやら、失踪したらしい。

それは平日の午前中に起こった出来事だった。

朝起きて、学校の準備をし出発をした。
いつも通り。授業を受け、帰寮して、進路に向けて配られた用紙を書く。しかし、手が付けられない。頭の片隅には、疑問の影。それが顔を出したとき、頭痛がする、
最近はずっとそんな毎日の繰り返しだった。

学校に向かう途中の駅の改札で、「帰ろう」。
そう思った。何せ今日は頭痛

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たとえ電波が届きにくいとしても。【短編小説】

たとえ電波が届きにくいとしても。【短編小説】

君は酷い奴だ。

こっちが送ったメッセージを、君はすぐに読んでいるのに、返ってくるまでの時間はとても長い。

あまりにも君が奥手だから、私から誘うことにした。
先手必勝。こういうのはね、男の子がリードする物じゃないの?

『明日、カラオケ行きたい』

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『明日2月14日?』

この返信を待つこと30分。
私がその間ベッドの上の枕に顔を埋めながら、足をバタバタと動かしたり、数分

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