宇吉

小説書いてます。 コメントを頂けると幸いです。

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眼球にくちづけを。 出会い

"あらすじ" 高校生に上がっても無気力な主人公真田に突如中野さんから投げかけられた一言から全てが始まる。 「打ち込ましたるよ。  これ以上ないって程、熱中させてあげる。  真田君に。」 という言葉。 「なにに?」 そう答えるのを待っていたかの如く満面の笑みで返される。 「私に。」 中野さんが真田にそんな事を言ったのは、ある事があったから。 次第に心を惹かれる真田。そんな中、ある日中野さんはいなくなる。 真田からある答えを聞いた後で。 ある事が理由で消えた中野さんに、納得のい

    • 眼球にくちづけを。七夕 歌詞

      もう何度この日を迎えただろうか 会えない月日が長すぎて 今も私の気持ちと変わらない気持ちを あなたは抱いていますか その答えを聞くのが余りにも怖くて 七夕の夜にあなたに会いたくて 七夕の夜まではあなたに会えない これが定めとこじつけられても 到底納得なんてできはしない それでも決められた縛りの中で 必要なのはあなたの温度 その温度があれば私は生きていける気がする 星が瞬く夜にあなたに触れたくて 星が降る夜はあなたを想い泣く 確かめ合う時間は余りに短く 崩れそうな心を握

      • 眼球にくちづけを。中野視点11話

        今年は暦も運がよく7/7に開催された。 野外フェス当日は生憎の曇り空だった。 朝かなり早い電車に飛び乗って、ウキウキしていると ハードなスケジュールだと文句を言ってきた。 「不満があるなら、その時、言うてくれたらよかったやん!」 人が楽しみにしているというのに水を差すとは何事か。 「不満って程ではないけど、朝はすごく並ぶって聞いたから、  葵の体調が心配なだけやよ。」 変わらず私の事を気遣ってくれている。 でも、今日は本当に楽しみしていたのだ。 「私の事は、私が一番知ってるし

        • 眼球にくちづけを。中野視点10話

          私の眼は幸いな事に、全く後遺症は残らなかった。それでも、 退院後には何度も経過観察で病院に行かないといけないのが煩わしい。 退院してから私はある行動をとった。働いていた盲学校を辞め、 一人暮らしをしている真田君の家に突入したのだ。 だって、片時たりとも離れたくないし、彼はダメって言わないはずだ。 彼の優しさにつけこむのは気が引けるが自分の気持ちを偽りたくない。 「ほんまに大丈夫なん?お父さんとかちゃんと説得した?」 両親は意外とあっさり了承してくれた。 たぶん、彼が5年間私の

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        眼球にくちづけを。 出会い

          眼球にくちづけを。中野視点9話

          それは長い話だった。聞くのがではない。物語がだ。 あの日、私が決意して消えた日から、真田君は私の病気の事を知っていた。 知って尚、私の事を想ってくれていたのだ。 私は馬鹿だ。阿保だ。最低だ。。。 彼をこんな風に縛り付けるつもりなんて一つもなかった。 最低なのに、私は真田君が私を想ってくれていた喜びが勝っている。 真田君を見つめる。真田君だ。5年前よりも身長が伸びている。 うん、5年前よりももっとカッコよくなってる。 真田君の発言一つ一つの優しさに包まれている。 私が、5年間で

          眼球にくちづけを。中野視点9話

          眼球にくちづけを。真田視点9話

          暦も運よく7/7に開催された。 しかし野外フェス当日は生憎の曇り空だった。 葵が無茶苦茶ハードスケジュールの予定を組んでくれたおかげで 朝一から行くことになった。 「不満があるなら、その時、言うてくれたらよかったやん!」 電車の中でちらっと不満を漏らしたらこれだ。 「不満って程ではないけど、朝はすごく並ぶって聞いたから、  葵の体調が心配なだけやよ。」 「私の事は、私が一番知ってるし。」 「葵、僕はそう言う言葉で5年前、どれだけ心配したかわかる?」 この言葉をいうとすぐ黙る。

          眼球にくちづけを。真田視点9話

          眼球にくちづけを。真田視点8話

          中野さんの眼は幸いな事に、これといった後遺症は残らなかった。 それでも、退院後には何度も経過観察で病院に行かないといけなかった。 退院してからの中野さんの動きはすごかった。働いていた盲学校を辞め、 一人暮らしをしている僕の家に突入してきたのだ。 親の了承を得てきたとは言うものの、半信半疑だ。 「ほんまに大丈夫なん? お父さんとかちゃんと説得した?」 「なんなん、私が来るのがそんなにいやなん?」 「そうじゃなくて段取り踏んでいかんと。」 「5年間も我慢してきたのに、段取りなんて

          眼球にくちづけを。真田視点8話

          眼球にくちづけを。真田視点7話

          中野さんと最後にあった日、お別れした後、 どうも様子がおかしいので引き返して中野さんに会いに行ったんだ。 じゃ、君は駅で立ちすくんで周りキョロキョロしていた。 僕は驚かそうと後ろから自分の声のトーンを変えて話したら、 君は気づかない様子でこう言ってきた。 「すみません、私の眼は今、見えていません。  申し訳ないのですが、駅員室まで連れて行ってもらえませんか。」 僕は最初何を言っているのか全く分からなかった。だって、 今日一日中一緒にいたのに最後の最後まで様子がおかしい事が わ

          眼球にくちづけを。真田視点7話

          眼球にくちづけを。中野視点8話

          その後、私は転校先の盲学校に通い、卒業した。 高校在学中はドナーの適合があわず、手術をすることはなかった。 でも、正直手術なんてどうでもよかった。 高校を卒業して、盲学校の職員として働かせてもらった。 なかなか普通の会社で働くのは難しいと思っていたし、 働かずに家にいてもいいと親には言われたが、 何かをしていないと、暇に耐えられなかったのだ。 転校しても音楽を聴くのは辞めなかった。純粋に好きになった事と、 彼との思い出が詰まった音楽を捨てきる事は 私にはどうしてもできなかった

          眼球にくちづけを。中野視点8話

          眼球にくちづけを。中野視点7話

          その後、急ピッチで計画を立てて、実行することに決めた。 『川を見たい。』 唐突に、真田君に送ってみた。 『川なんてそこらへんにあるやん。勝手にチャチャっと見てきたら?』 なんて風情のない返事なんだ。 『全く、最近の若い子には風情と言うものがないのかね?  私が言う川はそこらへんの川じゃなくこう、  壮大で見るだけで心が洗われるような川を見たいんだよ。  リバーって感じのやつ。』 うん、いい感じだ。 『大阪でそんな川ある?  パッと思いつく限り淀川くらいしか思い当たらんなぁ。』

          眼球にくちづけを。中野視点7話

          眼球にくちづけを。中野視点6話

          なんでこうなってしまったんだろう。なんとか、家までたどり着いて、 自分の部屋に戻り、今日の出来事を思い返す。 急に昔の話をされて動揺してしまった。 別に隠すような事でもないが、それでも、 病気のせいでこうなったことを悟られるのは絶対に阻止したかった。 最善ではあったけど、悪手だった。 「どん詰まりか。」 変な始まりで、普通の出会いでは無かったけど、 それでもすごく楽しかった。真田君を知っていくことで、 好きにさせるはずだったのに、どんどん私が好きになった。 「やだなぁ。ずっと

          眼球にくちづけを。中野視点6話

          眼球にくちづけを。中野視点5話

          神なんていなかった。 仮に神がいたとするなら、私は嫌がらせしかされてない。 会うことができたなら、全力でドロップキックをかまして、 死ぬほど罵ってやる。 『絶望だよ。もうすべてが終わったんだ。』 彼にそう告げた。主語のない文面にも関わらず、 『やっぱりあかんかった?まぁ、残念やけど人気があるから仕方ないよ。』と、返事がきた。今日は、フェスの一般先行の結果発表だった。 クラスの中にいるときは目立たないように行動することを 決めていたのだが、あまりのショックで1日中頭を抱えていた

          眼球にくちづけを。中野視点5話

          眼球にくちづけを。中野視点4話

          彼が私を好きになるために彼の事を知らなければならない。 手始めに音楽が好きだと聞いてたので、片っ端から音楽を聴き始めた。 と言っても、通学中はもう目だけに頼って移動するのが 怖くなってきているので、耳は常にフリーにしておかなくてはならない。 今まで、音楽に触れる機会が少なかった私は、 意外にもドはまりしてしまった。 音楽には人を勇気づける何かがあるのかもしれない。 彼から教えてもらったアーティストだけではなく、 似たようなバンドであったりを腐るほど聞きまくった。 その中でも私

          眼球にくちづけを。中野視点4話

          眼球にくちづけを。中野視点3話

          自分でも火が吹くほど恥ずかしいセリフをいったと自覚している。 彼も完全に動揺していた。むしろ困惑していた。 でも、放った言葉は口の中には戻ってこないので、 このまま押し切るしかない。 半ば強引にLINEを聞き出し、その場から立ち去った。 時間にして10分ほどのことだったろうが、高校生活が始まって、 あれほどの時間が長く感じた経験したのは初めてだった。 恐らく彼にしても何のことだかさっぱりわからないだろう。 でもきっと真田君は今日の出来事を誰かに話すことはしないだろう。 ここか

          眼球にくちづけを。中野視点3話

          眼球にくちづけを。中野視点2話

          彼の名前は真田というらしい。 周りから真田っちと呼ばれているのでわかった。 一度、気になって観察していたらずっと目で追ってしまう。 別に好きだからと言う訳ではない。私と同じというわけではない。 私と違って周りと迎合しているのに、一線引いて 人生つまらなさそうに見える真田君に少しだけ興味を持った。 病気になって以降、全ての事に興味を失っていたのだが、 何かに興味を持つことは生きる気力になるような気がした。たぶん、 苦でしかなかった学校生活に意味を見出したかっただけなんだと思う。

          眼球にくちづけを。中野視点2話

          眼球にくちづけを。中野視点1話

          私の名前は中野葵。 中学まではごく普通に生きてきた。高校の進学も決まり、採寸を終えて、 届いたばかりの高校の制服に毎日袖を通して、高校に想いを馳せていた。 部活に入って普通に友達をいっぱい作り、恋愛をして、高校生活を謳歌する事しか頭になかった。ある日、視界の端がぼやけている事に気づき、 親に相談して、近所の眼科に行った。 その日に医者から目薬をもらって、さしていたらすぐに治ると思っていた。診察の後、 「ここでは、判断ができないので、  隣町の総合病院で診てもらってください。紹

          眼球にくちづけを。中野視点1話