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僕についてきてくれる?【日仏夫婦のなれそめ-🇦🇺3:オーストラリア縦断ロードジャーニー/キャンベラ〜メルボルン編③】

【概要】
この物語はフランス人の夫と日本人の私がオーストラリアで出会って家族になるまでを描いたお話。出会って3週間で意気投合し5555kmのオーストラリア縦断のロードジャーニーの様子を実際の写真とともにつづるノンフィクション小説です。また、チャプターごとに変わるTOP画のデザインは全て私の手書きです。

【目次】
▼チャプター1:出会い編
▶︎第1弾 最愛の夫の第一印象が最悪だった話
▶︎第2弾 策士なの?天然なの?ねえどっち?
▶︎第3弾 絶対に忘れられない恥ずかしすぎる初めてのキス
▶︎第4弾 当たり前の関係
▶︎第5弾 そうだ!シドニーに行こう

▼チャプター2:ロードジャーニー/シドニー編
▶︎第1弾 ゴールドコースト〜バイロンベイ〜シドニーまでの旅
▶︎第2弾 念願のシドニー到着
▶︎第3弾 ボンダイビーチとおしゃれなランチ
▶︎第4弾 そうだ!キャンベラに行こう

▼チャプター3:ロードジャーニー/キャンベラ・メルボルン〜縦断編
▶︎第1弾 ん?キャンベラって首都だよね。
▶︎第2弾 寒すぎたメルボルン

その日、私達は珍しく別行動だった。
UFC(総合格闘技)でコナー・マックレガーの試合があると言って彼はスポーツバーに昼間からから飛び出していった。私の方はというとフリーランスとして続けていた日本の仕事がさすがに溜まっていたので近くのマクドナルドでせっせと資料作りに励む事にした。

当時私はPRディレクターとしてのテレビ・雑誌担当をしていた。フリーランスとして元々勤めていた会社から遠隔で仕事を頂き細々と続けていたが、職業柄海外での遠隔での作業には正直限界が見えていた。

 久しぶりにパソコンを叩き終わると、ふと日本でのことを思い出した。恋よりキャリアという感じで、休日も返上してバリバリ働き、毎日終電にダッシュしていたあの頃。でも本当は相手がある人の2番目で充実していなかった私生活を見たくなくてわざと仕事に満身していただけだったのような気もする。自分の存在意義を仕事に託していた数年間は様々なスキルは身についたが心はだんだん荒んでいった。
 その後、当時の彼に捨てられ、仕事も辞めることになり、貯めていた貯金を全部使って3ヶ月間ハワイへと飛び立った。初めて自分のためだけに生きたあの時が人生で1番幸せだったなと思いを馳せた。誰かの力を借りなくても自分で自分を幸せにできること。自分を本当の意味で幸せにできるのは自分だけなんだなと悟ったことをふと思い返した。

ーーーまたハワイみたいなあったかいところに行きたいなー。

 そう考えると、ロードジャーニーという大事な旅行中の1日を自分の趣味に当てたいからよろしくねと堂々と言える彼がちょっとカッコよく見えた。マイペースだけど自分で自分のことを幸せにする術を知っている人なんだなと思った。

その時心が決まった。私の居たい場所はここメルボルンではないということ。
家を探し始めていたが、私は暖かいところに行きたいと言おう。シドニーかゴールドコーストがいいかな。彼はなんていうだろうか。。。

新旧の建物が混在しているメルボルンはユニークな街だった。

彼と落ち合うためにスポーツバーへ向かうと、ちょうど全ての試合が終わった後だった。
私の姿を見つけると興奮冷めやまぬ様子で、アイルランド訛りのマックレガー選手の真似をしながらどんな試合だったかを話す彼が子供みたいで可愛かった。が、一向に話が止まらないのでとりあえずチキンレストランで腹ごしらえしながら聞くよと彼を引っ張った。

チキンレストランで注文が終わるとようやくUFCの話が終わった様子だった。そこで話を切り出した。

私「あのさ、これからのことなんだけどさ‥私暖かいところに戻りたいんだよね」
彼「うん。僕もそう思ってた。」

彼も同じように思っているとは知らずびっくりした。彼にとってはメルボルンはなんだかヨーロッパに雰囲気が似ていると感じたらしくオーストラリアにせっかくきているのになんだかときめかないと思ったらしかった。

私「そっか良かった!!シドニーかゴールドコーストどっちがいい‥‥」

と話し始めた私と被るように彼がこう言った。

彼「ねぇ、ケアンズに行かない?」
私「ケ、ケ、ケアンズ!?!?

想像もしなかった彼の提案にさすがの私も大きな声がでた。
 彼は私と出会う前ケアンズにしばらく滞在していた。ケアンズで働いていたレストランで、たいそう気に入られていたらしく辞めた後も戻ってこいと催促の連絡があったらしかった。その日も観戦中連絡があったらしく電話では、切羽詰まった様子で5日後に大きなパーティーのケータリングをすることになったが人手が足りなくて困っている。どうにか戻って来れないかと連絡があったそうだった。

彼「僕がさ、ここまで君を引っ張ってきちゃったから実は責任を感じているんだよね。ケアンズだったら確実に仕事があるし、万が一君が仕事が見つからなくても僕がいるから心配しなくていいよ!」
私「いや、そういうことではなくて…。」

今私たちがいるのはメルボルン・オーストラリアの最南の都市であるに対し、ケアンズはほぼ最北にある都市で距離にして約3000キロも離れている。休まず車を勧めたとしても最短で31時間かかる。何よりオーストラリアを下から上へと縦断する形となる。

彼「5日でケアンズにつかないといけないけど、明日から出発すれば行けると思う。いやなら他の道も考えるけど、どう?僕についてきてくれませんか?」

一緒にたくさん旅をしてきたが、今回に関してはさすがに想像を遥かに超えた提案であったことに間違いはなかった。これまでのロードジャーニで彼が予想を超えたことを言い出すことにはもう慣れてしまっていたので、問題は自分との折り合いをどうつけるかだけということにももう気づいていた。それに乗りかかった船である。そこで降りるという選択肢は1ミリもなかったし何も迷うことはないと思った。頭ではわかるのだ、頭ではわかるのだけど…。すぐ即答は流石に無理だ。

私「えー。でも。えー。でも。うーん。わかったぁあ。泣」
彼「よし、決まり!じゃあホテルに戻って明日チェックアウトする手続きをしに行こう。」
私「ついていきます。。。泣」

嵐のような風が吹き荒れた日だった。それはそれはざわざわした天気だった。まとわりつく髪の毛を振り払いながら、がっしり繋がれた彼の大きな手に導かれながらホテルへと急いだ。

つづく。
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▶︎今回のあとがき
フランス版「新婚さんいらっしゃい」のような番組を見ているときに、司会者が「パートナーの愛を勝ち取るために何をしましたか?」という問いかけをしていました。
テレビの前で考え込むカップルを横目にあなたならなんて答える?と夫に聞いたら、「オーストラリア1周に連れていって愛を勝ち取りましたって答える!」と即答でした。(笑)

引っ張られてついていくと流れで1周することになってしまった。と心のどこかで思っていた私がいたのですが、彼の中では「今度は僕が君をシドニーに連れていく!」っと言ってくれたあの日から彼の中での私への想いはずっと同じだったんだと言うことにずいぶん後になってから気づきました。

考えてみると、ロードジャーニー中ずっと運転するのは彼でしたし、ずっと私を先導して手を導いていろんな景色を見せてくれました。それなのに私ときたら予想外の提案を次々と出す彼に着いていくのが必死で、終いには身勝手な彼に引きづられこんな遠くまで来てしまったと勝手に不安がっていた時さえありました。
ずっと手を握って横にいてくれているのに、終いにはひきづられている気持ちになっていたなんて勘違いにも程がありますよね。いや本当ごめんよ、夫。(笑)
「全て自分のこころがきめる。」と言うのは相田みつをさんの言葉ですが、その通り。自分の心次第で見えている景色が全然違ってみえる事があると思います。
大きな視野を持って、また違う側面でも物事を見れるようになれればどんな事もすぐ合点がついて、いつも心が穏やかなんでしょうね。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

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