デニムを履いた幽霊が教えてくれたこと
この記事は、デザイナーの就活の大変さと、ちょっとした心霊体験と、メンタルの大切さを同時に語る、なんか色々詰め込まれた実話です。怖くないです。
霊感のレの字もない私だが、人生で一度だけ、完全に幽霊を見たことがある。
専門学生の時。私の所属するデザイナー科は、女子が14名、男子はいなかった。女子校のような(そんなキレイなもんじゃ無いけど)、とにかく騒がしいクラスだった。
デザイナー科で過ごす、専門最後の夏。就活真っ盛りだった。
普通の大学生がやる就活の流れは正直知らないので比較することは出来ないのだけど、デザイナーの就活って恐らくめちゃくちゃ大変だと思う。
受ける会社によって多少異なるが、エントリーシートと面接だけでデザイナーの内定を貰えることはほぼ無い。
ポートフォリオ、プレゼンなど、ありとあらゆる手を使って自分が過去にどんな作品を作ってきたか、企業相手にどんなものを作れるか、その能力を審査される。
ポートフォリオを作ることもプレゼンの準備をすることもものすごく時間がかかるというのに、企業によって服のテイストが異なる為に前回の使い回しなんて出来なくて、結局1から全て作らなければいけない。
そしてなおかつ、時期は皆重なる。
何社も受けるとなると、同時に何社分も絵を書いたり作品を作ったりプレゼンの準備をしたりしなければならない。
そして容赦無い課題たち。コンテストに提出するデザイン画を書くことも、講義のレポートも、重なる、重なる。
そして山場の頃には、1週間に3社分の作品提出と学内の課題、プレゼンというバカのスケジュールが出来上がった。
あまりにも無理があったため一つ講義を免除してもらったけれど、それでもほぼ寝る時間は無く、毎日夜の10時までに学校に残って就活用の資料を作っていた。
そんな就活ピークのある夜。
校舎の最上階にある、デッサン室の真横の業務用コピー機で資料を印刷していた。
ー次の日は企業に直接訪問して、企画チームの人たちにプレゼンをするというミッション…
何人企画の人がいるのか知らないけどとりあえず30部ほど資料を刷っておくかー
コピー機から資料が出てくるのを、ひたすら待っていた。
古い校舎だからか電気を付けても薄暗く、都心とは思えない静かな校舎でひたすらコピー機の音だけが聞こえる。
疲れ果てている私は、コピー機から出てくる紙をぼーっと眺めていた。
ふと、何のつもりも無く後ろを振り向いた。見慣れている階段を登る、スラッとしたデニムの男の人の足が見えた。
ーこの時間でもまだ残ってる人いるんだな、頑張ってるのはうちの学科だけじゃないんだ。そりゃそうかー
そう思いながらまたコピー機から出てくる紙を見つめる。ーーーあれ?
ーこの上って…
屋上だよねー
私がいるこのデッサン室のある階は最上階なのだ。この上は屋上。誰も行くことのない、閉鎖されている、屋上。
さっきのは、誰?
疲れ果てて思考停止していた私だが、怖くなった瞬間の動きは早かった。丁度印刷が終わった資料達を掴み取り、早足で階段を駆け下りる。
同時に思い出していた。
新学期に聞いた、先生の話。
「デザイナー科では1学年に1人、
必ず幽霊を見る。」
「ある人は3階の窓から入ってきたと言うし、
ある人は確かに足だけ見えて振り向くと
誰もいなかったと言う。」
「皆、声を揃えて言うの。
その幽霊は、長身の、
デニムを履いている男だと。」
こういうこと???
(これは韓国のイケメン俳優ナム・ジュヒョク)
こんなんしか想像できない。幽霊ってデニム履くんか。え、うける。
毎年見るってことは本当にいるんだろうな。でも見るのは絶対に私じゃないだろうな。だって私には霊感なんてこれっぽっちもないし。ふーん。
この話を聞き流していた私!お前だよ!
今見たのは!間違いなく!!
「デニムを履いた幽霊」だったじゃんか!!!
こうして初めて幽霊を目の当たりにした。
後にも先にも、私はこのデニムを履いた幽霊以外に幽霊を見た事はない。絶対にあれは幽霊。間違いない。
幽霊の存在はずっと信じていたし、本当に怖がっていたけど、心のどこかで私には絶対に見えないものだと思っていた。
だけど、霊感の無いこの私にも、見えてしまった。それは、何故なのか。
就活も落ち着いた頃、幽霊と何度も対面したことのある友達と会った。
その友達は中学生の時に金縛りにあったり、何度も心霊現象に見舞われていたと以前に聞いたことがあった。友達のお姉ちゃんも何度も霊に取り憑かれているし、そんな孫を見兼ねたお婆ちゃんはお祓いができるという。
私にとって、こんなに霊に近い友達はこの子しかいない。一通り話すと、彼女は言った。
「私が頻繁に幽霊見てた時は、親と関係悪過ぎて精神壊れてた時だよ」
「最近だと彼氏と別れた後1人で帰ったら、婆ちゃんに『あんたの後ろにいるの誰?』って言われてお祓いしてもらったよ」
「hono、その時すごく疲れてたでしょ?」
「幽霊っていうのはね、心が病んでる時とか、精神壊れてる時に距離が近づくんだよ。」
😦😦😦
[結論]
結局、メンタルが1番大事。
理由:心の健康が保てていないと
幽霊とお近付きになってしまう為。
〜オマケ〜
デニムの幽霊のを見た次の日。
美術解剖学という授業で、あのコピー機の隣にあるデッサン室に行くといつも無い人体模型が置かれていた。今日は模型を使って授業をするらしい。
デッサンの先生が言う。
「この人体模型は本当に亡くなった方の骨なのよ、本物なの。」
「結構スタイルいいわよね、手足も長いし。」
「ちなみにこの方、女性だと思う?男性だと思う?」
頭の中で、どぶろっくが歌い出す。
「正解は、男性。」
デニムの幽霊の正体、貴方ですか???
心の中で人体模型に問いかけた。
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