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松下幸之助と『経営の技法』#38

3/24の金言
 世の中のさまざまなものを本当に生かし切る。それができるのは私たち人間だけである。

3/24の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。
 よりよい製品をつくり出したいという思いにかけては、坂田三吉(伝説の棋士)に負けないほどの真剣さをもっていた。お客様、従業員のためにも、よりよい製品をつくり、立派に役立って生きるようにするのが責任者の務めだ。
 将棋の駒、製品に限らず、一つのものを生かして活用し、生活を向上できるのは人間だけ。
 豊かな生活に慣れてしまって、ものを本当に生かす努力を怠り、多くのものを泣かしているのではないか。

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 経営者の持つべき意識としてみると、いわゆる「三方良し」(売り手良し、買い手良し、世間良し)の発想が見て取れます。すなわち、自分だけでなく、客や社会にとって良いことが、商売の基本である、という発想です。
 これは、事業の永続性(サステナビリティ―)に関わる問題で、食品などの品質偽装問題に見られるように、社会に受け入れられないと事業継続すらできないことになるので、投資家から「儲ける」ことをミッションとされた経営者は、事業が社会に受け入れられるようにすることが必要となるのです。もちろん、これは経営者個人の「思い」に終わらせては駄目で、会社全体でそれを実践できるようにすることが内部統制の問題として必要となるのです。
 すなわち、社会に受け入れられ、社会に貢献する製品をつくり出すことが、会社事業のリスク管理に役立ち、経営上も利益につながるのです。
 さらに、ここでは製品などのものの活用について、特に客・社会の問題として、ものを活用する努力の必要性を説いています。
 顧客の際限のない要求が、一方で様々な技術やサービスの向上の原動力になる一方で、便利すぎることによる過剰なクレームや依存症、基礎知識の低下、等の現代の社会問題を、予測していたのかもしれません。
 そして、これをさらに深読みすると、単に便利なだけでなく、本当に社会に役立つものを社会に供給する意識が必要になる、と考えることもできるでしょう。長い将来を見据えたビジネスが必要なのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 ここでは、投資家の社会的な責任の問題にもかかわってくるように思われます。
 すなわち、短期的な成果に執着し、中長期的にみて社会に貢献する意識のない経営者を選ぶべきでなく、しかも、投資家自身の問題として、成果を急がせない行動や判断が求められます。
 この問題は、成果を急ぐ経営による事業基盤の脆弱化や競争力の低下など、行き過ぎた投資家の要求がもたらす問題そのものでもあります。
 会社の事業自体も、社会に役立つように活用する、という視点が、投資家にも求められていると言えるのです。

3.おわりに
 松下幸之助氏の言葉には、自分が良いものをつくろうとしているのだから、客や世の中もそれを受け止めて欲しい、という気持ちが込められているように思います。
 どう思いますか?

※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。


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