松下幸之助と『経営の技法』#14
「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。
なお、テキストに2月29日の金言もあるので、合わせて検討してしまいます(来年を待たず)。
1.2/29の金言
成果は大事だが、成果を生む過程、その背景といったものをもっと重視したい。
2.2/29の概要
松下幸之助氏は、以下のように話しています。
「ローマは一日にしてならず」というように、なにものにもそれが今日ここにあるということの裏には、それぞれの生い立ち、経過、事情などがあり、その背景、道程を無視したり軽視したりしてはいけない。
成果だけでなく、その過程も重視することで、自然な謙虚さが生まれ、軽率な判断も、これを避けることができるようになる。
3.内部統制(下の正三角形)の問題
社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
真っ先に思い浮かぶのは、PDCAサイクルです。ここでのCがチェックであり、リスク管理上、極めて重要なプロセスです。すなわち、成功にしろ失敗にしろ、その原因を分析することは、改善やリスクコントロールのための重要な出発点なのです。
経営の問題として見ても、他社の成功や失敗を分析することは、自社の経営に役立つことが沢山あります。
ここで松下幸之助氏は、謙虚さや軽率な判断の回避、という個人の問題であるような表現を用いていますが、これを組織に置き換えると、成功体験で柔軟性や感性を失わないこと、デュープロセスを尽くした判断や、広い視野での経営判断ができること、等で表現できそうです。
そして、もちろんこの言葉は、経営者自身の、経営者としての資質にも関わってきます。本来、この点の方が主眼なのでしょうが、物事の背景に思いを馳せることを、人格的な謙虚さと、実際の言動としての軽率な判断の回避、という言葉で表現しています。
しかし、自省が効き、慎重に物事を進めることは、ここぞという場面で果敢にチャレンジする、という経営の基礎となるべき素養です。この意味で、経営者自身の資質の問題について言及しているのです。
4.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
次に、ガバナンス上のコントロールとして、株主による「適切な」コントロールも期待されるべきです。
まず、投資家として経営者のどのような点を見るべきか、というポイントになります。自惚れ屋で軽率な人は絶対にダメ、ということになります。
さらに、経営者をチェックして少しでも影響を及ぼそうとする場合には、例えば社外取締役などを通して、経営者が自社他社の様々な事例から学び、慎重に経営判断していくように誘導することが考えられます。そして、このようなチェックは、会社の経営判断がデュープロセスを満たしているかどうか、というチェックに他なりませんから、リスク管理体制を強化することにもなるのです。
5.おわりに
松下幸之助氏の金言の中に、人としての生きざまに関するものが多くありますが、ここで見たように、会社組織の問題に置き換えてみると、とても興味深い分析ができるように思います。
どう思いますか?
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