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エッセイのようなもの

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子どもたちのこと、思い出ばなし、自分のことなどなど。
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2022年11月の記事一覧

ねこのウラン

ねこのウラン

 実家には、ねこのウランがいる。10年以上前にやってきた。

 末の妹の義兄が、名古屋の栄の路地裏で鳴いていたのを保護したそうで、貰い手が見つからず、まわりまわって、わたしの母の元へやってきたのだ。

 手のひらに乗るくらいの大きさだった。愛ねこを亡くして、元気がなかった母は、「もう、ねこは飼うまい」と思っていたそうだが、これも何かの縁だろうと受け入れた。

 ウランはべっ甲ねこ※1のメス。体重は

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I like soccer.

I like soccer.

 秋になり、16才になった息子が動き出した。

 この半年余り、何にも囚われず、時間にも追われず、毎日を自由に過ごしてきた。息子はどんどん元気になっている。じっくりと自分と向き合い、自己理解も深まってきたようだ。

 自分とは、どういう人間で、何が好きで、何にワクワクするのか…

 夏にサッカーをスタジアム観戦し、サッカー熱がアップ。観戦するだけでなく、プレイもしたくなってきたらしい。

 暑い夏

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チーちゃん

 近所の病院に、インフルエンザの予防接種に来ている。病院は新しく建て替えられ、新しい先生が診察される。小児気管支喘息だったわたしは、先代の先生によくお世話になった。

 待合室でぼんやりするうちに、ふと思い出がよみがえってきた。

「チーちゃん、今日はどうしたの?」

 にこにこと四角い顔の先生がわたしに呼びかける。先生は、とても優しかったけれど、必ずわたしの名前を呼び間違えるのだ。

 初めは、

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東海豪雨の夜

東海豪雨の夜

 2000年9月11日の夜。

 仕事を終えてうちに帰る途中だったわたしは、名古屋駅で途方に暮れていた。

 大雨で、電車が止まってしまったのだ。

 とりあえず、JR名古屋駅構内に向かう。雨に濡れないし、広いし、どこかには座れるかもしれない。情報も手に入りやすいはずだ。

 駅構内は人でごった返している。

 座れる場所を探しつつ、食べ物調達を考えるが、みな考えることは一緒。食べ物は軒並み売り切

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人参は大きめで

人参は大きめで

 母が人参嫌いだということを知ったのは、中学時代だった。

 中学2年の春、夏のキャンプ練習のために、木曽川の河原まで歩き、飯盒炊飯とカレー作りをする活動があった。往復15キロを歩く遠足。足が痛くなったが、勉強よりは楽しい。

 男子は火起こしと飯盒炊飯を担当、女子はカレー担当と決まっていて、わたしは人参を切る係だった。男女合わせて8人の班。

 日頃、お手伝いをしないわたしは、念のため母の指導の

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