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エッセイ

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《平成享年六月四十九日》(2019)

《平成享年六月四十九日》(2019)



かれらを見送って四十九日が経った
私は棺桶に入り損なったので髪の毛をあっちに置いてきた

孤独にかしづいて雨上がりの青を洗うとき私は必ず一人になる
スクランブル交差点を歩く歩幅もきっともう忘れてしまったからせめて一人分の傘を広げていた
けれどこうやって手を放したから
ことばを集めながら濡れそぼって愛を畳んでいる

幼稚園の先生が書く私の名前がこの世でいっとうきれいな文字だった
あの頃からずっと

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そのダサいネイルでしぬのか

そのダサいネイルでしぬのか

負けん気が強いと言われる。
10年来の親友は私を「肉を切らせて骨を断つ女」と例えた。
膝を叩いてなるほどと言ったが厳密には「肉を切られるくらいなら自ら骨を断つ女」の方がより正確かもしれない。
どちらにせよ字面の上ではともに深手を負って死んでいるのは確かである。

私は前日にその翌日着る服を決めるということがどうしてもできない。なのでやらない。
その当日の気持ち(前の晩の気分で代替することはできな

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