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うだ すいか
2021年2月24日 01:33
「ものを作り出すことが才能であるとしたら、ぼくはとうにその資格を喪っていると思う」のだと、手遊びに角砂糖を転がしながら彼は言った。闇いろのコーヒーが甘く濁りながら温度を無くしていく。声色は、酷く退屈そうだった。乱雑に伸ばした前髪が遮って、表情ばかり伺えなかった。何も言えないのをいいことに、こう続く。「違うね、最初から、持ち合わせてすらいなかったんだよ。」何も言えないのは無責任だと思った。それでも、
2020年7月23日 00:30
音楽も文学も、救いでこそあれど味方ではなかった。午前4時、空が徐々に白んでゆく。それを、黙って見ていた。夜が明ける。最後の夜が明ける。振り返ると柔く東雲の風が撫ぜて、藤色の長い髪をゆら、と揺らした。心臓が頼りなく脈を打つ。表情の見えない顔は、伺っても覗かなかった。何も言わないで、何も聞きたくないから、それも多分お互い様だ。BPM80。確かないのちだった。歌詞をつけるなら何が似合うだろう、とぼん