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シグ
2021年5月22日 01:17
突然だが、私の学校には群青先生がいる。何を言っているのか分からないと思うのだけれど、名前の破壊力は大いにあると思う。 蓋を開けてみれば、ただ青いシャツをいつも着ている、痩せ型の、無精髭を生やした30歳の先生なのだが、どうも少し変わっている。 いつも理科室にいて、生徒が居ようがお構い無しに、悠々とタバコを吸って、フラスコで沸かしたインスタントコーヒーを嗜む。道徳的には悪いのだろうけども、
2021年5月23日 02:57
陽だまりに、一人。忙しなく会社に飼われる日々が続き、一人黄昏ることが多くなった 。 飄々と流れる時間を、静かな神社で持て余して、昼ごはんの惣菜は箸が止まっていた。 この時間が終われば、、そんなことを考えていたら不意に涙が流れてきて、「このまま死んでしまおうか」などと、浅はかな事を考えてしまう。 ふと、顔をあげると、赤いクレマチスの花が咲いていた。春の陽気をスポットライトのごとく浴び
2021年5月27日 19:07
俺が住んでいる町は、裏路地が多々ある。治安もそんなに良くはねえ。 ひとたび裏に入ろうものなら、容赦なく額に風穴が空く。16歳まで生きたなら、銃口のひとつや、ふたつくらい見飽きてるってもんだ。 だが、住めば都なんてのはよく言ったもので、案外ここも悪かねぇ。治安の悪さに目を瞑れば、物価も安いし、飯も美味い、おまけに治安の悪さで家賃も安いときた。俺みたいなゴロツキには、心地いいくらいある。
2021年5月19日 15:32
青天の霹靂。雲ひとつない青空を見て、私は思うことがある。 「死ぬには今日がいい」 と。 産まれ落ちて、生きるレールを引かれて、反抗することも、あまつさえ提案さえ出来ずに漠然と生きてきた。何か功績を出したとしても、他人に自慢として使われた気がして。逆に残せなければ罵倒される時もあった。 愛されていないのか、そう考える時もあった。 いいえ。 愛されているのでしょう。
2021年5月20日 15:09
忙しなく動く街並みを見下ろして、だだっ広い屋上で、1人白煙をこぼす。飄々と流れるタバコの煙。頭を垂れて手すりに寄りかかった。 上京して3年の月日が流れた。目まぐるしくすぎる日々に引きずられて、あれよあれよとハタチになった。屈託のない笑顔を煌めかせていたあの頃はもうなくて。大人になった振りをして、笑うことも忘れていた。 街に残る残雪は、残り少ない。僕の心も、あと幾ばく。残雪なのだろうな
2021年5月21日 16:15
首筋に垂るる一滴の汗、青ざめたその唇、生にしがみついた瞳、畏怖を含む荒い吐息。 口に噛ませたタオルからは、血がにじみでている。よほどかみ締めているのだろう。 この命は、今日終わる。 首筋に手を当てると、脈打つ鼓動がまるで生きたいと叫ぶように鳴っている。死に直面した人の体は、正直に叫ぶ。 命の終点は、真夏の夜の花火のように、一瞬の輝きで、望月に頭を垂れるすすきのように、かくも美
2021年5月11日 23:12
10月の終わり、僕は黒いスーツに身を包んで、肌寒いからコートを羽織って、久しぶりに引っ張り出した革靴を履いている。 雨の降る葬儀場の石畳は、しっとりと濡れていて、反射した参列者が歪んで見える。僕は、その道をパシャパシャと歩いて行く。 4年付き合った彼女が死んだ。 肌寒くなった朝に、冷たくなって死んだ。「この度はお悔やみ申し上げます。」 受付を済ませて、テンプレ
2021年5月14日 10:40
天気予報は雨で、窓を叩くような雨の音が店内に響き、テンポのいいボサノバの音色は、雨音を中和するようになっている。 アンニュイな私は、今日もお決まりの席に座り、コーヒーをすする。 苦い 琥珀色で満たされた白いマグカップは、まだ二口しか口をつけていない。 遅れてやってきた店員が、すいませんと角砂糖が入った瓶を持ってきた。 私には、ルールがある。角砂糖を3つ、必ずコーヒ