<強い女>の描き方!!|「好色元禄㊙物語」に学ぶテクニック(2)
※引き続き、「好色元禄㊙物語」を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。
【鉄則】物語冒頭には、主要キャラの人となりが伝わるシーンを盛り込むべし
それが小説であれマンガであれアニメであれ、そして映画であれ、物語の冒頭には【主要キャラの人となりを鑑賞者に伝える】という重要な使命が課されています。
だって、主要キャラがどのような人物なのかいつまで経っても把握できないようでは、鑑賞者はうんざりしてしまいますからね。
したがって、物語の冒頭には【主要キャラの人となりがパッと伝わる象徴的なシーン】を盛り込んでやる必要がある。
「彼女は<強い女>ですよ!」と鑑賞者に伝わるシーンを描こう
で!
本作の主人公は、お夏。
彼女はしたたかで奔放な<強い女>です。
本記事では、本作の冒頭(インサイティング・インシデント以前)に配置された【お夏が<強い女>であることがパッと伝わってくるシーン】に注目します。
みなさんが、ご自身の作品に<強い女>を登場させる時の参考になればと思います。
【シーン①】ピンチの時に、逆ギレしてみせる
さて……お夏は極めて貧しい家の出身です。
彼女は口を糊するために、寺の住職の妾をしていた。
しかしそれと並行して、一発逆転の玉の輿を狙って裕福な呉服屋の若旦那に接近。体を与え、手玉に取り、やがて「結婚しよう」という言質を取ることに成功します。
お夏は喜びます。やった!ついに玉の輿だ!生臭坊主の妾なぞさっさと辞めてしまおう!
とはいえ、住職はお夏にぞっこんです。「辞めます」「はい、そうですか」とはいかないでしょう。
そこでお夏は一計を案じた。そう、お夏は妊娠したふりをしたのです。
まさか寺の中で赤ん坊を産み育てることはできません。かくして、住職は泣く泣くお夏を手放す決意をした。お夏は心の中で舌を出す。
がしかし、住職だってバカではない。
別れの段になって「そのややこ、ホンマ、わしのタネやろな?」と問いました。
お夏、大ピンチ!
……という場面なのですが、ここからが面白いんですよ。
我らがお夏は一切物怖じすることなく、なんと逆ギレしてみせる!
「何言わはるんです、和尚はん。あれほど尽くしたうちを疑うんどすか!?」「うち、悔しい!」「和尚はんのタネである証拠に、お寺でややこ産ませてもらいます!」。
これには住職も大慌てです「わかったわかった!」。猫なで声になって「疑うて悪かった。機嫌直して、なっ」。
お夏は渋々といった感じで頷く「ほな、いて参じます」。
大ピンチに逆ギレしてみせる!この肝っ玉よ!
【シーン②】ピンチの時に、開き直ってみせる
さて、【シーン①】の後、お夏は実家に戻りました。
お夏の父や妹(お七)は、お夏の下っ腹が膨らんでいるのに気づき、「妊娠したのか!?」と驚きます。
しかしお夏は「孕み腹こしらえるのも楽じゃないわ!」と言って、着物の下からザルを取り出した。腹が膨らんでいるように見せるために、ザルを仕込んでいたのです。
そして、「あんな生臭のタネ仕込まれるようなヘマ、すると思うてんのか?」と鼻で笑う。
と、ここでお夏はハッとします。
しまった!荷物持ちの小坊主(西鶏)を家の前で待機させたままだった!一部始終を見られてしまった!
お夏は慌てて玄関へ。そして「お前……見たな?」。
すると西鶏は能天気に「へぇ。ザルの下の真っ白い肌の色艶まで拝ませていただきました」。
しかし西鶏は続けた「心配無用。決して口外しませんよ」。
……で、ですね。これに対するお夏の態度がすごいんですよ。
「あー、よかった」とホッとするかと思いきや、彼女はそんな小物ではない!
お夏は、なんと西鶏に啖呵を切った「そうやない。『女1人生きてくからにはお釈迦さんかて騙します!』。そない、あのクソ坊主に伝えといて!」。そして踵を返し、家の中に戻った。
残された西鶏は「あー、怖。おなごは怖い……」とぼやきます。
【シーン③】言動にテンポが感じられ、小気味いい
ところで……お七は既婚者です。
彼女の夫は真面目ながら、うだつのあがらぬ男。自分の店を持とうと努力するものの、どうにも報われない。
【シーン②】から数時間後、夜。
お夏が、お七に言いました「見限るんやったらいまのうちやで」「女は己を高ぅ売らなきゃ損や」「あんな男とくっついてたら、しまいに食い物にされてしまうで」。
で、ここからがカッコいいんですよ!
お夏の足に蚊が止まった。お夏はそれをピシャリと叩き潰して、ズバっと一言「黙ってたらとことん血ぃ吸われるわ」。
ピシャリからのズバッ!
嗚呼、このテンポのよさ!小気味よくてじつに格好いい!
まとめ
以上をまとめると、
・1:ピンチの時に、逆ギレしてみせる
・2:ピンチの時に、開き直ってみせる
・3:言動にテンポが感じられ、小気味いい
……ですね。
物語冒頭にこうしたシーンを盛り込んでやると、鑑賞者・読者は「おおっ!これは<強い女>だ!」と理解し、さらに「カッコいいな♥」と好意を抱いてくれるはずです。
作中に<強い女>を登場させる時には、ぜひ参考にしてみてくださいねー!!
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