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これもまた1つのシンデレラストーリー!!|『セックス・アンド・マネー』(7)

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テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「セックス・アンド・マネー」に登場する「オリビアの物語」をベースに新しい物語を妄想します。


※【参考】「セックス・アンド・マネー」の作品概要などはこちら


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。「セックス・アンド・マネー」は、40代女性のリアルな日常を描いた群像劇です。

嘉村 ええ。

三葉 そして、「群像劇」というからには作中に複数の物語が登場するのですが……その内の1つが「オリビアというキャラにまつわる物語」。今回は、この「オリビアの物語」のストーリー構造を利用して、新しい物語をアレコレ考えてみましょう!

嘉村 承知しました。

三葉 まずは、「オリビアの物語」の概要を振り返ります。


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三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。


案①


三葉 さて、以上を踏まえて「『オリビアの物語』をリスペクトした物語案①」ですが……。

嘉村 はい。

三葉 「オリビアの物語」を日本の女子大生に当てはめてみましょう。すなわち……「女子大生の恋愛サバイバル物語」です。


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嘉村 ほぉ!

三葉 まずは、「オリビアの物語」と比較してみましょう。


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三葉 ストーリーをご紹介しましょう。……主人公は、女子大生です。大学に入学し、彼女は驚愕した。何だ、この恋愛至上主義は!「恋人がいなければ人にあらず」という風潮は!

嘉村 ほぉ。

三葉 主人公は、高校時代マンガ同好会に所属し、オタク活動に専心していました。オタク仲間とオタクトークで盛り上がるのが大好きだった。「大学でもオタク仲間を見つけるんだ!バイト代を貯めて聖地巡礼をしたり、機会があればコミケにも出展しちゃおうかしらん♡」なんて思っていた。ところが……嗚呼!私がオタク活動に没頭している間に、世の中こんなことになっていたなんて!知らなかった!大学のキャンパスが戦場だったとは!そう、ここでは誰もが虎だった。素敵な恋人を得るべく虎視眈々としていた。

嘉村 ははぁ……。

三葉 入学して1か月、そして2か月経つ内に、多くの男女が結ばれ、キャンパスは桃色に染まった。では、我らが主人公は?……彼女は出遅れた。仰天している内に時が過ぎ、気づけばあの陰キャにも、あのデブスにも恋人がいると言う。これはいかん!主人公は焦る。私も……私も恋人がほしい!!

嘉村 なるほど。

三葉 とは言え、バリバリのオタク街道をひた走ってきた主人公です。いまだ男性と交際した経験はない。「恋人がほしい」と言っても、一体何をどうすればいいのかわからない。

嘉村 ふむふむ。

三葉 彼女は、高校時代のオタク友だちに相談してみる。するとオタク友だちは、「サークルに入るべし!できる限り、華やかで浮ついたサークルに入るべし!恋愛素人のきみには辛い環境だろうが、それが恋人獲得への早道である!」。主人公は膝を打つ。なるほど。卓見である。彼女は間髪入れず、オールラウンドサークルに入る。

嘉村 オールラウンドサークルと言うと……「夏は海水浴とテニス、冬はスキー。土曜日はBBQで、長期休暇には旅行。そして年中無休で酒を飲む」という、あのサークルですね。

三葉 ええ、そのサークルです。

嘉村 なるほど……オタク一筋の主人公にしては、随分冒険しましたねぇ。

三葉 まぁ、それだけ恋人がほしかったということですよ。何しろ、「独り者は人にあらず」の世界ですかね。

嘉村 ふーむ。

三葉 サークルに加入した主人公は、オドオドしながらも必死に食らいつき、やがて1人の先輩と親しくなります。なかなかのイケメンで、高身長。爽やかな笑顔がまぶしい。女性の扱いにも慣れている。主人公の心臓はバクバクです「あわわわわ。メッ、メッチャ歯が白い……カッ、カッコいい……」。

嘉村 何だか嫌な予感がしますね。上手くいきすぎていると言うか……。

三葉 そうですね。世の中そう上手くいくものではありません。じつは相手の男はサークルきってのプレイボーイ。サークル内では、「あーあ。次の犠牲者はあの子か。まったくアイツも女好きだなぁ」なんて噂されていた。

嘉村 やっぱり……。

三葉 しかし、いまや主人公は先輩にぞっこんです。すっかり恋してしまった。恋は盲目。先輩の虜です。かくしてある日の飲み会後、主人公はお持ち帰りされる。

嘉村 あー……。

三葉 そして、間もなく捨てられる。

嘉村 うーん……。

三葉 主人公はショックを受ける。呆然とする。少し泣いてみる。サークルの良心的な面々が集まり、励ましてくれる。彼らは、「あんな男、別れて正解だよ!」「そうそう。事故に遭ったと思って忘れちゃいな!」と口々に先輩をけなす。しかし……しかし、主人公は先輩を嫌いになれない。忘れられない。キャンパスでは、いつも先輩を探してしまう。見つければ目で追ってしまう。

嘉村 初めての相手ですからね。気持ちはわかりますが……悪い男に引っかかってしまいましたねぇ……。

三葉 しばらくして、主人公は例の高校時代のオタク友だちに会う。事情を聞いたオタク友だちは、「新しいことを始めるのがよかろう。気分一新だ!」。なるほど。もっともである。いつまでも塞ぎ込んでいても仕方がない。主人公は、バイトに挑戦してみる。

嘉村 ふむふむ。

三葉 そしてアレコレあって同僚の青年と親しくなり、やがて青年から愛を告白される。主人公はOKします。あの先輩と比べれば……まぁ、垢抜けていない。格別イケメンではないし、ガキ臭いところもある。女の扱いにも慣れていないようだ。しかし、悪い人ではない。一緒にいて楽しい。それに……ぶっちゃけた話、「これでやっと私にも恋人ができる」という安堵の気持ちもあった。

嘉村 ふーむ……。

三葉 ところが付き合い出して間もなく、青年の悪いところが目に入るようになる。想像以上にガキ臭い。些細なことでムッとする。そしてそれが態度に出る。また、デート中に他の女性を目で追うのも気になる。一度もごちそうしてくれないのも、どうなのだろう……。

嘉村 どうも、この主人公は男運が悪いようですねぇ。

三葉 しかし、せっかくできた彼氏である。主人公はぐっと堪える。とは言え、我慢にも限界がある。やがて青年の浮気が明らかになり、主人公の堪忍袋の緒が切れる。

嘉村 ふむふむ。

三葉 かくして、主人公は独り者に逆戻りした。彼女は疲れ果てていた。恋なんて虚しいものだと思う。恋のバカヤローである。例のオタク友だちに会う。オタク友だちは黙って話を聞くと、槇原敬之さんの「もう恋なんてしない」を口ずさみ始めた。

嘉村 ふむ。

三葉 そんなある日……彼女はひょんなことから、同じゼミの同級生(以下、Aくん)と言葉を交わすようになります。Aくんはデブで、その上ブサイク。いつも貧乏くさい格好をしている。また、牛乳瓶の底のようなメガネには、「いつの時代の人間だよ!」と思わずツッコミたくなる。要するに、底辺も底辺、キャンパスのド底辺を這うようにして生きている男子学生です。

嘉村 ほぉ……。

三葉 そんなどうしようもない底辺男ですが……しかし、主人公は彼と親しくなる。そもそもが主人公だってグズなのです。無理に背伸びして大学デビューを飾ろうとしただけで、本当はAくんの同類なのです。恋人を作ろうと焦り、そして疲れ果てた主人公には、グズであることを隠そうともしないAくんが好ましく見えた。「この人の前ではありのままでいられる」と思うと、楽だった。

嘉村 なるほど。

三葉 2人はぐんぐん距離を縮め、やがてキスをするのですが……その時、Aくんの分厚いメガネが落ちる。初めて彼の素顔を見た主人公は言葉を失う。嗚呼、何ということか!Aくんは驚くほどのイケメンだったのです。

嘉村 古典的な少女マンガ風の展開ですね。

三葉 さらに……初めて彼の実家を訪問した主人公は息を飲む。嗚呼、何ということか!Aくんは、大富豪の1人息子だったのです。

嘉村 ベタベタな展開ですねぇ……。

三葉 Aくんは、照れくさそうに言う「『資産家だからこそ、学生の内は吝嗇家であるべし』というのが父の教育方針なんだ」。主人公は微笑む「素晴らしいお父様だと思うわ」。こうして主人公は奇跡の大逆転を遂げ、キャンパスで最高の勝ち組になったのでした。……で、おしまいです。


案②


嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。

三葉 「案②」では、「オリビアの物語」を中年のゲイ男性に当てはめてみましょう。すなわち……「中年ゲイの恋愛サバイバル物語」です。


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嘉村 今度はゲイですか!

三葉 基本的なストーリーの流れは「オリビアの物語」や「案①」同様ですが……「案②」は同性愛者の物語。同性愛者は、異性愛者よりも数が少ない。つまり、パートナーと出会う機会が限られている。それだけ「パートナーを巡るサバイバル」は激しいものになるでしょう。

嘉村 ふむふむ。

三葉 まずは、「オリビアの物語」との比較表をご覧ください。


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三葉 主人公は、40代半ばのオッサン。彼はゲイで、そして負け組です。すなわち、彼には恋人がいない。10~20代の頃はそれなりにモテたものの、40代に入ってからはすっかり浮いた話がなくなった。人肌が恋しくて堪らない。また、経済的な余裕もない。つまり……彼はラブにも、マネーにも飢えていた。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて、ある日のことです。彼は、昔付き合っていた男とばったり再会する。「やっぱり素敵な人だ……」とうっとりするものの、聞けば相手には一生を共にすると誓い合ったパートナーがいると言う。彼はショックを受け、ストーカーと化す。

嘉村 ははぁ……。

三葉 そんな彼を見て、行きつけのバーのママが溜息をつく。ちなみにこのママというのもゲイですが……「止めなさいよ。みっともない」「でも……」「でもも、ヘチマもありません!」「ううっ……」。ママは優しく「新しい恋を見つけなさいな」。主人公はママの紹介で1人の男性と知り合い、いい雰囲気になる。間もなく2人は恋愛関係に発展します。

嘉村 ふむ。

三葉 相手の男は、主人公の理想のタイプとはだいぶ違っていた。顔もアレだし、性格もアレだし、そして体の相性もアレだし……。「でも」と主人公は思う。「ざっくばらんに言って、いまのオレに選り好みする余裕はない。贅沢は言っていられないのだ。もう寂しいのは嫌だ。1人にはなりたくない!」。

嘉村 なるほど。

三葉 とは言え……我慢にも限度があります。やがて性格の不一致に耐え切れなくなり、彼らは破局する。

嘉村 ふーむ。

三葉 主人公は、疲れきっていた。人生に絶望していた。嗚呼、オレの人生!……そんな彼の前に1人の男が現れます。一見するとクズ野郎。ブスでデブでハゲで、しかも無職だと言う。社会の底辺です。しかし疲れ果てた主人公には、そんな彼が心地よかった。この人の前なら無理せず、飾らず、背伸びせず、ありのままの自分でいられると思った。そして2人は急接近する。

嘉村 ふむふむ。読めましたよ。つまり……一見社会の底辺にしか見えぬその男が、じつは大金持ち。かくして主人公は大逆転を遂げたのでした……という展開ですね!

三葉 ええ、その通りです。ただし、「オリビアの物語」や「案①」同様に「彼は親の財産を相続しており、大金持ちなのでした」では芸がないので……もっと突拍子もない結末にしてみましょう。

嘉村 ほぉ……と言うと?

三葉 じつは彼は、某国の王家の血を引いており、次期国王に就任することが内定していた。かくして主人公は、女王になったのでした。……で、おしまいです。

嘉村 まさにシンデレラストーリーですね。

三葉 以上、「『オリビアの物語』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


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 「セックス・アンド・マネー」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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