「獲得→再喪失」の物語は、心を揺さぶるぜ!!|『無頼より 大幹部』に学ぶテクニック
名作映画を研究して、創作に活かそう!
本記事では、「無頼より 大幹部」に【「獲得→再喪失」の物語】を学びます。
※「無頼より 大幹部」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。
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構造に注目!!
本記事では、映画「無頼より 大幹部」の構造に注目します。
これが、じつによくできているのです!
【構造①】五郎は「孤独」
本作の主人公は、五郎。
物語冒頭、彼は「孤独」です。
・1:五郎は早くに家族を失い、ダークサイドに堕ちた。そして10歳くらいで鑑別所に入りました
・2:その後、五郎はヤクザになりました。しかし彼は客分。いずれの組にも正式に所属していません
・3:さらに服役中、恋人だった女が別の男と結婚してしまいます
つまり五郎は、「1:一般社会」からも「2:ヤクザの世界」からもはみ出した存在であり、さらに「3:心を許した人」から捨てられてしまった……ズバリ「孤独」なのです。
【構造②】五郎が「家族」を得る
ところが、映画開始から13分15秒経ったあたりから、雰囲気が変わり始めます。
まず、鈴木、そして猛夫というキャラが登場する。
2人は、五郎が客分として世話になっている水原組の若手組員です。
「人斬り五郎」という異名を持つ五郎に尊敬の念を抱いており、「兄貴、兄貴!」と嬉しそうに五郎につき従う。
続いて、雪子が登場します。
雪子は、チンピラに絡まれていたところを五郎に助けられました。そしてそれ以来、五郎に首っ丈です。
五郎は「オレはヤクザだぜ」「オレは素人娘には手を出さねぇんだ」と言って追い払おうとする。しかし、雪子は離れません。それどころか頼んでもいないのに食事を作り、「ずっと傍に置いてください!」と懇願する。
五郎は困惑する……ものの、次第に雪子に惹かれていきます。
つまり、この3人の登場により、五郎は「孤独」から抜け出した。
3人は、五郎にとって「家族」のような大切な存在なのです。
【構造③】五郎が「家族」を失い、再び「孤独」になる
幼い頃から恵まれず、「孤独」だった五郎。そんな彼に「家族」ができた!「五郎、本当によかったねぇ!」と私たち鑑賞者も嬉しくなってくるシーンです。
しかし、物語はまだ終わりません。というか、ここからが本番です。
・1:まずは、鈴木が殺される
・2:次いで、猛夫も殺される
・3:さらに、杉山(五郎の鑑別所時代の先輩)も殺される
犯人は、いずれも上野組(水原組と敵対する組)の組員です。
・4:五郎は激昂する
・5:五郎は、愛する雪子が抗争に巻き込まれるのを防ぐべく、嘘をつき、彼女を旅に出しました
・6:五郎は、たった1人で上野組に殴り込みをかけた。そしてケガを負いつつも、どうにか上野組の組長をブスリと一刺ししてやった
……で、物語は幕を閉じます。
つまり五郎は、物語前半で手に入れた「家族」をすべて失い、再び「孤独」に戻ってしまうのです。
本作は、「【獲得→再喪失】の物語」である
以上ご紹介してきたストーリーをまとめると……
・1:五郎は「孤独」
・2:五郎が「家族(鈴木、猛夫、雪子)」を得る
・3:五郎が「家族」を失い、再び「孤独」になる
つまり、「【獲得→再喪失】の物語」と整理できるでしょう。
【「獲得→再喪失」の物語】は、心を揺さぶる!
さて……以下の「タイプA」と「タイプB」、どちらの方が鑑賞者・読者の心を揺さぶる物語だと思いますか?
答えは……「タイプB」!
間違いなく、「タイプB」の方が心を揺さぶります。
なぜか?
「タイプB」の方が、「感情変化」が大きいからです。
つまり、単なる【「喪失」の物語】よりも【「獲得 → 再喪失」の物語】の方が心を揺さぶるというわけです。
【「喪失 → 再獲得」の物語】も、やっぱり心を揺さぶる!
本作は、「主人公が、何か(「家族」)を『喪失』する物語」ですが……「主人公が何かを『獲得』する物語」でも事情は同じです。
この場合、より心を揺さぶるのは……そう、「タイプD」!
【「獲得」の物語】よりも【「喪失 → 再獲得」の物語】の方が、訴えかけるものが大きいのです。
まとめ
みなさんは、【「喪失」の物語】、【「獲得」の物語】をお作りになっていませんか?
もしそうであれば、【「獲得 → 再喪失」の物語】、【「喪失 → 再獲得」の物語】に手直ししてみるといいかもしれません。たぶん、ぐっとドラマチックになるはずですよ!
ぜひ試してみてくださいねー!!
補足
小池一夫さんがマンガを論じる中で、本記事と同趣旨のことをおっしゃっています。
「小池一夫のキャラクター創造論」(特に第2章)をぜひご参照ください。
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(担当:三葉)
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