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紅緒は「視聴者の分身」にして、「解説役」という機能を持ったキャラである|『未確認で進行形』(11)

 本記事は、アニメ「未確認で進行形」を徹底分析する特集の……第11回である★


第1回からご覧になることをオススメします!


今回のテーマ!


 ここまで、紅緒の「人となり」第9回)と、その中でも特に「シスコン」であること第10回)について詳しく見てきた。


 今回も……紅緒!

 ここまで言及してこなかったものの、「紅緒を語る上で無視できぬ2つのトピック」をご紹介する。


※右から2人目:紅緒。


【トピック①】紅緒は「私たちそのもの」であり、さらに「解説役」である


 第9回第10回で見てきた通り、紅緒は小紅と真白を溺愛し、愛で、萌えている。

 その一方で、小紅の許嫁・白夜については疎ましく思っている。


 さて……こうした紅緒の言動は、「未確認で進行形」の視聴者の多くが共感できるものだろう(視聴者は、小紅と真白に萌え、小紅とラブラブな白夜に嫉妬する)。


 つまり!

 紅緒は、「視聴者の分身」なのだ。


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 さらに、彼女は私たちの1歩先をゆく「解説役」でもある。


 「解説役」?……どういう意味だろう。


 例えば、白雪(真白と白夜の母)が、真白らを訪ねてやってきたときのことだ(第5話)。

 真白が、白雪を「お母さん」と呼ぶ。


 ……取るに足らない場面に見える。

 特段、「注目すべきシーン!」という気はしない。


 ところが、である!

 この直後、紅緒が興奮気味に叫ぶのだ。

紅緒「『お母さん』と呼ぶ真白たん!」


 紅緒は、「普段は何かと大人ぶっている真白が、年相応に『お母さん』と言う」というギャップにグッときて思わず叫んだわけだが……私たち視聴者はこの紅緒の反応を見て気づくのだ

「なるほど!これは萌えシーンであったか!改めて見ると……確かに萌える!」


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 なお、紅緒のような「機能」(作中で果たす役割)を持ったキャラは、特別珍しいものではない。

 例えば、「こみっくがーるず」のかおすもこれに該当するだろう(詳細は以下の記事で)。


 ただ、類似キャラの中でも、紅緒は「解説役」として相当に優れているように思う。

 と言うのも、紅緒は賢く、その上歯に衣着せぬキャラだ。

 だから、本質を突いた言葉がズバズバ飛び出してくる。


 例えば、真白を「ロリ小姑」「背伸び幼女」なんて呼ぶ(第1話)。

 あるいは、白雪を「ロリババア」と表現し、「これが経産婦か!」と叫ぶ(第5話)。


 ……この言語センスである!

 私たちはその言葉(=解説)に、思わずハッとするのだ。

「そうか!真白は『ロリ小姑』なのか!『ロリ小姑』萌えー!」

「『ロリババア』ってのも……悪くないですなぁ!」


※補足:私の印象では……サッカーや野球のスポーツ中継でいえば、紅緒は「素人が見逃してしまうような隠れた名プレイを、鋭い言語センスで、わかりやすく説明するプロ解説者」という感じだろうか。一方、「こみっくがーるず」のかおすは、「誰にでもわかる花形的スーパープレイを、個性あふれる独特な表現で伝える名物解説者」か。


【トピック②】紅緒の「もう1つの顔」はOPに描かれている


 第9回でご説明した通り、紅緒というキャラを一言で表現するならば、「学校では完璧超人、家ではシスコン」ということになる。


 ただし、作中では「シスコン」面ばかりが強調されているように見える。

 視聴者は、他のキャラ(小紅、まゆら、このはら)が「姉様はすごい」「紅緒様はすごい」と言うのを聞いて、「ほぉ……完璧超人キャラなのか」と認識する程度であって、彼女の「完璧超人」っぷりはほとんどまったく描かれていない。


 ……と感じるのは私だけではないと思うが、これについて、以下の記事で監督の藤原氏が興味深いことをおっしゃっている。



 一部引用してみよう。

藤原 紅緒は本当に難しくて……。美人で勉強も運動もできて、学校でもみんなから尊敬されているし、小紅も「姉様はすごい人なんだ」って言う。それなのに作中では、変態なところしか出てこないじゃないですか(笑)。そこをどう表現すれば、見ている方にも納得してもらえるのかが難しかったです。そのあたりは、OPの冒頭でクール系のイラストも出ていたりするので、アニメ本編というよりも全体的なもので補完されている感じかなと思います。


 ……そう、OPだ!


※著作権者による公式動画です。


 「未確認で進行形」のOPは大変な傑作で、曲も映像も目を見張るものがある。

 映像について言えば、キャラを目で追いかけているだけで幸せになれるというほとんどアッパー系のドラッグのような作品で、特に10秒頃から始まる「ふぅふぅ らったった らったったった ふぅふぅ らったったらっぱ いぇーいいぇーい らったった らったったった ふぅふぅいぇい」という歌詞に合わせて3人が体を揺するシーンの愛らしさと言ったら、これは筆舌に尽くしがたいものがあり、また私の好みとしてはとにもかくにも真白!紅緒にベタベタされ、うんざりした表情を浮かべる真白!これぞ「未確認で進行形」における萌えの原液だと思うのだが……さて。

 ここでご注目いただきたいのは、「冒頭(約10秒間)のイントロの映像」である。


 この10秒の間、「小紅、真白、そして紅緒を撮ったスナップ写真風の映像」が次々映し出されるのだが……この時、紅緒が妙に大人びた表情、憂いを含んだ表情、シリアスな表情をしているのだ。

 これが、前掲の引用文中にある「クール系のイラスト」である。


 一方、小紅と真白は、概ね「作中で描かれる人となりに沿った表情」を浮かべているように思う。

 つまり、紅緒だけが「本編には描がかれなかった表情」をしているのだ。


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 本編で描かれなかった「もう1つの紅緒の顔」を見ていると、いろいろと妄想が膨らんでくるのだが……例えば。


 第10回で、紅緒の抱える「心の闇」をご紹介した。

 すなわち……「紅緒は、元々はシスコンではなった。彼女は『小紅を傷つけた』という耐えがたい現実に直面したとき、自分の心を守るために、『私は妹を死ぬほど愛している』と認知を変化させたのだ」


 そして、「しかし彼女自身は、それを自覚していないだろう」と申し上げたのだが……この「もう1つの顔」を見ていると、「もしかすると紅緒は、『自分の小紅への愛』の発端が、利己的なものであることを自覚しているのかもしれない』なんて感じたりする。

 彼女の何とも名状しがたい表情は、「私は、自分を守るために自分と周囲の人びとを欺いている」「自分を守るために、小紅すらも利用している」という自己嫌悪を意味しているのかもしれない。



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(担当:三葉)

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