相手が口にした「名言・格言」にいちゃもんをつけることで、反論したり皮肉ったりする ~映画「トゥー・ウィークス・ノーティス」の場合
◆概要
【相手が口にした「名言・格言」にいちゃもんをつけることで、反論したり皮肉ったりする】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「トゥー・ウィークス・ノーティス」
▶1
本作の主人公は、ルーシー(30代の女性)。
彼女は優秀な弁護士であり、特に自然環境や文化財の保護に熱心に取り組んでいる。
いろいろあってある日のことだ。
・Step1:ウェイドという会社のCEOから、「僕の主任弁護士になってほしい」と依頼されたルーシー。
・Step2:彼女は唖然とする。というのも、ウェイド社は大手不動産会社。自然環境や文化財を破壊しまくっており、いわばルーシーの仇敵なのだ。
・Step3:しかしよく考えてみると……これは絶好のチャンスかもしれない。何しろ敵のトップに近づけるのだ。「自然環境や文化財を破壊するのを止めろ!」と直訴するチャンスではあるまいか。上手くすれば、ウェイド社の金を使ってそれらを保護することも可能かもしれない。
さーて、どうしたものか……。
・Step4:悩むルーシー。彼女は、ルーシー同様に自然環境や文化財の保護に強い関心を持つ両親に相談を持ちかけた。
・Step5:ルーシーの話を聞き、父は言った「孫子の言葉は覚えているか?」。
・Step6:ルーシーがうなずく「ええ」。
・Step7:ルーシーと父は声をそろえて「友を近くに置け。敵はもっと近くに置け(Keep your friends close and your enemies closer.)」。
※補足:これは孫子が言ったとされる格言である。「敵を近くに置く → 敵の動きを監視することで、敵の考えや行動を把握できるようになる → 脅威を最小限に抑えられる」という意味。
つまり、
・Step8:父はルーシーがウェイド社に入るのに賛成らしい。
・Step9:一方、母は皮肉っぽく言った「孫子に娘はいなかったわ!」。――「孫子の言っていることは正論かもしれない。でも、かわいい娘が仇敵の下で働くなんてダメよ!」「孫氏には娘がいなかった。だからそんな無責任なことを言えたのよ!」という意味だ。
▶2
ご注目いただきたいのは、「孫子に娘はいなかったわ!」という母のセリフである。
要するに「ウェイド社のCEO!?あんなクソ野郎の下で働くなんてダメよ!」と反対したわけだが――ストレートにそう言ってしまっては面白くない。
そこで【相手が口にした「名言・格言」にいちゃもんをつけることで、反論したり皮肉ったりする】という技法の出番だ。
改めて一連のやりとりをご覧いただきたい。
まずは父が「孫子の言葉は覚えているか?――『友を近くに置け。敵はもっと近くに置け』」と偉人の格言を引用した。それに対して母は「孫子に娘はいなかったわ!」と反論した。
「ウェイド社のCEO!?あんなクソ野郎の下で働くなんてダメよ!」と言うのと比べて、ぐっとおしゃれでウィットに富んだセリフになったといえるだろう。
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