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アニメ「ぽんのみち」を10倍楽しむためのサブテクスト(※作品コンセプトの読解から、カレーを食う理由まで)【後編】

🀄本記事では、怪文書一歩手前の深読みを行います。「んなわけあるかい!!(笑)」的な内容も含みますが、ジョークとしてお楽しみください。


🀄前編はこちら!




【執筆者紹介】村上空気
👉麻雀をモチーフにした作品はそこそこ読んでおり、特に好きなのは「むこうぶち」シリーズと「根こそぎフランケン」。
👉ポップカルチャー(マンガ、小説、ラノベ、アニメ、映画、ゲームなど)好きのための、ゆるいコミュニティ「ポプカルMAX」の共同管理人です。
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※以下、アニメ「ぽんのみち」第1-3話鑑賞時点の記事です。


🀄作品コンセプト読解🀄 またまた「おじさんの趣味を女子高生にやらせる」系作品?――否!これは「おじさんが馴染みのある場所に女子高生を放り込み、その場所や備品をリユース・リノベーションさせる」系作品だ!


初めて本作のことを知った時、もしくは第1話を見た時、多くの人はこう感じたに違いない。すなわち――「あー、はいはい。またまた『おじさんの趣味を女子高生にやらせる』系作品ね。今回は麻雀か」

さらに、「ふーん……よくもまぁ飽きずに作るなぁ」と辟易した人もいるだろう。


なるほど、確かに第1話はそれっぽかった。

ところが第2話でリーチェが登場した辺りから空気が変わり始める。「おや」「何かが……おかしい」と感じた人は少なくないはずだ。

そして第3話。かつて雀荘だったという場所にいるにも関わらず、ちっとも麻雀を打たない主人公たち。備品(ガス台、調理器具、おしぼり用保温器、冷蔵庫 etc.)をあさり、それを使ってカレーを作り、「カレーと刺身とコーラを一緒に食べるのはありか否か」と議論する主人公たち。――違和感は確信に変わる。本作はあのタイプの作品ではない!


そう、本作は「おじさんの趣味を女子高生にやらせる」系作品ではない。これは「おじさんが馴染みのある場所に女子高生を放り込み、その場所や備品をリユース・リノベーションさせる」系作品だ!

つまりは、「女子高生×麻雀」ではなくて、「女子高生×(元)雀荘」である。


こう考えると、うーむ!本作はなかなかどうしてユニークで、先進的な作品と言えるのではないか。

本作を皮切りに、「女子高生×元ボーリング場」「女子高生×元パチンコ屋」「女子高生×元ゲームセンター」なんて作品が続々と登場するやもしれぬ。


🀄すごくいい🀄 「元雀荘」という場所ならではの魅力


「本作は『女子高生×麻雀』ではない。『女子高生×(元)雀荘』である」と上述したが、ここでご注目いただきたいのは「元」の部分

「現役の雀荘」ではなくて「元雀荘」というのがとても重要だと思うのだ。


・理由1:「元」だからこそ、ここにはおっさんがいない。おばさんもいない。牌を混ぜるガチャガチャという音もない。タバコ臭もない。そう、じつにクリーン。かくして日常系作品にぴったりの舞台となる

・理由2:「元」だからこそおっさんもおばさんもおらず、したがって主人公たちだけの居場所になり得る。作中では「秘密基地」という言葉が使われているが、まさにそれだ。そして「秘密基地」には人びとを引きつける魅力があるのであって、畢竟、私たち鑑賞者はググっと物語に引き込まれる

・理由3:「元」ということは、つまりはもう雀荘ではないということ。雀荘としての役目を終えたということ。「何かが終わった場所」には必然的にエモさが漂うものであり、そのエモさが私たち鑑賞者の心をくすぐる。


――とまぁこのように、「元雀荘」には「元」ならではの素晴らしさがあり、それが本作の魅力の源泉になっていると考えられる。


🀄布石🀄 主人公たちはなぜ「カレー」を作り、そして食うのか?:麻雀作品におけるカレーの意味


第3話、主人公たちは元雀荘に集まってカレーを作り、そして食う

麻雀をモチーフにした作品にも関わらず、舞台が元雀荘ですぐ傍には雀卓があるにも関わらず、彼らは麻雀を打たない。カレーを作る。カレーを食う。じつに日常系作品らしい素晴らしいエピソードだが――はて。

なぜカレー?


主人公たちは、かつて雀荘で使われていたらしきメニュー表を発見し、それを見てカレーを作ろうと決める。

しかし画面に映るメニュー表を確認すると、メニューの一番上に掲載されているのは「ハンバーグ定食」。他にも「ピラフ」「親子丼」「ミートパスタ」「カルボナーラ」などが並ぶ。

その中からなぜカレーを選んだのか。

作中では、理由は明言されていない。主人公のなしこが「基本じゃし、カレーにするか」なんて言っているが――ん?「基本」って何よ。


なぜカレーなのか。

麻雀。

カレー。

麻雀。

カレー。

麻雀。

カレー。

――あれこれ考えた末に私は1つの仮説を抱くに至った。


「麻雀作品に登場するカレー」の中で最も印象深いのは、おそらくはマンガ「むこうぶち」第232話(単行本第27巻収録)のそれだろう。

すなわち――水原祐太と日蔭という天才雀士2人が、青森の小さな雀荘で偶然出会い、激突した時のことだ。

2人の真剣勝負が始まった。

戦いを見守るのは、条二(祐太の友人。いまはその雀荘の店員をしている)である。

しばらくして、あかねママ(雀荘のオーナー)がやってきて、「今日は雀荘の軽食にカレーを出そうと思う」と言った。

すかさず条二が進言する「カレーは中止に出来ないッスかね?」「勝負に集中してる今、匂いはマズイす」

というわけで、結局カレーは中止になり、その日はサンドイッチを出すことになる。


――そう、麻雀界においては「カレー = 真剣勝負を邪魔する大敵」なのだ。

ところが、本作の主人公たちはカレーを作る。カレーを食う。

これは、本作が真剣勝負を描く作品ではないこと、むしろその真逆のゆるゆる雀荘物語であることを示唆していると考えられる。


思い起こせば――第1話中盤に、麻雀作品のパロディが連発されるシーンがあった。

主人公たちは「牌賊!オカルティ」「麻雀飛翔伝 哭きの竜」「ぎゅわんぶらあ自己中心派」「アカギ 〜闇に降り立った天才〜」「ムダヅモ無き改革」といった作品のパロディを披露するのだが、このシーンの筆頭に置かれていたのが「御無礼。ツモりました」というセリフ。

言わずと知れた「むこうぶち」を代表するセリフである。

いま思えば、これは上述の「カレーを使って本作のスタンスを宣言するシーン」への布石だったのかもしれぬ。


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