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「信頼できない語り手」のバリエーションいろいろ!!|『ユージュアル・サスペクツ』(3)

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テーマ発表!!


 第1回第2回に引き続き、映画「ユージュアル・サスペクツ」をベースに新しい物語を妄想します。

※「ユージュアル・サスペクツ」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 「ユージュアル・サスペクツ」は、とある事件の容疑者が様々証言するが、終盤になって「彼の証言はすべて嘘かもしれない」という可能性が浮上し、結局何が真実なのかさっぱりわからぬまま幕を閉じる物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……前回に引き続き、一体どんな物語にするといいかディスカッションしてまいりましょう!

三葉 承知しました。

嘉村 前回ご紹介したのは、「『ユージュアル・サスペクツ』 ~『幽霊を見た女の話』編」でした。


案②


三葉 まずは、「ユージュアル・サスペクツ」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは第1回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さてここからは、「『ユージュアル・サスペクツ』をリスペクトした物語」を考えてまいりましょう!

嘉村 承知しました。

三葉 まず「案②」は……「『ユージュアル・サスペクツ』 ~『男性不信の女の話』編」


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三葉 「ユージュアル・サスペクツ」と比較すると、以下のようになります。


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三葉 ストーリーをご紹介しましょう。物語の舞台は警察署です。1人の女性(以下、A子)がとある事件を目撃し、事情聴取を受けている。A子さんは事件のこと、そして彼女自身のことを話します。

嘉村 ふむ。

三葉 上述の通り、「ユージュアル・サスペクツ」は3つの「物語」から構成される作品。このA子さんの証言が「物語①」に該当します。

嘉村 なるほど。

三葉 続いて「物語②」。捜査官による推理パートです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 推理は、基本的には「物語①」(A子さんの証言)に沿って展開されます。しかし、「物語①」と反する部分もある。というのも……A子さんは男性に不信感を抱いているようなのです。

嘉村 ほぉ。

三葉 何でもいいですが……実父から性的虐待を受けて育ったとか、カレシにDVを受けたとか、レイプされたことがあるとか、A子さんはそんな経験を持っている。

嘉村 ふむ。

三葉 「したがって、A子さんは男性に不信感を抱いている。ゆえに、男性に手厳しい。彼女の証言は基本的には信用できるものだが、『○○くんは最初から怪しかったんです』、『□□くんはいやらしい笑みを浮かべていました』、『△△くんが犯人に違いありません!』といった部分は信じない方がよさそうだ」。

嘉村 なるほど。つまり、「男性不信 → 信頼できない語り手」というわけですね。

三葉 ええ、その通りです。

嘉村 ふむ。

三葉 ところが……最後に「案③:どんでん返し」がやってきます。すなわち、「実父からの性的虐待」「DV」「レイプ」……いずれも作り話だと判明する。そして「彼女の話はすべて嘘なのか!?」「一体何のために嘘をついたんだ!?」「もしかすると、彼女が事件の真犯人!?」……と、多くの謎を残したまま、物語は幕を閉じます。

嘉村 ふむふむ。

三葉 要するに……先ほどの「男性不信 → 信頼できない語り手」に加えて、「『男性不信』すらも嘘。全部嘘かも!? → 信頼できない語り手」キント(「ユージュアル・サスペクツ」の語り手)同様、A子さんも「2段階の『信頼できない語り手』」というわけですね。


案③


嘉村 続いてまいりましょう!

三葉 はい。「案③」は……「『ユージュアル・サスペクツ』 ~『小学3年生の話』編」です。


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三葉 「ユージュアル・サスペクツ」と比較すると、以下のようになります。


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三葉 基本的なストーリーは、上述の「案②」同様です。すなわち、事件の目撃者(以下、B子)が、警察で事情聴取を受ける。

嘉村 ふむ。

三葉 しかし今度の「語り手(事件の目撃者)」は……小学3年生!

嘉村 ほぉ。

三葉 「物語①」は、B子ちゃんの証言パートです。年相応の口ぶりで、事件について、そして彼女自身についてアレコレ話す。捜査官は自分の娘が幼かった頃を思い出し、ニコニコしがらそれを聞く。しかし、だからといって彼女の証言を鵜呑みにすることはできません。

嘉村 まぁ……子どもですもんね。

三葉 そうですね。つまり「子ども → 信頼できない語り手」です。

嘉村 ふむ。

三葉 捜査官は、基本的にはB子ちゃんの証言を信用しつつも、「子どもゆえに色々勘違いしているようだ。○○というのは、□□のことだろう」などと考え、推理していく。これが「物語②」です。

嘉村 ふむふむ。

三葉 ところが……「物語③」では、衝撃の事実が明らかになる!ズバリ、小学3年生というのは嘘。実際には、B子は成人していたのです。

嘉村 さすがに無理があるような……。

三葉 「ブレンド・S」の星川麻冬みたいな女性だったんですよ。いわゆる「合法ロリ」ってヤツですね。


嘉村 うーむ……。

三葉 まぁとにかく、そんなどんでん返しがあって、「B子はなぜ年齢を偽ったんだ!?」「彼女の話はすべて嘘だったのか!?」「まさか、彼女が真犯人!?」と様々な謎を残したまま、物語は幕を閉じます。これが「案③」。

嘉村 なるほど。


案④


三葉 さらにまいりましょう!

嘉村 はい。

三葉 「案④」は……「『ユージュアル・サスペクツ』 ~『いじめられっ子の話』編」


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三葉 「ユージュアル・サスペクツ」と比較すると、以下のようになります。


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三葉 基本的なストーリーは「案②」「案③」と同様です。すなわち、とある事件の目撃者が警察にやってくる。今回の「語り手(事件の目撃者)」は……男子中学生(以下、C男)。

嘉村 ほぉ。

三葉 C男くんが事件について、そして彼自身について話します。これが「物語①」。

嘉村 ふむ。

三葉 続いて「物語②」。捜査官の推理パートです。「案④」で問題になるのは……「どうやら、C男くんはいじめられっ子らしい」という点。

嘉村 ふむふむ。

三葉 かくして捜査官は考える「Cくんはいじめっ子を恐れているようだ。いじめっ子が不利になる証言はしないだろう。彼の話には、意図的に省かれた部分があるはずだ」

嘉村 なるほど。

三葉 ところが、続く「物語③」では……。

嘉村 すべてがひっくり返されるわけですね?

三葉 ええ、その通りです。すなわち、「C男くんはいじめられっ子ではなかった!」「むしろ、いじめる側!?」「ということは……彼が事件の真犯人なのか!?」。しかしこうした疑問が明かされることはなく、物語は幕を閉じます。

嘉村 つまり、「いじめられっ子 → 嘘をついている可能性 → 信頼できない語り手」というわけですね。

三葉 はい、おっしゃる通りです。

嘉村 ふむ。

三葉 それでは最後に、全体的なまとめです。


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三葉 以上、「『ユージュアル・サスペクツ』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


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 「ユージュアル・サスペクツ」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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