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三日月のお宿 (詩を投稿します)

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詩を投稿します。
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#現代詩

となりで

となりで

 いま夏が来て
 雑草だけが高く
 声遠い祈念碑から
 綺麗な花は咲きましたか
 問う人は冷たい灰のなか
 世界が誇る美しい未来都市に
 祈念碑など初めから
 アダージョ・カンタービレ
 骨の浮き出たあの人の隣
 わたしは確かにいた

「青空の足元で」

「青空の足元で」

今日からいっしょに歩こうね

あの足跡まで歩こうね

明日が生まれる前に出て

終電時刻の二つ前

今日からわたしはだれでしょう

有刺鉄線越えたから

リュックひとつに詰め込んだ

いのち重いだろうね?と奪う

句読点を打つさようなら

愛と心とわたしの子

それは旅立つ前の日に

Hotchkiss 詰め寄せ綴じられた

どうぞ写真はご自由に

歴史が求める顔を指示をして

どうぞ空だけ青いま

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春とその日の色

春とその日の色

荒廃に死んだこどもに誘われ春の目覚めに雨は降る降る

きっとそれなりの名を持った命だったのだろう

あわよくば触れてみたいとさえ痛んだこの胸は

あの小さなからだをついに抱きしめられなかった

わたしが若葉の原に踏み入って歓びと希望にある中でさえ

清新な魂まではこちらへ宿らなかった

未熟な戸が開き、去らねばならぬこの身の上は

極めて輪の大きな観覧車に詰められた

遠ざかるまで

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