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#59「アーセナルvsマンシティ<マッチレビュー>PL第25節」

こんちゃ!どうも、いったーです。
今回は「アーセナルvsマンシティ<マッチレビュー>PL第25節」を書いていきたいと思います。

うーん。最初の失点が何とも言えないもどかしさでしたね。シティのリズムになれてからは何とか攻撃の形を作れていましたが、決定的なチャンスもなく、じりじりと寝技で負けた気分です。とはいえ、シティのクオリティは高く勝利に値するゲームの進め方でした。この敗北でPLルートのCL権はかなり難しくなりました。しかし、ミッドウィークにはvsベンフィカのビッグマッチが控えています。楽しみです。

それでは本題に入りましょう。

チーム紹介

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ホームチーム:アーセナル
監督:ミケル・アルテタ
フォーメーション:4-2-3-1

アウェイチーム:マンチェスター・シティ(以下マンシティ)
監督:ジョゼフ・グアルディオラ
フォーメーション:4-3-3

プロローグ

アーセナルは前節vsリーズとの殴り合いを制し、久しぶりに勝ち点3を手にしました。ミッドウィークのvsベンフィカでは決定機を逃し続け、1-1のドローとなり今季残された最大のミッションのEL優勝に向けて暗雲が立ち込めました。そんな状況でPLからCLルートを確保するための微かな望みをつなげるかどうか、独走状態のマンシティを迎える1戦です。

一方、マンシティは過密に過密を重ねた日程が最大の敵と目されていましたが、PL&CL&FA杯&カラバオ杯全てのコンペティションにおいてタイトルの可能性を残しています。これまで公式戦15連勝で2020/11/22以来全勝でかつ、リードすら奪われたことがありません。これも代表クラスを2チーム分用意できるだけのオイルマネーのバックアップがあるからには間違いありません。UEFAに勝てる弁護士団だって雇えるのですから。しかし、ピッチの上では話は別です。ペップ率いるチームは圧倒的な強さを誇ります。

前半<アーセナル>

〇プレビュー通りの失点
〇変則的なディフェンス

〇プレビュー通りの失点

何度目の開始早々の失点でしょうか。Vsセインツ、vsアストン・ビラと何度も失点を食らいました。レベルが高ければ高いほどこの時間の失点は致命的であり、いきなりビハインドからのスタートになってしまいます。まるで義務失点のようです。

ペップ式のポジショナルプレーで代表されるのが、ボールホルダーよりも1つ前の選手は同じレーンにいてはならない。前後の選手は隣のレーンにいることが好ましい。様々な原則が定められており、パターン化されるようなシステムはほぼありません。システマチックと言えば、機械的ではあるのですが、個々の選手の判断、認知をベースにしているため、表面上の理解ではマンシティのアクションに対して、相手チームは適切なリアクションを取ることが出来ません。

質的優位、位置的優位、数的優位この3つをマンシティの選手らは表現していきます。

基本的には質的優位を強烈に表現できる選手はサイドの選手です。このゲームではスターリング、マレズ、ベンチ含めるとフォーデン、B・シウバ、フェラン・トーレス、メンディらが質的優位を発揮することが多く、その彼らのスピード、ボールスキルを発揮しやすい環境を整備するために、ポゼッションという手段やポジションチェンジといった手段を採用しているとインタビューや著書でも発言していました。

<開始1分義務失点>

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RWGマレズの質的優位を発揮させるために、中盤の選手らがポジションチェンジをしながら、DFラインに時間を与えました。特にロングフィードのキッカーとなったCBルーベン・ディアスはシステムの嚙み合わせ的にも必然的にフリーになるように設計されていたように思えます。開始早々のプレーだけでなく、この試合何度も彼からのキックが展開を動かすことになります。

あのゾーンで、あの形でRWGマレズにドリブルを開始されると独特の間合いとリズムのため、DFはなかなか飛び込むことが出来ません。そのため、1番怖い得意な左足でのコントロールショットの可能性を消しながら対応する必要があります。LSBティアニーも実際に慎重になりながらもシュートコースは消していました。
LSBティアニーの頭の中には、恐らくマンシティの永遠の欠点であるクロスに対する、PA内の人選的にB・シウバ、スターリングは身長も低く、ヘディングで勝負されても大丈夫だとおもっていたでしょう。たぶん、全員そう思ってました。

しかしその想定を超えてきたのが、RWGマレズの質的優位でした、独特な間合いであるため相手が飛び込めないことを利用し、脚を開きながら、足首だけで擦り上げ、クロスにしました。このタイミングを外したクロスのせいで、CBホールディングは自身のマーカーであったスターリングを見失い、ボールにチャレンジ場所におらず、ふりーで飛ばせてしまいました。スターリングのヘディングもコースが素晴らしく、GKレノもノーチャンスでした。

〇変則的なディフェンス

アーセナルは、ディフェンス面においてマンシティに合わせた方法を採用しました。
以下3つに分かれていたと考えます。

敵陣でのディフェンス
敵陣から自陣にかけてのディフェンス
自陣でのディフェンス

<敵陣でのディフェンス>

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基本的には、人を基準とするマンマークを採用しました。
マンシティは様々な可変システムを使い分けるため、ゾーンで受けて立つと、各々のゾーンとゾーンの切れ目においてフリーになる瞬間がどうしても生み出されてしまうためです。
CBホールディングやパブロ・マリが、IHギュンドアンやWGスターリングが中盤に降りて行ったときも付いていき、厳しいチャージをしてカットする等、一定の成果はありましたが、1枚剥がされると一気にピンチになるため、紙一重でした。

<敵陣からの自陣にかけてのディフェンス>

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敵陣から自陣にかけてのディフェンスは、人を意識したマンマークをしながらも、ゾーンも意識しながらの守備を採用しました。
最も難しい判断を迫られたのがこのゾーンです。なぜなら、チームが一体となり、意識を共有しながら、マークやプレスを連続させなければ、簡単に綻びを露呈することになるからです。特に、このフェーズにおいてマンシティはRSBカンセロがインサイドに入る“偽SB”やKDBが“偽9番”として中盤に降りてきて、空いたスペースをB・シウバが侵入するなど同時多発的にアクションを起こしてくるからです。

この時に気になったのが、CMFエルネニーがサイドに流れた担当のギュンドアンをケアするあまり、CMFジャカとの“門”が広くなり、縦パスを通しやすくする等マンシティの精神的に楽な時間を与えていたようにも思えます。

<自陣でのディフェンス>

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自陣のディフェンスにおいては、基本的に場所を埋めるゾーンのディフェンスを採用していました。
4-4-2/4-5-1のブロックを敷きながら、2ライン間をかなり狭めて守備陣形を取りました。四角形の間にボールが入ると、収縮を繰り返しながらスペースと時間の余裕を与えない守備を可能にしました。下図、圧縮の様子

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前半<マンシティ>

〇CBルーベン・ディアス&ストーンズのコンビは最強か
〇やっぱりカンセロ・ロール

〇CBルーベン・ディアスの存在感

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攻守両面においての異様な存在感を発揮しました。今季加入とは思えないほどの適応ぶりでした。プロローグにも書いたようにCBとしてラインコントロールする能力は一芸に値するものであり、声もまた然りです。その特殊能力によってCBとしてはもう終わった選手として見られていたCBストーンズのサビを綺麗に磨き上げました。

故に、ストーンズは安心して得意の攻撃参加をする余裕が生まれ、自陣に引きこもったアーセナルを崩すきっかけとなるタスクを実行していました。
アーセナルはRWGペペにファーストプレスを託し、CBルーベン・ディアスのプレーに制限をかけていきました。CFオーバメヤンは右側のストーンズを空けながら、右サイドに誘導してきましたが、このCBルーベン&ストーンズの足元のスキルは高く簡単にはがすことが出来ていました。

相手を押し込んだ時にはCBルーベン・ディアスの距離を蹴るパスいわゆるサイドチェンジを何度も生かしました。上記のようにシステム上CBルーベン・ディアスがフリーになるケースが何度もあり、得意の長いボールを自在に操ることが可能となりました。右方向のRWGマレズに届けるだけではなく、LWGスターリングの裏へもパスを届けるシーンが目立ちました。故に、アーセナルもハイラインを敷くことが出来ずに効果的なプレスに繋げることが出来ず、全体の撤退を余儀なくされました。

〇やっぱりカンセロ・ロール

プレビューでも触れたとおり、マンシティは同時多発で複雑なポジションチェンジを連続させながら行ったことにより、アーセナル守備陣は混乱に陥らされました。

<13分>4-3-3の布陣➡2-3-2-3の布陣へ

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RSB/LSBがインサイドに入りながら中盤で数的優位を取ります。

<28分>4-3-3の布陣➡3-1-3-3の布陣へ

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RSBカンセロがインサイドに入りながら、ハーフレーンにポジションをとりました。最後尾のストーンズ、ルーベン、ジンチェンコ+フェルナンジーニョで菱形を形成するため、アーセナルは前線の枚数とかみ合わず、自動的にボールを前に運んだ。
最後はカンセロがハーフレーンを駆け上がり、裏を取ろうとするも、不発。

<32分>4-3-3の布陣➡3-2-2-3の布陣へ

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DMFフェルナンジーニョが最終ラインの左側に降りて、LSBジンチェンコがハーフレーンの高い位置を取る形。逆のRSBカンセロはインサイドに入りながら“偽SB”として活動。LWGスターリングが大外に張り付いてアイソレーション。質的優位を発揮しようと試みる。


後半<アーセナル>

〇ファーストプレスを回避してから次の手は?

〇ファーストプレスを回避してから次の手は?

マンシティの強烈で適切な前線からのプレスによって中盤にボールを中々運べず、加えて、高い位置でボール奪取もできず、低い位置からの攻撃になってしまったアーセナルでした。
しかしながら、マンシティのテンションにアジャストし、慣れてきてからは、ファーストプレスを外すところまで進めることはできました。

<58分>

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深い位置からの流れで、CBパブロ・マリが特徴を出した長いパスで局面を動かしました。アルテタ監督がLCBに左利きを重宝する理由が詰まっている展開でした。

<60分>

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CMFジャカからLSHサカへの縦パスが通りました。このシーンは試合中何度か見られ、アーセナルの得点チャンスに繋がりそうな展開はほぼすべてサカを経由していました。

これらのシーンは、ファーストプレスを外したり、縦パスを通したりと次の局面に移行し、スピードアップさせたい展開です。しかしながら、低い位置から丁寧にビルドアップしているため、最終ラインと最前線の距離が長く、パスコースが用意されていないため、すぐさま次のプレーに移行することはできていませんでした。マンシティの帰陣が早く、時間がなかったことももちろんあります。とは言え、ファーストプレスを外した後のプレーのスピード、精度ともに上げていく必要があり、難敵を相手にするときには必須のプレーになるはずです。

一方で、よかったのはアーセナルの左サイドです。マンシティは前線3枚に加えてB・シウバが基本的に強いプレスをかけ、プレーに制限を付けてきました。RSBカンセロも攻撃時にはフリーロールが与えられると言えど、守備時には担当ゾーンに戻るタイミングが良くない時がありました。加えて、RWGマレズは改善されたといっても、もともと守備が得意ではない選手であるために、ポジショニングのズレに関して神経質になっておらずなおざりになっていました。そこで、右サイドの違和感に漬け込めたのが、CMFジャカ、LSHサカ、LSBティアニーでした。そこのコンビネーションによって左サイドから崩すチャンスが生まれました。

今後は、そのプレスを剥がした後のプレースピード、プレー精度を高める必要があることは前述の通りです。特にCFオーバメヤンやOMFオーデゴーが関与すれば強力な左サイドが結成されます。継続しながら連携を深化させてほしいです。

後半<マンシティ>

〇縦切りプレスの外し方
〇ベンフィカ産の選手が集まるのは偶然なのか

〇縦切りプレスの外し方

昨年、一昨年とヨーロッパサッカー界、PLを席巻したリバプールは高度な外切りの使い手でありました。3トップのWGサラー&マネの外切りと中盤の強度の高いプレスにより、高い位置でのボール奪取を可能にし、ショートカウンターの連発とほぼ無限攻撃を実行できていました。

そのエッセンスを取り入れるチームも増えており、このゲームはLSBジンチェンコを切りながら、CBルーベン・ディアスにプレス、CBルーベン・ディアスを切りながら、GKエデルソン・モライスへというようなプレスが多々見られました。

その縦切りに対応してきたのが今回のマンシティであり、プレーの共有や個々のフットボールIQの高さが即時の対応を可能にしました。

実際に外切りをしながら、相手がプレスをかけてきたときに、ボールホルダーには2つ選択肢があります。① 縦パス、②逆方向へのパスです。

外切りの選手によって守備側はスライドをします。そのため、攻撃側からするとそのスライドの逆方向にボールを動かせれば、相手の逆を取れることになります。

② 逆方向へのパス
逆方向へのパスでも長いボールを使えば、相手を揺さぶることは可能になりますが、距離が離れているために、確実性という点では少し疑問符が付きます。

① 縦パス
縦パスを上手く通しパスを受けた選手が、少ないタッチで最初のパスを出した選手(図ではジンチェンコ)に戻せば、本来ジンチェンコが前進させたかったわけですから、数手遠回りはしましたが、ほぼノープレッシャーで前を向きながら前進できました。

<53分マンシティの縦切り回避>

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この、シーンを時系列を追って説明すると、、、
(1)外切りをするRWGぺぺはLSBジンチェンコへのリターンは阻止したい。
(2)LSBジンチェンコからボールを受けたCBルーベンは逆サイド、縦パスが選択肢としてある。
(3)縦パスを受けに、LIHギュンドアンがタイミングよく降りてくる(担当のエルネニーも一緒)。
(4)ギュンドアンを囮に使いながら、LWGスターリングも降りてくる(担当のベジェリンも)。
(5)CBルーベン・ディアスはLWGスターリングへのパスを選択。
(6)パスの瞬間にはLSBジンチェンコは前進しており、RWGぺぺもプレス直後のため、間に合わずにフリー。
(7)LWGスターリング&LIHギュンドアンを経由して、前を向いたLSBジンチェンコがフリー。

こういった複数人が関わる連動は、一朝一夕で実現できることではなく、練度の高さ、賢さを見ることが出来ました。

〇ベンフィカ産の選手が集まるのは偶然なのか

育成の名門であるベンフィカ出身の選手がマンシティにはGKエデルソン・モライス、RIHベルナルド・シウバ、CBルーベン・ディアス、RSBジョアン・カンセロと4人も同時起用されました。

マンシティに限らず言えば、他の強豪クラブにもベンフィカ出身の選手は多数存在します。

例えば、CBダビ・ルイス、RSBネウソン・セメド、CBリンデレフ、CMFレナト・サンチェス、CFゲデス、LSBファビオ・コエントラン、CBエキセル・ガライ、STジョアン・フェリックス等多数存在します。

特定のスタイルに固執することなく、ポジションも満遍なく、所属クラブも偏りのないことが特徴的です。ペップという現代フットボールは複雑化したと言えど、最上位クラスで難解で複雑なフットボールを展開するチームに同時に4人も所属する点は興味深いです。

個人的な見解ですが、2018-19 CL決勝リバプールvsトッテ〇ム(1-0)がありましたが、その大事な大事な決勝前のリバプールのトレーニングマッチとして、ベンフィカのセカンドチームとのゲームが組まれたことを目にしたことがあります。トッテナムのハイインテンシティのプレスに対応し、攻略するために、ベンフィカBチームにトッテナムの戦術を完全模倣してもらい、対策を立てたそうです。

この話からも分かるように、ベンフィカ出身の選手には戦術理解度の高さや柔軟な対応、1つのプレーに対しての選択肢の多さ等。ボールがない部分での“賢さ”があるのではないでしょうか。

基本的にシティに所属していない他の選手も本職だけではなく、CBであればSBやDMF、SBであれば、WBやWG、CFであれば1トップ、2トップへの対応といったように賢さからくるポリバレント性という点があるのではないでしょうか。


試合結果

アーセナルvsマンシティ(0-1)
得点者:‘2ラヒーム・スターリング(MCI)

試合ハイライト

個人的MOTM

LSBティアニー

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ベタな選択になりますが、アーセナルの唯一の攻撃の糸口になった存在は大きかったと思います。LSBセドリックも悪くありませんでしたが、利き足が右であるために、ライン際よりもインサイドでの勝負が多くなりがちでした。そのため、本職であり、利き足も左のティアニーが復帰し、縦にも横にも仕掛けるシーンは魅力的でした。後半はブランクもあったのか、スタミナ切れ感もあった(上下動が半端なかったので仕方ないです。)のでコンディションを早くトップフォームに戻して救ってほしいです。

エピローグ

アーセナルからするとスコア以上に差を感じるゲームでしたが、これまでのようにぼこぼこにされたかと言うとそうではありませんでした。その分前半立ち上がりの失点が悔やまれます。マンシティの強度の高いプレスも巧みに剥がし前進することはできていたため、昨年のアルテタ就任当初に比べると確実にチーム力は高まっています。次はそのファーストプレスを剥がした後のプレー精度やスピードを高めたシーンを見たいです。ミッドウィークEL Round of 32 vs ベンフィカはアウェイゴールでの勝ち抜けではなく、しっかりと叩きのめして次のラウンドに進みたいです。CFラカゼットやCMFセバージョスを休ませたのですから。

マンシティは、会心とまではいきませんでしたが、自分たちが終始ゲームをコントロールしシャットアウトゲームを達成しました。ファーストプレスを剥がされてからも、帰陣が非常に早く、アーセナルが狙ったような複数人が絡みながらテンポの良い攻撃をさせませんでした。攻撃面でも可変システムをいくつも用いながらアーセナルを混乱に陥れました。この可変システムは特定のトリガーがなく、個人それぞれの状況判断、認知から連鎖的に始まります。故に相手は必ずリアクションすることになり、後手後手の対応を迫られます。この可変システムを理解しながらボール奪取し、プレスを回避することは困難を極めます。ストップ・ザ・シティのチームは現れるのでしょうか。

悲観的になる必要はありません。ある程度はプレスも剥がせましたしそこは自信を持つべきです。上を見るしかないのですから。ベンフィカを倒し、再び上昇気流に乗りたいところです。

それではこのへんで、、、

ばいころまる〜

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