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或る若者の思索

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私が日常生活の中で感じた何気ないことを、日記よりちょっとだけ推敲して書いてます。
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2022年8月の記事一覧

眠れない夏の夜に

眠れない夏の夜に

 皮膚にへばりつくようななまぬるい風が、草木を心地よく揺らす風に変わったような気がした。人々の熱気とともに、夏は音速で過ぎていったのだ。

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 成就した恋ほど語るに値しないものはない、というとある学生の言葉があるが、あれは本当にそう。幸せな結末ほどつまらないものはないし、過ぎ去った季節には誰も興味がない。ハッピーエンドはハッピーエンド以外の何者でもない。人は皆、心のどっかで、自分に被害のない

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盆・ボヤージュ

盆・ボヤージュ

悲しいことは、悲しいことがあれから一度もないことさ。最後に悲しみに暮れたのはいつの日か。お盆の時期になると、なんとなく肌身で感じるやるせなさ。このやるせなさの輪郭が年々、形取られていくようになってきた。

 「夏休みのターニングポイント」くらいにしか、お盆というものを認識していなかった。気づいたらなんとなく夏だったのだが、気づいたらなんとなく秋の口が見えている。夏、この度めでたく24度目の解散。

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