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石垣島の民宿にまたお帰りと言われたくて。

NYひとり旅から帰国後、私にはもう一つ行きたい場所があった。 

いつか殴り書きした、30歳までに叶えたいリストの1つ。石垣島の離島「黒島」。

 結婚もリストには入っていたが、30歳まであと2ヶ月、残念ながらこちらはもう叶えれそうにない。というか、悲しいことに彼氏や好きな人すらいない。33歳までに自動延長である。 

せめて、黒島に行くことは叶えよう。帰国後すぐに黒島の民宿に電話すると、たまたま来月空いていたので航空券も押さえた。良かった。

そういえば私は夏休みの宿題だっていつもギリギリにしていたのも思い出す。そう、もう30になるのにいつだって私は私で私らしい。 

*

黒島の民宿の存在を知ったのは、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんのラジオである。 

私は当時、夜な夜な彼のオールナイトニッポンを聞いていた。 一人で孤独な夜でもラジオを聞くと不思議と誰かと一緒にいるような安心感を覚えたから。

ラジオではどんな経緯かは忘れたが彼が1人で黒島に訪れてある民宿に泊まったこと。

島の人の優しさに触れて、忘れられない日になったと語っていた。 

そして、かつての芸能界の大御所、島田紳助師匠も黒島とこの民宿に惚れ込んだと彼は語る。 

私はすぐに<島田紳助  黒島>とYahooで検索をかけると、確かに島田伸介が黒島に惚れ込んでいるとインタビューが出てくる。以一部抜粋

僕は景色を見てもあまり感動しないタイプで、観光地へ行って景色を見ても、「あ、分かった。行こう」と言って、そこに1分もいないんです。ところが、黒島に行ったときに、朝1人でチャリンコに乗って、仲本海岸へ行って、缶コーヒーを買ってボーッと座っていて、時計を見て、「30分もおるわ」と。誰も人がいてへんのにね。1人で缶コーヒーを飲みながら30分いてましたね。今、地方へ行って、国道を走っていたら、どこにおるのか分からないじゃないですか。同じコンビニがあって、ファミレスもみんな同じ、全国チェーンのレンタルビデオ屋があって、どこを走っていても日本中同じやもんね。だから黒島みたいなところを見てびっくりしたもんね、「なんじゃ、こら」と。

やいまインタビューより

この記事を読んだ直後に私も黒島に行く事を決心した。

私には想像できないほどの富と名誉と女と、何もかも手に入れて、世界のあらゆる絶景を見て、高級ホテルのスイートを泊まり尽くしてきたであろう彼が黒島で感動したと語る。 

最上級の空間やサービスより心打たれる、お金では買えない何かが黒島にあるのだろう。

資本主義社会の〈ここ〉と同じ国なのに、相反する場所のように感じた。

 私は彼が見たであろう景色を自分のフィルターを通じて見て、その何かを自分の身体で感じたかった。

*

 当日は有給を消化して3泊4日で行った。石垣島に到着し、離島ターミナルでのカフェにて、島の地図とフェリーの時刻表を広げながら計画を立てるのは童心に返ったようでワクワクした。 

ターミナルにて

初日は竹富島へ向かい一泊した。昔ながらの町並みと穏やかに流れる時間に感動する。あぁ、私のボキャブラリーでは何も伝えれないのが残念である。

竹富島

2日目は一旦石垣島へ戻り黒島へ向かう。島ごとにフェリー乗り場が分かれているが、列を作っているのはリゾートホテルがある小浜島や近場の竹富島だった。黒島は人気がないのか、乗り場には私と二人組の30代であろう男性、計3人のみ。

「お1人ですか?女性が黒島に行くの珍しいですね」と船内で二人組の男性に声を掛けられた。
最初は少し警戒したが、話をしていくと彼達は私と同じ民宿に泊まるみたいだった。名古屋から旅行に来てる会社員勤めの30代前半、職場の先輩後輩の仲らしい。先輩は黒島に魅力され民宿のリピーター、後輩は黒島は初だと言う。

同じ宿に泊まる者同士、少し打ち解ける事が出来て安堵する。民宿ではゆんたくと言って、夜は皆とわいわい泡盛飲んで食事をするのが定番だ。さすがに1人で相づちを打つだけの物置になるのは悲しい、、

「昨日までは西表島に滞在してて、カヌーをして~」「西表島も行ってみたいです、私は竹富島に」「僕ら竹富島まだでさ、どうだった?」そんな他愛もない事を話しながら、あっという間に島に着く。

外に出ると、民宿のおばぁがプラカードを持って待ってくれてた。
車で民宿に到着し、チェックインをする。前払いで1泊7000円くらいだった。

2階の六畳和室の個室を案内され早速大の字に寝転ぶ。あー疲れた。

天井の電球を見ながら島田紳助も何度かここに足繁く通って、この六畳の和室に居たなんてなんか不思議だな~と思いふけていた。

せっかく1人で訪れたのだし夕食までゴロゴロしてようと思っていた矢先、ドアがコンコンとノックされる。「東京のお姉さーん、一緒に自転車で探索しませんか?」

どうしよう、せっかく1人で来たし、何も考えずボーとしようかと思ったけど、私は誘いに乗ることにした。そしてあの時は誘いに乗って本当に良かった、おかげでとても楽しい旅になったから。

根岸海岸へ行く途中
黒島は牛が多い
沖縄と北海道の良いとこ取りをしたような黒島
探索から帰宅後、ゆんたく。

三味線を披露してくれた。

ここの宿は常連さんが多いようで、もう数えるのが面倒なほど埼玉から足を運んでる50代くらいの会社員男性。この黒島に変化がないかただ確認しに来ているらしい(笑)そして変化がなければホッとすると。40代の1人旅で訪れている女性も2人ほど居て、関西出身の彼女たちはとても気さくであった。

「なんでこの民宿にたどり着いたん?」、「沖縄そばはここが美味しいんよ」、「この時間はハブが危ないで」、「波照間島と鳩間島は海がキレイやったなぁ」、「皆どの島が好きか言い合あわん?」そんな話をしながらばぁばを入れて7人でゆんたくをする。

誰1人、ゆんたくでは仕事や家庭などプライベートの話しはしなかった。

ゆんたく後は、皆で外に出て寝そべりながら天体観測をする。この時の星空が今も忘れられない。

そんな感じで時間が過ぎ、あっと言う間に、私が東京に帰る日になる。

なにより感動したのが、皆で黒島フェリー乗り場まで来てくれたのだ。埼玉の男性は船が出発するまで、三味線を弾きながら見送ってくれた。

「はるちゃーん、ありがとー!また、黒島で会おうね!!元気でね~!」

ずっと、ずっと手を振ってくれた。

黒島がどんどん遠くなる
あ、見えなくなった

帰りの船で涙がでた。本当に黒島に行って良かった、この島の存在を知ってからの、これからの私の人生は絶対に豊かになるだろうと確信した。

そして、本当に彼の言う通りで、私は思わず口にしてしまった。


「なんじゃ、こりゃ」

*

東京に戻っても私はしばらく余韻に浸っていた。もしかして、「黒島」に恋をしてしまったのだろうか?学生時代に片思いしていた勇気くんを思っていた日々のように頭がぽーっとするのだ。

だけどそれも数日だけで、それ以降はいつもの日常に追われる。

仕事して、友達と遊んで、飲み会をして、婚活してそんな日々を過ごすと「あの島の滞在は幻だったのか?」との気持ちと同時に、
「煩わしい人間関係から解放されたい!」「1人旅したい!」「本当に1人になりたい!」この欲がふつふつ沸いてくる。

そして、私はせっせと時間を作り、1人で八重山に足を運び、「おかえり」と言われ、皆とゆんたくする。

何回かこの往復をして、疑問がでてきた。

あれ?煩わしい人間関係から、他人から解放されたくて石垣島に行くんだけど、でも民宿で他人と和気あいあいと過ごしてる。  

人と離れるために石垣島に行くけど、結局私人を求めてないか?

島田紳助のインタビューに答があったので、長文ですが抜粋します。

ハワイを好きな人と八重山を好きな人を分けたら、ハワイを好きやという人は、風景が好きなんです。だから、言葉が通じなくてもハワイがいいんですよ。娯楽施設があって、海がきれいで。外人と友だちになろうなんて気持ちは初めからないんですよ。でも、八重山を好きやという人は、風景よりも人が好きなんですよね。そこで人とかかわりを持ちたい人が来るんですよ。だから今八重山に来ている観光客は、暗系やわ。 僕の友だちでもいつもひとり旅で波照間へ行きよるねんけど、絶対おかしいって言うてるねん。ひとり旅やったら、1人で寝えと言うねん。いつまでしゃべっとるねん、おまえらって。それはひとり旅と違う、人恋しいねん。「どこから来たん? いつ帰るの?あした、ダイビングするの?一緒に潜ろうか」って。友だち探しているねん、やっぱり寂しいねんって。同じ思想やんか。普通に健康で、友だちがいっぱいいたら、「おい、今度石垣へ行こうや」となったとき、「行こうや」って何人かで行くもんやもんな。「おれ、来月、1人で石垣へ行ってくるわ」という、その発想自体からやっぱり暗いで。「おれ、来月、ハワイへ1人で行ってくるわ」というやつはおらへんもんな。何でかというたら、ハワイへ1人で行ったら、ほんまに1人やで。景色はあるけども、誰もしゃべってくれへんし、ほんまに1人やもん。でも、この八重山に1人で来たら、絶対に誰かいると思ってるねん、みんな。民宿に泊まれば1人じゃないし、友だちができると思ってるねん。だから、こっちに、島にひとり旅でみんな来るのよ。会うたことないで、ハワイでひとり旅。だから、やっぱりこっちの人は優しいねんって。そんな人恋しい人が集まる島やねんな。こんな世知辛い世の中やから。だから、開発をする必要はないと思うねん。開発したらあかん

やいまインタビューより

おっしゃる通り。私、闇系ですわ(笑)

そう、私は1人になりたいとか、離れたいとか言いつつ、結局誰かと出会いたいから島に行くのではないか。

もう、正直に認めてしまおう。

私はおばぁとおじぃに優しくされたいから島に行く。

全く共通点のない誰かと出会って「海きれいやね」、「どの島がよかった?」そんなありきたりな会話をして、少しでも自分の人生と誰かの人生を交じり合わせたいから、島に行く。

ラグジュアリーな経験は高揚感で一杯になる。でもそれは一瞬で数日もすればすぐに忘れてしまう。だけど、島の思い出はこれまでの私とこれからの私を優しくしてくれる。

だから私はまた島に行くだろう。

結婚直後に夫とは2人で訪れたけど、いつかは息子も一緒に。

おばぁの「おかえり」が聞きたくて。何歳になっても、母になっても、そこに誰かがいる事を期待して、誰かに出会いたくて、誰かと繋がりたくて、人恋しくて。


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